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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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陸路 5
キマク交渉

 
 騎凛らはヴァイシャリー交渉を終え、陸路行軍してきた本隊に合流する。
 このあとは、サルヴィン川をどう渡っていくかということがあるが、何であれシャンバラ大荒野やキマク付近の問題を取り除いておく必要があった。
 ここはヴァイシャリーやタシガンへの交渉といったものとはニュアンスが少々異なるが、この策士二人が事前、秘密裏に行動を開始していた。
 
 シャンバラ大荒野にて。
「何?」「ドージェ様が……? 教導団と……?」「少年漫画……?」
「今度、教導団の部隊がこの辺りを通るらしいが、目的は大荒野の民の討伐や領土の拡大ではないらしい。
 目的地はコンロン方面。
 なんでも、金鋭鋒にとっての(友情努力勝利の少年漫画誌的意味で)ライバルであったドージェ様を、どこの馬の骨ともわからぬ輩に討たれたのでは納得がいかないということで、コンロンへ真相を調査しに行くつもりらしいぞぃ。
 もしドージェ様の仇に非道の行いがあれば一矢報いる覚悟であるとかないとか」

 蛮族たちに、そう触れ回る者があった。
「そうなのか……」「今度の教導団は一味違う……」
 蛮族たちが去っていく。
「ぬぉわははははははは!」
 新星本隊に先行し、シャンバラ大荒野平穏裡通過のための対民衆宣撫工作を行う――青 野武(せい・やぶ)である。
「野武殿」
「うむ。まあ、嘘も一時の方便ではある。無闇に互いに血を流さぬことの方が上策。
 それに、ドージェが生き返るようなことでもあれば当然放っておくことはないのであるから、あながち嘘とも言い切れぬわい。
 それでは黒。シラノ。十八号。ぬしらも、頼むぞ?」
「お任せを」「お任せあれ」「やぁぁ」
 黒 金烏(こく・きんう)シラノ・ド・ベルジュラック(しらの・どべるじゅらっく)青 ノニ・十八号(せい・のにじゅうはちごう)らはめいめいに扮装する。
 こうして青ら一行はシャンバラ荒野を歩き回った。
 
 ある蛮族は、妖しい医療手袋をしたマスク姿の、流れの医者だという男にこう聞いた。
「道中、教導団の部隊を見かけたのでありますが、いやはや、あれではなんというか、その、遠足というか旅行の構えでありますな。
 それなりに警戒はしているようでしたが、とてもこの地で戦端を開くような殺気は見受けられませんでした」
 ある蛮族は、鼻の大きな十七世紀仏蘭西風の騎士に出会った。
「教導団というのも、冷酷無残な軍人ごっこ集団のように見えて意外と"拳と拳で語り合う"ような"熱い血潮"が流れていたりするのですね。
 ここはドージェ様の為にも"強敵を失ったライバルがその行方を捜したら、実は生きていた"というお約束展開に期待したいところですね」
 またある蛮族は、弱そうなロボットを見た。
「やぁ。十八号くんだよ」
「な、なんだこの弱そうなロボットは。おらぁ!」
「あ、イタタ……腕がもげちゃった。でも大丈夫、嵌め直せば……ほら元通りに」
「うわっ。……で?」
「強敵(とも)の仇うち?なんて、意外と教導団も友情努力勝利の団体なんですね」
 流れの医者と仏蘭西騎士と弱そうなロボットは、荒野の村々を回った。
 話を聞いた蛮族たちの一部は、やってくる教導団の部隊を見張ったが、噂通り、危害を加える様子がないと見ると、手を出すことはなかったのであった。
 

 
 一方の、同じく新星に先行してこちらは大荒野より進みキマク入りした皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)の組。
 キマクは今、新旧勢力が相争う事態が発生している。
 伽羅はその、パラ実の覇権を巡って角逐中の、渋谷チーマー、旧キマク家残党、パラ実復興派(?)等の各勢力に根回しを行い、水面下で接触していた。
 
 さてキマクに入った伽羅たち。
 劉 協(りゅう・きょう)は、交渉については伽羅や他のパートナーらに任せるとして、護衛として来ていた。
「キマクと言えば、パラ実の本拠地ですけど、こんなところに来ちゃって大丈夫なんですかねぇ。
 ああ、言ってたら、おっかないのがこっちへ近付いてきましたよ」
「ふふふ。あのファッションセンスからすると、彼らが渋谷のチーマーのようですね。
 では、うんちょう、おじいちゃん、頼みますよ」
 うんちょう タン(うんちょう・たん)皇甫 嵩(こうほ・すう)が立ちはだかる。
 さすがに渋谷のチーマーも些かその凄みにびびるがしかし彼らも二人の前に立ち、
「クソがっ! 何しにきやがった!?」
 うんちょうと嵩の二人は、丁寧に三国時代からの古式のお辞儀をして見せ、威厳ある声で語り始めた。
「お? おう……」
 チーマーらも、よくわからないが古式に倣った。
「……な、何だぁと?!
 何……教導団の連中がキマクを通るだと!」
「鼻先を通っておきながら一言の断りもないのは仁義に悖ると思い、内々にまかり越した次第にござります。
 何卒お汲み取りあって、格別のご配慮を賜りますようお願いする次第」
「我らは、かたがたの内々のことに嘴を挟む気はござらぬ。
 よって、見て見ぬ振りをしていただければ幸いに存ずるが、如何?」
 嵩、うんちょうがそれぞれに述べる。
 
 こうして、伽羅達は細心の注意をもって、各勢力を回った。
 キマクの各勢力も、現在はキマク内の事情で忙しい。ここに教導団との諍いが入ってバランスが崩れることがあれば厄介である。
 今回、この水面下交渉により、コンロン出兵の背後が脅かされる心配はなくなった。
 
 更に、本隊に先駆けてもう一組、交渉に動いていたのは……