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 第2章 未来 イルミンスール魔法学校

■□■1■□■ 未来のエリザベートとアーデルハイト

荒涼とした大地には、巨大な切り株があった。
一行が降り立ったのは、未来の世界、
切り倒された世界樹イルミンスールの前であった。
エリザベートとアーデルハイトの魔法で、
一瞬で未来の世界にやってきたのだ。

「よし、一刻も早くヴァイシャリーに向かわねば!」
小ラズィーヤは、周囲の様子に驚いている静香と学生達を連れて、
ヴァイシャリーに行った。

★☆★

国頭 武尊(くにがみ・たける)は、別の理由で、イルミンスールに残っていた。
(桜井静香が男の娘だと知っているのは、
百合園の一部の生徒と他校の一部の生徒のみ。
事実を知っている者が悪戯に口外しなければ、
将来的に桜井校長は女性として百合園を卒業し、
就職なり結婚なりしたと思われる。
しかしながら、小ラズィーヤと称する小娘が
公衆の面前で桜井校長を男の娘と言ったため状況は変わった。
不特定多数の人物が桜井校長の性別が男の娘である事を知ってしまった為、
校長は性別を隠し通す事ができなくなり、
結果として未来の校長は宦官になるしか選択肢がなくなったのかと。

つまり、アレだ。小ラズィーヤと称する小娘が
桜井校長が男の娘だと不特定多数の前で暴露しなければ、
最凶の悪の大宦官は誕生しなかったんじゃないか?

そう、諸悪の根源は桜井静香ではなく、小ラズィーヤを過去に送り込み
公衆の面前で桜井静香の性別を暴露させたエリザベートとアーデルハイトなんだよ!!

 って事で、未来の世界でイルミンのお馬鹿魔女2人を捜して、
余計な事をしやがってと怒鳴り込んでお尻ぺんぺんしてやるぜ。
 ん、待てよ。
現在の世界ではエリザベートはロリッ子だが、
未来の世界では成長してるはず。
お尻ぺんぺんよりも、パンツを奪い取った方がいい気がしてきたぞ。
ふひひ、これは楽しみだ)

武尊の迷推理には、正しいこともあった。
未来のエリザベートは、成長して、10代後半の美少女になり、ナイスバディになっていたのだ。

★☆★

「きゃあああああああああああ、
 エリザベートちゃああああああああああん!!」
神代 明日香(かみしろ・あすか)は、猛ダッシュで未来エリザベートに駆け寄った。
「アスカ!? どうしたですぅ?」
エリザベートちゃん、エリザベートちゃん、エリザベートちゃん!!
 素敵なレディーになりましたねぇー」
エリザベートをみつめてうっとりしている明日香に、声をかける者がいる。
「落ち着くのですぅ、過去の私。
 あなたの大好きな可愛いエリザベートちゃんはもとの時代に居るのですよ」
未来明日香であった。
「未来の私!?
 今、エリザベートちゃんとは!?」
「私は強化人間になり、エリザベートちゃんと契約を果たしたのですぅ」
明日香に、未来明日香は衝撃の事実を告げる。
「過去の世界にはあのかわいいエリザベートちゃんが……。
 そして、未来の私はエリザベートちゃんと契約!
 これって薔薇色の未来じゃないですか!?
 何も改変する理由なんてないじゃないですかー!」
「落ち着きなさい、アスカ。
 世界樹イルミンスールは切り倒されてしまったんですよぉ。
 このままでいいはずないのですぅ」
明日香にエリザベートがツッコミを入れる。
「パンツダー・オン!
パンツ番長、参上!
諸悪の根源たるエリザベートのパンツを頂戴するっ!」
そんな中、武尊が、パンツを頭にかぶり、覆面のようにパンツをかぶった姿で、
エリザベートに襲い掛かる。
「ちょ、ド変態ですぅ!!」
「エリザベートちゃんに狼藉を働くなんて許しませんよぉ!」
「私のエリザベートちゃん、私のエリザベートちゃん……。
 汚そうとする奴は許さない……ふふふふふ」
明日香と、強化人間となりヤンデレ化し、エリザベート依存症の未来明日香が、
武尊をぶっ飛ばす。
「ぐはああああああ、
 いい女になりやがったなエリザベートォ!
 パンツ番長は不滅だぜ! 絶対、いつかパンツゲットしてやる!」
「まったく、このめちゃくちゃな状況を解決するために過去からお前らを呼んだというのに」
ため息をつくアーデルハイトに、
明日香は言う。
「あ、アーなんとか様。
 地球人以外は時空転送されちゃいけないのに何で来てるんですかー」
「私は元からこの時代にいるのじゃ馬鹿者!
 明日香、お前というやつは、昔からそういうところが何も変わっておらんのう」
明日香の言いがかりに、アーデルハイトはブチ切れる。

★☆★

ぎゃーぎゃー騒いでいると、
立川 るる(たちかわ・るる)がエリザベートに近づいて質問する。
「未来の詳しいお話が聞きたいんだけど、
 魔法学校ってもうなくなっちゃったんだよね?
 てことは、校長先生も、もう校長先生じゃないよね?
じゃあ「エリザベートちゃん」って呼んじゃおっかなー、えっへへー☆
ということでエリザベートちゃん、静香校長どうしちゃったの?
 超人化して神になったまではわかるけど、どうして独裁政治なんか。
もしかしてエリザベートちゃん、静香校長のお菓子を勝手に食べたり、
それを咎められて逆ギレしてぶっ飛ばしたりして怒らせたんでしょ!
ダメだよ、そんなことしちゃ」
「何を言ってるんですかぁ。
 わたしはずっと校長先生ですぅ!
 イルミンスールが切り倒されても、魔法学校なくなったりはしてませぇん!
 だいたい、わたしが人のお菓子を勝手に食べるなんて、
 そんな子どもっぽいことするわけないじゃないですかぁ」
腕組みして怒るエリザベートの胸を、るるは凝視する。
「エリザベートちゃん……。
 じゃなかった、校長先生……。
 なんだかバタバタしてて気づかなかったけど、
 ものすごくナイスバディに……。
 今のるると同い年くらいなのに、この差はいったい……。
 超ババ先生の子孫なのに!!」
「ふふーん、これがわたしの実力なのですぅ。
 ずっとロリっ娘のままの超ババ様と一緒にしないでくださぁい」
「お前ら、さっきから失礼すぎじゃろう!」
アーデルハイトが怒る。
「やめて、るるにその姿を見せつけないで!
 ボンキュッボンっていう音が聞こえるよ、校長先生!」
るるは、ポーズを決めるエリザベートから両腕で自分の視界をふさぎつつ後ずさる。
「シャンバラ中が水の底に沈んじゃったって……。
 きっとるるの家も……。
 るる家……水の底……」
「あっ、るる、どこに行くですぅ?」
ショックを受けたるるは、おどろ線を背負って、どこかに立ち去ったのであった。