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砂上楼閣 第二部 【後編】

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砂上楼閣 第二部 【後編】

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「来たか」
藍澤 黎(あいざわ・れい)は、エアポートに到着した飛空挺を見上げる。
「薔薇の学舎が、アーダルヴェルト卿を連れて戻ってきた!」
フィルラント・アッシュワース(ふぃるらんと・あっしゅ)は大声を上げる。
サクラのようだとは思いつつも、政治的なことを考えての判断である。
タシガンの民はどよめく。
アーダルヴェルトは、しっかりした足取りで、飛空挺を降りてくる。
「お待ち申し上げておりました」
ジェイダスは、黎の用意した蒼薔薇の花束をアーダルヴェルトに渡す。
それは、パラミタの蒼薔薇と、地球の蒼薔薇を混ぜて作ったものであった。
「……蒼き薔薇か。美しいな」
アーダルヴェルトは微笑を浮かべた。
「記念撮影をさせてください」
黎は、ジェイダスとアーダルヴェルトが、蒼薔薇の花束を持っている姿を、写真に撮る。
これを、ネットや新聞社に積極的に流して、
世論に影響を与えたいと考えていた。
「青薔薇同盟」の国頭 武尊(くにがみ・たける)は、
メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)セシリア・ライト(せしりあ・らいと)に言う。
「蒼薔薇の地球での開発成功前の花言葉を知ってるか?」
「……『不可能』ですぅ。
 人の手によっては作ることができないと思われていましたから」
「だけど、開発成功で、『人の奇跡、神の祝福』になったんだよね」
フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)も、穏やかな笑みを浮かべる。
アーダルヴェルトとジェイダスは握手を交わす。
タシガンの民は拍手喝采をする。
薔薇学は、タシガンに正式に受け入れられたのだ。

アーダルヴェルトは、タシガンの民とともに拍手している、
フィルラントに近寄っていく。
「ようやくわかった。
 そなたこそが、私が見出すべき神子だったのだ」
「ええっ!?」
フィルラントは、予想外のことに驚く。
アーダルヴェルトの手から、光が放たれ、それがフィルラントの身体に移る。
「女王陛下のため、シャンバラのため、その力を振るってほしい」
「わ、わかりました。
 蒼い薔薇の咲き乱れるシャンバラを復興してみせます!」
(……こないだファルくんが神子やってことわかったばかりやのに、
 まさかボクもそうだったなんて)
フィルラントは思う。
「フィルラにーちゃん、おめでとう!」
「おめでとうなのですよー」
エディラント・アッシュワース(えでぃらんと・あっしゅわーす)あい じゃわ(あい・じゃわ)は、
いささか緊張感にかける祝福をする。
それに呼応して、静まり返っていた会場は、再び拍手に包まれた。

「アーダルヴェルト卿?」
フィルラントに発したアーダルヴェルト卿の声の変化に気づき、
早川 呼雪(はやかわ・こゆき)が近づく。
呼雪の予想通り、神子を選定する使命を果たしたアーダルヴェルトは、
少年でいる必要がなくなったのである。
身体が成長できるようになり、声変わりが始まったのだった。
「私は、神子の使命に捕われすぎて、
 心もまた幼子のままだったのやもしれぬ」
アーダルヴェルトは呼雪に言う。
「だから、自由に生きているように見えた甥のラフィタ
 うらやましかったのかもしれぬな」
アーダルヴェルトは、ラフィタにも言う。
「気が向いたら、いつでもタシガンに戻ってくるがよい」
「はい……!」
ラフィタは驚きと喜びの混ざった表情で答えた。
「……よかった」
白菊 珂慧(しらぎく・かけい)は、パートナーが長年の家族との確執から開放されたことを喜んだ。

「任務とはいえ数々ご迷惑をおかけしました。教導団員として深く陳謝いたします」
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)の謝罪に、ジェイダスは笑みを返す。
「終わりよければすべてよし、だ。
 君達の友情が変わらぬものであるようにね」
ルカルカは、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)と握手する。
獅子小隊ならびに教導団と薔薇の学舎の対立を終幕させたい。
二人の気持ちは、確かに結果をもたらしたのだった。