First |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last
リアクション
序章
【マホロバ暦1192年(西暦523年)1月】
東方(あずまがた)――
鬼城 貞康(きじょう・さだやす)の足元に、鬼子母帝(きしもてい)の身体がごろり横たわった
古代種であり、長き時間とともにマホロバで生き栄えた鬼々の母――
齢五千年を重ねるという彼女の、このような最期をだれが想像できただろうか。
鬼子母帝は、かすれた声でしきりに子の名を呼んだ
「貞康、さだやす……我の願いを聞き遂げてくださらぬか。天下人とおだてられ、人間の欲にのせられる、か……!」
「母上、わしは……わししかもういないのです。乱世を終わらせ、天下泰平を築く。鬼城の血は、お望みのとおり必ず後世へと残します。そのためにはどんなことでもいたしましょう。だから、どうか……マホロバの土となり、鬼と人の世を御見守りくだされ……!」
貞康は両手に込め、刀を引き抜いた。
鬼子母帝は一声叫んだあと、小刻みに震え、やがて動かなくなった。
貞康はその場に座り込む。
「この呪われた鬼の血を、子々孫々までマホロバの為に捧げる……それがわしの……罪滅ぼし」
鬼は子供のように泣いた。
First |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last