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ゆきやこんこんはいきんぐ

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ゆきやこんこんはいきんぐ

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○12月21日
クレアさんや涼介さんや垂さんにやさしくしてもらってます。ここは毛布もあるしあったかい。少し元気が出ました。
―――――――――
「はい、紅茶です。青葉帆風」
 病院内で紅茶を淹れてまわっているのは、執事服に身を包んだ道明寺 玲(どうみょうじ・れい)だ。
「これはダージリンのセカンドフラッシュ。多分T.G.F.O.P.クラスね」
 帆風は紅茶の香りをくんと嗅ぎわけ、玲にそう当てて見せた。
「お見事ですな。どこで紅茶を習いました?」
「実家でじぃやが教えてくれました」
「次はじぃやに雪山登山の仕方も習った方がいいでしょう」
 玲は帆風の薄着を指摘し、次の患者に紅茶を注ぎに行く。
「患者はんにお菓子配り終えたんやけど、どないしたらよろしおすか?」
 玲のパートナー、魔女のイルマ・スターリング(いるま・すたーりんぐ)が、がばっと玲にだきつく。
「なにをするんですっ」
「こうしてるとぬくいわぁ。なぁ、かまへんやろ?」
「いや、仕事のじゃまですな」
「そない辛気くさいこといわはんと。最悪火術であっためたるさかいに」
「それは遠慮しよう……」
 ふたりのやり取りで、静かな病院がしばらく賑わう。

 別のかまくらでは、美少年ふたりが肌を抱きすくめ合って体を温めていた。
清泉北都と、そのパートナー、クナイ・アヤシ(くない・あやし)だ。
 狭いかまくらで、クナイは北都の肩に手を回し、ちろちろと燃える携帯ストーブの前で残りわずかになった固形食料をぽきりと半分に折った。
「北都様は大きい方をお食べください」
「いやだよ、だってクナイはそうやってずっと食べてないからねぇ」
「北都様……」
「だって約束したからねぇ。お互い長生きするって。だろう?」
 クナイは北都をぎゅっと抱き寄せた。絶対北都様だけは生き延びさせると心に誓って。

 同じ頃、同じようなかまくらで、まったく別の光景が繰り広げられていた。リリィ・マグダレン(りりぃ・まぐだれん)ヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)。ふたりに共通していたのは『自分だけが助かればいい』ということだった。
「ちょっと、少しくらい食料よこしなさいよ。ケチねえ」
 妖艶な美女が不機嫌そうにねだる。このヴォルチェ、かつては散々結婚詐欺師として資産家を破滅させてきた輩、実は男である。
「この食料は全部あたしの。分けてやるわけないじゃん」
「いったい誰のかまくらに居座ってると思ってるのよ?」
「あんただってココ、男騙して身ぐるみむしり取ってたたき出して放り出したんだろ。人のこと言えるか?」
 魅惑的な美少女リリィは、パートナーの吸血鬼、ジョヴァンニイ・ロード(じょばんにい・ろーど)が必死で携帯ストーブに火術で火を点けようとしているのを冷たい目で見ている。ジョヴァンニイという男、一見イケメンでモテそうなのだが、リリィの方が一枚上手なようだ。
 リリィはジョヴァンニイの腕を抱きすくめると
「使えねーなー。こうすんだよ」
 と、こともなげにストーブに火を灯してみせた。
 ジョヴァンニイが火術に失敗したのは腹ぺこでくたくただったからだったのだが、思わず抱きしめられたジョヴァンニイは別の意味で真っ赤になっていた。
「あらまぁ。なんだかとってもあったかくなってきたわね」
 イヤミとも何とも取れない言葉をヴォルチェが投げかける。
「あたしもあんたのパートナー、どんな子だかみてみたいな?」
 ふたりは意味深な笑顔をかわす。このふたり、一晩中にらみ合うつもりなのだろうか。相手が寝たとたんに全荷物を持ってばっくれそうな勢いだった。
―――――――――
シモヤケもだいぶよくなってかまくらに戻れました。あしたからは一般行動です。特別に携帯食料ももらえたし、紅茶もご馳走になったし、今日はいい日でした。


そのころ。
「捜索隊を出せないとはどういうことですかっ!?」
 無事下山したイレブンが教導団の教官にくってかかる。
「そういらだつな。この悪天候で部隊を派遣しても二重遭難の可能性もある。実際、君らのA中隊だけでなくB中隊はどうなってるのかすら解らん。心配していたトライブ君たちの無事が解っただけでもいいではないか」
 くそっ、とイレブンはこぶしをにぎりしめる。俺は何をしに下まで戻ったんだ。これじゃ意味がないじゃないか……。
「君はよくやった。少し休め」
 そういって教官は去って行った。
「……せっかくのモルモットだ。そう簡単に手放すわけにはいかんのだよ」
と、ほくそ笑みながら。