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リアクション
★ ★ ★
「モデルとは……、結局いつもこういうパターンになるのだな」
ちょっと諦め気味に、林田 樹(はやしだ・いつき)が溜め息をついた。
「何をおっしゃいますか。純粋なメイドのワタシをさしおいて、メカメイドなどをのさばらせるわけにはいきませんから。これも大切な戦いです。さあ、これをお召しください」
林田樹の教導団軍服を脱がせたジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)は、身体のラインがもろに出る真っ赤なマーメードラインのイブニングドレスを取り出した。バンザイさせた林田樹の上からドレスを通すと、皺がよらないようにこまめに引っぱりながら身体にフィットさせていく。ホルターネックラインのドレスは、肩と背中が大きく開いてむきだしになっていた。ロングのスカート部分は横に大きくスリットが入っていて、ちょっと動くと長身の林田樹のすらりとした脚がむきだしになるようになっている。
「では、座ってください。メイクをします」
「メイクまでするのか!?」
「当然です」
慣れないなあと、多少ぎこちない林田樹をスツールに座らせると、ジーナ・フロイラインはピンヒールの靴を履かせて、腕にはレースのフリルがついた長手袋をきっちりとのばしながら填めていった。その後は後ろに回り込むと、林田樹の艶やかな黒髪を高く結い上げていく。
「いったいなあ……そんなに引っぱらなくても……」(V)
「緩いと、そのうち崩れて解けてしまいますよ」
髪を強く引っぱられて悲鳴をあげる林田樹に、ジーナ・フロイラインは淡々と言った。
「何をしているのですか?」
パールとグラスで飾られたミニティアラを準備していたジーナ・フロイラインは、林田樹が太腿の辺りで何やらごそごそとしているのを見咎めて訊ねた。
「いや、ちょっとね。一応念のため」
両太腿にホルスターを取りつけながら、林田樹がささやいた。やはり、護身用のピストルの一つもないと、教導団員としてはどうにも落ち着かない。もっとも、彼女の場合は二丁拳銃ではあったが。
「後は、いよいよお顔のメイクですね」
「まだあるのか!? いいかげん勘弁してくれ」
「だめです。今日はきっちりとお嬢様になっていただくんですから」
化粧箱の蓋を開きながら、ジーナ・フロイラインはニッコリと笑った。
★ ★ ★
「さてと始めましょうか。それでは、お嬢様、こちらのお召し物にお着替えを」(V)
すでにメイド服姿に着替えているローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)が、うやうやしくエリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァ(えりしゅかるつぃあ・にーなはしぇこう゛ぁ)に言った。
「はわ……、はーいなの」
慣れた手つきで、ローザマリア・クライツァールがエリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァの着ている葦原明倫館の制服を脱がしていく。和のテイストで作られている制服はパーツが多くて脱がせるのも一苦労なのだが、ローザマリア・クライツァールはてきぱきと一つずつ制服を脱がせていくと、すぐさま綺麗に折りたたんですぐ横に積みあげていった。
髪形が似ているからという理由で、エリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァの希望を入れてリン・ダージ(りん・だーじ)の服とよく似た物が用意されている。
「はわ……、以外とスケスケだよね。うっ、胸がちょっと苦しい……の」
腕の部分や胸元がシースルーになったブラウスにそっと袖を通しながらエリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァが言った。なまじ、きっちりリン・ダージと同じデザインの服を用意してしまったがために、ぺったんことたっゆんの差を、もろに自身の身体で味わうこととなってしまっている。スカートはこれもシースルーだが、生地を何枚か重ねることで完全に透けては見えないようになっているのだが、前が短くて後ろが長くエプロンがないと前が丸見えだ。
「えゅ……、これは、思ったより恥ずかしい、の」
思わずエリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァが頬を赤らめる。
ぺったんこなリン・ダージだからこそおこちゃまですませられるが、たっゆんなエリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァだとそれなりにエロい。
「お嬢様の御希望でございますから」
ローザマリア・クライツァールはメイドに徹して、淡々と着替えを続けていった。
★ ★ ★
「うん、だいたい分かったじゃん!」
ココ・カンパーニュたちの脱衣所の前に体育会座りしていたメイコ・雷動(めいこ・らいどう)が、力強く言った。
ゴチメイたち、特に、アルディミアク・ミトゥナの様子を観察してメイドらしさをまねようとしていると言えば聞こえはいいが、やってることはほぼのぞき一歩手前である。
「うーん、やはりアルディミアクはスタイルがいいのだな」
思わず自分の体型と見比べながら、マコト・闇音(まこと・やみね)がかかえた膝の間に顎を埋めてつぶやいた。
ココ・カンパーニュとほぼ同じ背格好のアルディミアク・ミトゥナではあるが、もろに格闘系のココ・カンパーニュとくらべれば、一回りほっそりしている分、身体のラインのメリハリがはっきりしていて女らしい。女性としては、あまり横に並んでくらべたくない体型だ。まして、お着替え中のため、シルエットとはいえすっぴんのラインをまざまざと見せつけられては、これからモデルとして着替えさせられるマコト・闇音としては、あまり意気があがるものではない。
「さあ、着替えるよ。まこち、早く早く!」
メイコ・雷動が、立ちあがってマコト・闇音の手を引っぱった。
「では、お嬢様、これに着替えるじゃん」
自分の脱衣所の中に入ったメイコ・雷動が取り出したのは、真っ赤なチャイナドレスだった。
「うっ、これなのか……」
少し絶句しながらも、マコト・闇音はメイコ・雷動がするがままにされてみた。
赤いチャイナドレスは、案の定身体のラインにぴったりとしていて、もろにそれが分かるタイプだ。しかも、スリットが深くて、脚が太腿からもろに顕わになって、気を抜くと横からショーツまで丸見えになりかねない。
「がーん。元の服に着替えて、ジャワ殿と会場の隅で茶飲み話していてはいかんのだろうか」
「何を弱気なことを。ジャワは今日はどこかにでかけていていないってココたちが言ってたじゃん」
マコト・闇音の言葉に、メイコ・雷動が突っ込む。ジャワ・ディンブラ(じゃわ・でぃんぶら)は何か用があるらしく、今日は来ていない。
「でも、このドレスじゃ、せっかくのまこちの肌の綺麗さを殺しちゃってるかなあ。じゃあ、こっちに着替えるじゃん」
メイコ・雷動はせっかく着せたチャイナドレスを脱がすと、マコト・闇音を白いヴァルキリードレスに着替えさせた。
こちらはいつも着ている服なわけだが、その分着こなしは慣れている。それをベースにすると、メイコ・雷動は、スカートの左を少し持ちあげて腰の辺りで大きな白い花飾りで留めた。裾が均一でなくなって、少し動きやすくなると共にアクセントにもなる。次に、両側の鬢を前に垂らして、青いリボンで丁寧に編みあげた。それを胸元に垂らし、肩に白いファーをかける。
マコト・闇音の褐色の肌がドレスの白を強調し、ドレスの白が琥珀の肌の艶やかさを強調する。
「うんうん、ばっちり」
メイコ・雷動は満足そうに何度もうなずいた。
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