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リアクション
■□■3■□■ 未来のラズィーヤ
再び、ヴァイシャリーにて。
ラズィーヤに直接、接触しようとする者がいた。
「ラズィーヤさんー。
本当に、お相手は、ジェイダスさんなんですか……?」
如月 日奈々(きさらぎ・ひなな)は、小ラズィーヤに父親を聞いたものの、
どうもしっくりこない気がしたので、
ラズィーヤに直接確認しようと、ラズィーヤ邸にやってきたのだった。
しかし、門前払いをくらい、それでもめげずに何回も突撃を繰り返している。
「こうなったら、潜入するしかないですねぇ……」
日奈々は、ラズィーヤ邸への潜入を試みるものの、警備は厳重であり、
つまみ出されてしまう。
★☆★
そこに、小ラズィーヤと、現在の静香一行がやってきた。
さらに、
「あ、あたしはラズィーヤ様に憧れてるんですー。
仕事もできて、可愛いお子さんもいて……すごく素敵だと思いますー。
そういえば、ラズィーヤ様の結婚相手ってどういう方なんでしたっけ?」
などと言い、七瀬 歩(ななせ・あゆむ)も、
メイドのふりをして、ラズィーヤに接近しようとしていた。
「あ、あのあたし小ラズィーヤちゃんに一目ぼれしちゃって。
お世話役として働かせてもらえませんか!」
歩は、ちょうどやってきた小ラズィーヤに抱きついて言う。
「そのようなこと、勝手に……」
屋敷の使用人が困っていると、
未来の七瀬 歩(ななせ・あゆむ)がやってきた。
「よいではありませんか。入れてあげなさい」
「七瀬様がそうおっしゃるのなら……」
「ええっ、未来のあたし、偉い人になってる!?」
歩が驚く。
「日奈々さん、ですよね?
ご一緒に奥へ参りましょう」
未来の歩は、日奈々も連れて、屋敷の奥に一行を通す。
「よく、過去から来てくださいました。
今の百合園も、過去のように、皆が仲良くなれると信じています」
元々の静香の思想に共感していたことや、
人当たりの良さから百合園の穏健派として、
未来の歩は、対立しがちな女官と宦官の間を取り持っているのだった。
しかし、残酷な命令などに対しては疑問を持っており、
傷ついたレジスタンスなどを自分の屋敷に匿うなど、対立については心を痛めているのだという。
未来の歩がとりなしてくれたので、歩は小ラズィーヤのお世話係になることができたのだった。
「ジェイダスさんが、ラズィーヤさんのお相手っていうのは、
本当なんですか……?」
「それは……」
日奈々の問いに、未来の歩は小ラズィーヤの方を見て、困ったように沈黙するのだった。
★☆★
広瀬 ファイリア(ひろせ・ふぁいりあ)は、一同に提案する。
「ファイは、ラズイーヤちゃんを説得して、
ラズイーヤちゃんと一緒に未来の静香ちゃんを止めるっていうのがいいと思いますっ!
潜入することになったら、ファイ、がんばって静香ちゃんを守るですっ」
そこに、未来のファイリアが現れる。
「はわっ! ファイのそっくりさんが出て来ましたですっ!?」
「ファイはファイですよ、ファイリアちゃん」
髪をロングにして大人っぽい雰囲気になっている未来のファイリアは言う。
未来のファイリアは、結婚して夫と娘がいるが、
今の大混乱した世界に不満を持っており、
機を見て静香を倒すレジスタンスの手引きをしようと思い、一メイドとして潜入しているのだった。
「ラズィーヤさんに良心を取り戻してもらうには、
きれいな静香校長に会わせるのがいいと思うんです。
僕、全力で静香校長を護衛しますから協力していただけないでしょうか」
音井 博季(おとい・ひろき)に、未来のファイリアはうなずく。
「はい、ファイが皆さんをご案内します」
★☆★
「お待ちなさい。
それでは、宦官や佐藤 花子(さとう・はなこ)との寵愛を競う、
『MMR』……私の私によるラズィーヤ様のための活動に不利益を及ぼしそうです」
そこに現れた未来の高務 野々(たかつかさ・のの)が言う。
「あ、ちなみに、ラズィーヤ様のお名前の頭文字が『L』かもしれないことは気にしてません」
「何を言ってるんですか、未来の私!」
現在の野々が、未来の自分に詰め寄る。
「あなたは、過去の私?
……私は彷徨うメイドとしての実績を利用して、
貴族街やスラム街で片手間に奉仕活動をしつつ、
世間話を利用して積極的に情報収集やアジテートを行っています。
ねえ、協力しない?」
未来の野々に耳打ちされ、現在の野々は言う。
「残念ながら、お断りします。
『片手間に』奉仕活動、ですって?
貴方のメイド心はその程度でしかなかったのか! 高務野々!」
「断る?」
未来の野々は聞き返す。
「貴方がすべき事は!
そんな狡いことして支える事ではないでしょう!
そんなんだから、いつまでたっても主が出来ずに!
メイドとしての本懐を忘れてしまうのです!
メイドとは奉仕の心が最優先!
たとえ作業がルーチン化しようと!
心がないのでは、ただの機械と変わらない!
貴方にメイドである資格はない!
この私が、思い出させてあげましょう!
真の奉仕の心を!」
「そう、まだそんな生ぬるい事を言ってるの……。
奉仕の心? メイドの本懐。
そんなもの、過去の劣った私に出来るとでも?」
「メイドインヘブン!」
現在の野々は、花びらをまき散らした。
「ふ、何やってるのよ、もってもいないスキルで……」
未来の野々が笑う。
「……。
不発ですって?
いいえ、違います。
周りを見なさい。この和み空間を!
メイドの本懐は、ご主人様に尽くし、また周りの笑顔を絶やさぬこと!
この和みこそメイドの心、真の奉仕なんですよ!」
「おお、手品だ手品だ」
小ラズィーヤは喜んでいるっぽい。
「な……なんですってー!!
これが……奉仕。
そう、忘れてたわ。
いきましょう、ラズィーヤ様の元へ」
「はい、これこそが、萌え燃えメイドです!」
未来の野々が言い、現在の野々がうなずく。
こうして、未来の野々は、未来のファイリアとともに、ラズィーヤの元に案内をすることになり、
静香達一行は、ラズィーヤの元に向かうのであった。
なお、
「コントだったのかな……」
という、静香の控えめなツッコミは、二人の野々は気づかなかったのであった。
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