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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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現地 4
内地へ

 
 現地調査班が組まれる。調査は、ボートを出して内海の北岸に赴く。コンロンの内地へと……。
 地下に戻った鷹村、レジーヌ、ナナたちは、クッキーとりんごを食べながら、そのことを聞いた。
 ナナは、これを聞いて北岸への調査を自らも願い出る決意をした。
 鷹村とレジーヌは、先ほどの自らの関心から、三日月島内の調査として進めることになった。
 鷹村は、ここに残る者では、黒乃と共に、兵を率いられる人材である。大部隊の経験はないが、何かの際には、設営中の基地を守るために動くことになるかもしれない。「これはしっかりと、付近の地形等を把握しておかなければなりませんね」
 黒乃についても、この考えは同じだった。それから、
「また兵がにゃんこ?」
 黒乃は自身の小隊の兵力であるにゃんこ兵50が到着するまでに、基地防衛への割り当て等を練る心積もりでいたが、それまで、配備できる兵はやはり、三日月島のながにゃんこだということになった。最近は戦が起こっていないが、百年程前までの小競り合いでの戦闘経験がある老猫がわり振られてきた。
「よ、よろしくね」
「オオェ」「オオオェェ」
 ……大丈夫かな。
 一方、北岸へ送られる調査班として決定したのは、以下のメンバーである。
 グロリア・クレイン(ぐろりあ・くれいん)
 ナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー)
 御茶ノ水 千代(おちゃのみず・ちよ)
 天霊院 華嵐(てんりょういん・からん)
 道明寺 玲(どうみょうじ・れい)
 三日月島で戦闘があった際には、先ほどのように黒乃、鷹村、香取といった面々が兵の指揮を執れる。
 調査班は、兵を連れて行くというわけにもいかない。
 本来なら本営陣の人材が多いが、今は仕方ない。この中では、機甲科のグロリアや、ナナのパートナー侍の逢、天霊院の豹華らが頼れる戦闘員になるだろう。だが、北岸着以降しばらく歩けば、パートナーと組か少数の組になってそれぞれ分かれていくことになるであろうが。
 
 グロリアは、明日の出発に向けて、準備を進めていた。
「パートナー共々、いよいよシャンバラの外での活動ですので頑張りませんと!」
「Yes! Yes!」とフリップにやる気を表明しているのは、物言わぬ機晶姫のレイラ・リンジー(れいら・りんじー)
「馬……ボートに乗せられるでしょうか?」
 ここへ車での小船には何とか乗せてこられたが、これからの現地調査にはどうだろう。
「ボートは島の北に準備しているとのことですので、今のうちに聞きにいっておきましょう。
 行こう? レイラ」
「Yes! Yes!」
 馬を引きずって外を走っていくグロリアたち。
 その様子を見ながら、早速、北岸への調査隊が組まれた、か。――ザウザリアスだ。
「あの子も、調査隊のメンバーのようね」
 彼女は色々状況を把握したいと思っていたため、自身も調査隊に志願しようかとも迷った。
 コンロンに散らばる残る軍閥と何らかの接触をとれることになるかもしれない。
「コンロン地方の各軍閥は、シャンバラ地方が東西に分裂したように、教導団側につくのか、それともエリュシオン側につくのかできっと揉めている筈よね」
 ザウザリアスは河岸伝いを歩き、内海の向こうを見つめそう思う。
「教導団は今回の戦いでこの内海に、海軍勢力を持つ。
 コンロンにもある世界樹なども、教導団が制圧することになるなら、黙って見ている帝国ではないだろうから、何かしらの触手を伸ばしてくると思うわ。
 どの軍閥がそれに触れることになるのか……」
 この島の軍閥も、教導団を利用しようとしコンロンでの勢力の盛り返しを狙っているとすれば、忠誠心は望めない。状況次第では後方を撃たれる可能性も……まずは、ゆっくり。私はもうしばらく、ここで時間をかけて調べていこう。ザウザリアスがそう思っていると、
「世界樹、ね。コンロンのどこにあるのかしら」
 先ほどのザウザリアスの言葉に反響したように、女の声が後ろから返ってくる。
「あ、あなた……は」
 ザウザリアスは一瞬、どきっとした。
 教導団の女性ではない……今は。しかし元・憲兵科として名を馳せた、宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)だ。
 ザウザリアスも噂に聞いて知っている。
「今は、空大生。
 歴史を学ぶ身としては、この地で直に、文明の源流を学びたい。
 とは言え、長い戦乱で遺跡も文明もかなりのものが消失しているんでしょうね。そして、世界樹……このコンロンにもどこかにあるね」
「お姉さま……」
 宇都宮の後ろには、共にこれまで教導団の戦いを勝ち抜いてきたセリエ・パウエル(せりえ・ぱうえる)湖の騎士 ランスロット(みずうみのきし・らんすろっと)同人誌 静かな秘め事(どうじんし・しずかなひめごと)らが控えている。彼らも勿論、今は空大生だ。
「教導団に派遣されてきた、というわけではないのですね?」
 ザウザリアスはそう語りかけてみる。
「ええ。勿論、騎凛先生の手助けをしたいっていうのもあるけどね。
 でも、同じ西側として、エリュシオンを打倒したい気持ちは同じだわ。私たちは、私たちの意志で今回は動くけれど」
「同じ、西側としてエリュシオンを……ええ」
「あなたは新兵の子なのね。よろしく、と言っても今、私は教導団じゃないけれど。
 敵は同じだものね」
 ザウザリアスは、頷く。
 宇都宮も、にこっと笑って返すと箒を取り出した。
「さて。では、私たちは私たちで、コンロンの奥地へと向かうわ」
「お姉さま」
「(公私混同という感じは否めないが……それも人の業か)」
「うふふ。ちょっと危なっかしそだけど、楽しみね♪」
 パートナーたちが次々、その後ろにまたがる。
 ザウザリアスは、内海を飛んでいく宇都宮を見送った。