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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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地に眠るは忘れし艦 ~大界征くは幻の艦(第2回/全3回)

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「敵は宇宙港を破壊して活気づいているでしょうね。次に狙われるとしたら、ゴアドー島のゲートね。イーリがパラミタを離れられない以上、私たちにできる最大限のことと言ったら、ゴアドー島のゲートを守ることかしら」
「分かりましたわ。イーリは、ゴアドー島にむかい、ゲートの警護にあたります。それでよろしいですか、ヘイリー」
 アイランド・イーリのブリッジでは、リネン・エルフト(りねん・えるふと)の言葉に、ユーベル・キャリバーン(ゆーべる・きゃりばーん)がヘイリー・ウェイクに確認を求めていた。
「ああ。あたしらがいれば、多少の睨みにはなるよね。留守居艦隊を纏めて、しっかりと守ろうじゃない」
 すでに、何人かとはメールアドレスも交換しているし、連絡は密にするに越したことはないとヘイリー・ウェイクがうなずいた。だだ、問題は、残った艦船がアイランド・イーリを中心としてうまく纏まるかどうかだ。別に、留守居艦隊の旗艦になるつもりも必要もないが、纏まりを欠いては各個撃破の対象になるだけであった。
「細かいことは、現地で考えましょう。イーリ、発進します。ゴアドー島へむけて、フリングホルニを追尾」
 ユーベル・キャリバーンが、ブリッジ要員の各員に告げた。
 発進したアイランド・ユーリがフリングホルニに続く。
 
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「こちら、ハーポ・マルクス。フリングホルニへの着艦を求めます。……えっ? はあ、そうですか……」
 発進したハーポ・マルクスをフリングホルニに近づけて、ジョン・オーク(じょん・おーく)が通信で訊ねた。
「どうだい。受け入れてもらえそうかなあ」
 期待に目を輝かせて、カル・カルカー(かる・かるかー)がジョン・オークに訊ねた。
「いや、ダメだそうです。ちゃんと自力で飛行しろと……」
「そうかあ。いいアイディアだと思ったんだけどなあ」
 ジョン・オークの答えに、カル・カルカーが残念そうに言った。
 小型のハーポ・マルクスのエネルギーを節約するために、フリングホルニの甲板に載せてもらおうと思ったのだが、ちょっと虫がよすぎたようである。理論的には、ハーポ・マルクスの大きさであれば甲板に着艦することは可能ではあるが、自力航行が可能な艦船よりも応龍などの自力航行が難しいイコンが優先されるとのことだった。
 カーゴでは、高崎 朋美(たかさき・ともみ)ウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)ウィンダムの整備をしていた。
「少し休んで、お茶にでもしなはりまへんか?」
 高崎 トメ(たかさき・とめ)が、おぼんに湯飲みとお茶菓子を用意して、高崎朋美とウルスラーディ・シマックを呼んだ。
「ああ、夏侯 惇(かこう・とん)はんもどないどす?」
 愛想よく高崎トメがお茶を勧めて回った。
「もらいます」
 遠慮せずに、夏侯惇がお茶をもらう。
「どれ、ジョンとカルにも持っていってやるか」
「じゃあ、あたしも一緒に行きますえ」
 二人分のお茶を持って、夏侯惇が高崎トメと一緒にブリッジへとむかった。
 
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「さて、こちらも遅れずに発進だ」
 鬼頭 翔(きとう・かける)が、ヒンデンブルク号を発進させる。
「でも、ヒンデンブルク号でヴィムクティ回廊を通れるのですか?」
 頭の上の方から聞こえる、プロペラのパタパタという音をちょっと気にしながら、カミーユ・ゴールド(かみーゆ・ごーるど)が訊ねた。
「大丈夫です。ちゃんと、ヤシュチェの守りを手に入れていますから」
 オリバー・ナイツ(おりばー・ないつ)が、ブリッジ後方にある神棚を指して言った。その中に、ヤシュチェの守りが祭られている。
「ええっと、任せましたわよ、ナル」
 ちょっと不安を隠しきれずに、カミーユ・ゴールドがオリバー・ナイツに言った。
「まあ、なんとかなるさ」
 鬼頭翔が、ちょっと考えてから言った。
 イコン用コンテナには、物部 九十九(もののべ・つくも)を憑依させた鳴神 裁(なるかみ・さい)ドール・ゴールド(どーる・ごーるど)が、{ICN0003296#宝貝・補陀落如意羽衣}を搭載したイコプラ【ポータラカUFO】を収容してもらっている。
「ぺたぺたぺた」
「何をしているの?」
 鳴神裁が、筆を持って宝貝・補陀落如意羽衣に何か描いているドール・ゴールドを見て訊ねた。
「少しでも、突入などのときの助けになるかと思って、迷彩塗装をしているんです」
 ドール・ゴールドが答える。黒猫キャットスーツという感じであった宝貝・補陀落如意羽衣が、いつの間にか三毛猫キャットスーツという感じになっていた。
「こ、これはこれで……」
(うんうん)
 ちょっと気に入ったらしい鳴神裁の中で、物部九十九が同意した。
 
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「ウィスタリア、発進します」
 最後に、アルマ・ライラック(あるま・らいらっく)ウィスタリアが発進した。
「待つのじゃ〜」
 あわてて、アレーティア・クレイス(あれーてぃあ・くれいす)の乗るゴスホークがウィスタリアに着艦した。
 新型の2.5世代機である。漆黒で均整のとれたフォルムに、ジェファルコンと同様のBMIとエナジーウイングが搭載されている。
「遅かったぞ」
 イコンデッキのハンガーに収められたゼノガイストの前で、待ちかねていた柊 真司(ひいらぎ・しんじ)ヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)リーラ・タイルヒュン(りーら・たいるひゅん)と共にアレーティア・クレイスを出迎えた。
「なんとか間にあったようじゃな。まったく、無理をさせおる」
 コックピットから降りてきたアレーティア・クレイスが、ゼイゼイと荒い息で言った。
「御苦労様」
「これで、私の力も十二分に発揮できるというものね」
 アレーティア・クレイスを出迎えるリーラ・タイルヒュンとは対照的に、ヴェルリア・アルカトルはBMIを搭載したゴスホークに興味津々というところだ。
「へえ、これが新型かあ」
 もう一人、ゴスホークに目を輝かせている者がいた。柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)だ。
「じゃあ、調整は二人に頼んだぞ」
 ゴスホークの整備はアレーティア・クレイスと柚木桂輔に任せて、柊真司がどこかへ行こうとする。
「何を言うか、お主に合わせて調整するのだから、さっさとコックピットに入るのじゃ」
 すかさず柊真司の襟首を捕まえたアレーティア・クレイスが、彼を思いっきり引き戻した。