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聖戦のオラトリオ ~転生~ ―Apocalypse― 第2回

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聖戦のオラトリオ ~転生~ ―Apocalypse― 第2回

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第九章 〜決定〜


・全校イコン


「さて、今日の会議を始めるぜ」
 雨月 晴人(うづき・はると)が口火を切った。
 全校用のイコンについて、この会議でほとんど決めたいところである。
「ところで、天学のシミュレーターでクルキアータと戦ってみたか?」
 ちょうど最近になってウクライナでの戦闘データを解析し終え、シミュレーターにF.R.A.G.のイコン、クルキアータのデータが実装されるようになった。
「オレはあれに勝てなかった。こっちの攻撃は当たらないし、当たっても硬い。あれで量産型というのだからタチが悪い。
 しかもだ! シミュレーターはパイロットの腕まで完全再現は出来ない。実際はあれよりも、もっと強いってわけだ。せめて、こちらは二機一組で、量産型クルキアータ一機に対抗できるくらいの性能は欲しいところだ」
 その目的を果たすためにも、「強化パーツなしで飛行可能」というのは譲れないと主張。それについては、元々飛行はデフォルトで、という方向で進んでいるため問題ないだろう。
「標準装備は一種類に絞る。その方が大量生産に向いてるからな。こちらは量産型クルキアータより強力なものを用意したい。天学の得意分野を生かしたビームのアサルトライフルベースに、ビームの銃剣をつけて、武器の持ち替えなしで近接戦闘にも対応できるようにする。敵のビームサーベルとも切り結べるようなちゃんとしたやつをな。自分から近接戦を仕掛けるんじゃない。仕掛けられたときに、すばやく反撃出来るようにするためだ。もちろん『常時使用可』にしないとな」
 それと、と付け加える。
「武装で来機体のエネルギーを使ってしまうと稼働時間が短くなる。出来れば武装はカートリッジ方式にしたい。加えて、今まで開発されたものが活かせるように、、イーグリット・コームラント用の武装は全て使用可能に出来れば一層いいな」
「武装の銃剣付きビームライフルというのには同意だ」
 晴人の案を受け、湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)が言う。
「ビームなら弾速が速いから、初心者でも扱い易いだろうし、銃剣を付けとけば不意の接近戦でも十分対応出来るだろう。問題はコストが若干かかるというのと、整備性だ。それらが改善出来れば十分に使える装備だと思う」
 今の技術水準でその二点をどうにか出来れば、実現可能だと指摘する。
「で、次に対大型目標及び対要塞重火器として、『大型荷電粒子砲』の研究、開発を提案したい。原理的には『馬鹿デカくてやたら高出力な電子レンジ』だし、構造的には単純だと思う。ただ、当然のことながら高出力のジェネレーターと高温に耐え得る素材、砲自体の重量問題等、解決すべき問題は山積みってのが難点ではあるな。まあ、これは急ぎの装備ではないだろうから、基礎研究から始められればいいか、ってところだ」
 もし、今ポータラカに技術研修に行っている者達が何かを得て帰って来れば、こういったものも実現出来るようになるだろう。
「武装に関しては、アサルトライフルの意見に賛成だ。実体ナイフかビームサーベルを太腿部に内臓または装備すれば、両手でライフルやシールド、ライフルも可能だろう。もっとも銃剣付きに出来るならさらに可能性は広がるが、コスト面の問題を考慮して、アサルトライフルは必須ということにしたい」
 閃崎 静麻(せんざき・しずま)が意見を言い始める。
「機体に関してだが、天学の三機のイコンは基本フレーム自体は大差ないことが調べて分かった。あくまでイーグリットを基準に再設計してみたが、量産性を高めるために機構の簡略化、強度向上、そして小型化を試みた」
 その設計図を提示する。
「理論上は可能だということが分かった。大体八〜九メートルの間の大きさになりそうだ。機体サイズ的にはSサイズになる。
 汎用性に関してだが、ハードポイント制はこちらに導入出来そうだ。それによる拡張性を踏まえたため、小型化を先に考えた。ポイントは背部、肩部、腕部、腰部、背部以外は左右両方になる。熟練者でなければ装備を個別に選ぶのは難しいだろうし、この様式を採用するなら用途に適した装備群をセットでまとめるのが望ましい」
 それと、さらに加える。
「飛行能力に関しては、外部装備でもいいと思う。ハードポイント制を用いれば背部か両脚部のどちらかに基本装備として接続すれば飛行能力の確保が可能。被弾時の切り離しも容易となり、空戦をしない場合は装備しないことで飛行ユニットのデッドウェイト化を防げる。代わりに水中用推進器なり陸戦用のローラーなりを装備すれば各地形にそれなりに適応した機体に仕上げられる」
 極力素体はシンプルに、という方向のようだ。
「あと、これはおまけのようなものだが、『量産機による擬似高出力大型機』をコンセプトに、機体全体を包み込み装甲と背部・脚部に大型ブースター込みに外部フレームをハードポイント制を利用して機体各所で接続。外部フレームには別途に動力部または大容量バッテリーも内蔵して全体の出力を高める。両腕部はシールド兼任で質量を武器とするナックル化」
 設計図を先程のように示すが、かなり無茶があるものだった。おそらく、今のシャンバラの技術では難しいだろう。それこそポータラカの技術を持ち帰って来てくれることに期待しなければならないほどに。
「武装案について提案があるんだけど、いいかな?」
 エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)が声を発した。
「この前に引き続く感じで、剣の花嫁がパイロットにいる場合、パイロットである二人のいずれかの使用形態の光条兵器をイコンでも使用可能にしたい。扱いとしてはビーム兵器の一種になるか」
 具体的な説明に入る。
「パイロットの慣れた形での兵装が出現出来るので、パイロットの熟練度を上乗せさせる可能性があること、何より使い慣れた武器が使用出来るという点でパイロットの負担が少ないというのが利点。
 欠点は剣の花嫁が同乗しないと使えないこと。なので兵装として、剣の花嫁を選択するだけの魅力がないと無用の長物になる可能性が高いこと。その辺りを考えると、どちらかといえば汎用機よりも天学向けかもしれないけど、パートナーとして剣の花嫁と契約しているのは天学以外の学校に多そうだから、全校向けの方で載せておきたい。汎用兵装でこれが技術的に上手く出来たら、他のパートナー種族固有の能力もイコンに反映出来るようになるかもしれない」
「あとは技術的な問題点だね。専門家の意見を伺いたいところだけど、生憎今博士はポータラカ。そこで何かを掴んできてくれれば、実現可能性を上げれそうなんだけどね」
 メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)が告げる。
 イコンに詳しい博士か罪の調律者がいれば問題点や解決するためのプロセスを導けたかもしれないが、それはまだ無理なようだ。
「まあ、今はまだ不可能でも、じきに可能になるかもしれない。そのときに兵装が追加出来るように開発をしておきたいからね」
 ハードポイント制ということなら、外部ユニットで光条兵器を反映させるようなものを追加出来るかもしれない。もっとも、その前に内部機構をいじらなければいけないのかもしれないが。
 その点については、要確認だろう。
「ふむ、武装案や基本的な設計については出てきたが……どんなに新型機が融通の利く高性能機であったとしても、パイロットの技量が追いついてなければ振り回され、どんなに火力があろうと、当たらなければ意味がない」
 クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)がそれまでと異なる視点から切り込む。
「技量の劣るものが強敵に立ち向かうならば、複数機体で組んで一機に当たるという形が基本になるだろう。最初に『クルキアータに二機一組で対抗したい』という意見も出ているからな。そして連携を重視するならば、『通信』が重要になる。敵の通信妨害に負けないだけの強力な通信手段を備える。そして、それを利用し、相互に周辺の位置情報を共有することで、総合的な射撃管制を構築する」
 要は、基本的な操作性の簡易化を行い、数が集まれば集まるほど命中率が上がるというような、射撃管制を基本システムに組み込むということである。
 天御柱学院のような訓練を積んだ者でなくとも、大規模な作戦で初心者が連携を取った際に真価を発揮出来るようにする。それが、シャンバラ王国に配備される次世代機として必要なのではないかということらしい。
 個人ではなく、集団としてより効率よく戦うためにである。
「確かに、そこまで乗りなれてなくても最低限照準を連携して合わせられるシステムの導入は検討した方が良さそうだな。天学でも、一部の小隊が相互連携通信システムみたいなのを導入しているから、不可能ではないと思うぜ」
 と、晴人が言う。
 これまでに決まっていた、

・飛行
・拡張性、量産性、汎用性
・基本的な操作性の簡易化

 の三つについて今回出た内容を加えると、

・飛行は標準装備。ただし、用途によっては装備しないという選択も出来るように飛行ユニットは着脱可能にすることも視野に入れたい。
・基本武装の理想は銃剣付きビームアサルトライフル。
・ハードポイント制による拡張性の確保。
・射撃管制システムの導入。
・機体の小型化と簡易化により、量産性を高める。

 といった要素は全校第二世代機に反映したいところだ。

 諸々の兵装に関してはハードポイント用の装備セットに開発され次第組み込むことを視野に入れ、現実的に考えた全校向けの仕様書が作成される。

・飛行はデフォルト(外す場合は、任意で)
・ベースはイーグリットのフレームを流用、一回り小型化する(Sサイズ)
・構造を考えると、機動性はクェイルとイーグリットの中間、装甲強度はイーグリットとコームラントの間になる。
・射撃管制、及び機体操縦のサポートプログラムを導入。
・基本装備は銃剣付きビームアサルトライフル。
・この機体専用の装備パックを数種類用意する。また、既存の兵装との互換性は持たせる。

 若干の変更はあるかもしれないが、概ねこれらを踏まえて新型機の製造に移ることだろう。