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古の白龍と鉄の黒龍 第2話『染まる色は白か、黒か』

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古の白龍と鉄の黒龍 第2話『染まる色は白か、黒か』

リアクション

 
(戦いが終わりましたか。
 見物しながら思慮しましたが、この世界で八卦術師が行うことは、残念ながら無いようですね。龍族にも、そして鉄族にも肩入れする気は起きませんでした)

 地上に降り、朱鷺がふぅ、と一息つく。龍族にも鉄族にも付かない、つまり第三勢力として行動すること。
(ならば東朱鷺として、行うことを探しましょう。
 朱鷺が行うこと、それは、探求に他なりません。そうですね……このまま北東に歩を進めましょう)
 そう思い、朱鷺は『ポイント39』からさらに北東へ歩を進める。
(できればデュプリケーターなるものに出会ってみたいものですね)
 その願いは叶うだろうか、そう思いながら朱鷺は歩み続ける――。


 龍族と鉄族、それぞれが契約者に作戦への協力を持ちかけた事から始まった一連の流れは、龍族の『ヴェルディーノ作戦』、鉄族の『オペレーション:529』とも、同様の結果に終わった。
 すなわち、龍族は鉄族の『ポイント32』を取ったが『龍の眼』を取られ、鉄族は龍族の『龍の眼』を取ったが『ポイント32』を取られた。これにより、互いの種族は敵陣に拠点を築いたことになり、いつでも最終決戦を行える準備が可能になったといえる。互いの首にナイフを当てている状態と比喩出来よう。

 一方、契約者は双方に協力したという姿勢を見せつつ、デュプリケーターを戦場に出現させた上で徹底的な掃討を行った。
 彼らの方針は直前に契約者自身によって修正が加えられた。それが果たして正しい方向になったかどうかは、今後の龍族と鉄族、デュプリケーターの動向如何で判定されることになるだろう。


「…………」
 ケレヌスから『ポイント32』を取った旨の報告を、ラッセルから『龍の眼』を取られた旨の報告を聞き、ダイオーティは今後の方針を思案する。
(『ポイント32』から“灼陽”へは、『龍の眼』から『昇龍の頂』に比べ遠い。そして鉄族はおそらく、ここを近い内に攻めてくるはず。
 ここは一旦守りに徹し、鉄族の勢いを削ぐのが先決でしょうか……)
 そう考えはするものの、果たしてそれでいいのだろうか、という思いもある。それは自分の力になりたいと言ってきた者達の言葉が影響していた。
(……私の望む光景は、私が歩く道の先にあるのでしょうか……)
 その問いに答えられるものは、今は居ない――。


「ケレヌス、これからどうするの?」
 戦後処理を済ませたヴァランティが、ケレヌスに尋ねる。既に鉄族によって『龍の眼』が落ちたことは耳に入っており、こちらも本拠地を射程に捉えてはいるが、危機敵状況であることに違いはなかった。
「…………。本音としては、契約者が真に信頼出来る者たちなのか、この身で確かめたいという思いがある。
 彼らは我々の同胞を救ってくれた。デュプリケーターが脅威であることも理解している。……それでもどうしても、彼らの要請に直ぐには頷けないのだ」
 ケレヌスの言葉を、そこに込められた思いを、ヴァランティは理解しているつもりだった。自分たちのかつての境遇を思えば、簡単に誰かに従うような真似は出来ない。
「……もう少し、考えさせてほしい」
 そう口にして、ケレヌスは自室へ入っていく。その背中を見送り、ヴァランティもいざという時彼の力になれれば、との思いを新たにする。


「ふむ、『ポイント32』を取られはしたが『龍の眼』は取ったか」
 “大河”から『龍の眼』を取った旨の報告を、“飛翔”から『ポイント32』を取られた旨の報告に目を通し、“灼陽”はとりあえず上機嫌であった。条件は同じだが、距離的なものを考えるとこちらの方がより本拠地に近い。それに契約者の働きもあり、自身の修理も大分進んでいた。この調子でいけばもうしばらくで、元通りの姿を取り戻すことが出来るはずであった。
(……ここで戦闘を中止する理由はない。そのような事をすれば、多くの者に反感を買う。
 契約者は戦いの矛を収めろと言ったが、収めることで生じる被害は甚大だ。多少の猶予は認めたとしても、最終的には攻め込むことになるだろう)
 そう結論づけ、“灼陽”は方針を決定する。『これより七昼夜、戦力の回復を図った上で『昇龍の頂』へ攻め込み、ダイオーティの首を取る』と――。


「はぁ!? 七昼夜って、そんなに休んでる暇あンのかよ!」
 “灼陽”の方針を聞いた“紫電”が、部下に凄む。
「しーくん、イジメはメッ、だよっ」
 “大河”に宥められ、“紫電”がチッ、と吐き捨てる。
(……待てよ。これはある意味、いい機会なんじゃねぇか? 契約者がどういう奴らか、オレ自身がこの目でハッキリと見るためのな)
 今回の戦いで、彼にも少なからず契約者を信じようという心は生まれていた。それでもやはり過去の境遇が、彼に素直に従う事への抵抗を生む。
(やっぱさ、オレらにとっては戦いが第一なのよ。
 だからさ、契約者。オレと戦え。そしてオレを……納得させてみせろ)


 こうして、各陣営の方針は、定まりつつあった。
 龍族の動き、鉄族の動き。デュプリケーターとルピナス、そして明かされる『深峰の迷宮』。
 これらが絡み合った先に、いったい何が待っているのだろうか――。

古の白龍と鉄の黒龍 第2話『染まる色は白か、黒か』 完

担当マスターより

▼担当マスター

猫宮烈

▼マスターコメント

猫宮です。
『古の白龍と鉄の黒龍 第2話『染まる色は白か、黒か』』リアクションをお届けします。
……自分が天秤の調律者の気分になっています。

今回にて、契約者の方針は『龍族、鉄族のどちらにも属さず、第三勢力として行動する』に決定し、デュプリケーターを当面の敵として対処する、という方針になりました。
この方針は強制力があるわけではないので、契約者がこの方針に従わないからといって犯罪者扱いされるということはありません。(PCのアクションによっては、マークされることはありますが)

その他詳細につきましては、今後マスターページにてまとめたいと思います。
それなりの時間を要すると思いますので、しばしの間お待ちいただければ幸いです。

第3話は、1本ねっこねこにしてやんよなシナリオを挟んでからの公開を予定しています。
また間が空いてしまうかもしれませんが、どうぞ次回の展開をお楽しみにしていただければ嬉しいです。

それでは、また。