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リアクション
「なーにか面白いコト、ないかなぁー、ね、タンタン?」
氷見 雅(ひみ・みやび)が空京の一角の喫茶店でアイスティーをストローで吸い込みながらぼやいた。
「いやー、ワタシはない方がいいんですけど……」
パートナーの機晶姫タンタン・カスタネット(たんたん・かすたねっと)と答える。
「えー、つまんないじゃない? 何か『危険地帯』って場所に行きたくない?」
「行きたくないデス」
「『局地』とか『事件現場』は?」
「イヤですー」
「どして?」
「どしてって、普通はイヤですよー」
「そう? あ、アイスティー飲まないの?」
「錆びますから」
「あ、そうだったね。じゃもらうね」
雅はタンタンのアイスティーと自分の飲み尽くしたアイスティーをさっと入れ替えてストローを差し込む。
「あのー、何でいつも二人前頼むんですか? ワタシいつも飲まないでしょ?」
「だって、自分だけ頼んでたら悪いじゃない」
「どっちみち飲めないんだってば」
「あのーすみません。シリコンオイルとかメニューにありますか? ないって」
「お気遣い無く……」
と、そんな会話をしているとき、店内のモニターがぱっと写り替わり、ネクタイ姿のニュースキャスターが現れた。
ーー番組の途中ですが、ここでニュースをお送りいたします。先ほど、空京エリア内に位置する空京大学において、大学敷地内にあるサークル棟が正体不明の武装勢力によって占拠された模様です。
繰り返しお伝えします。空京エリア内に位置する空京大学において、大学敷地内にあるサークル棟が正体不明の武装勢力によって占拠された模様です。武装勢力は『空京大学全学連』を名乗り……
えー、たった今、最新の情報が入ってまいりました。『空京大学全学連』を名乗る武装勢力は、ハッキングした大学公式サイトに『ミナミノ アカネ』名義で声明を出し、それによると、大学内で起こったシャンバラ人差別に基づく不当な処分に抗議すると共に、同大学文化人類学者の日村名誉教授の解任を求める、などと要求しています。
なお人質やけが人の有無など、詳しい状況は現在不明です。また、同大学周囲には、現在非常事態宣言が出されており、周辺地域への不要不急の外出は……
「危険地帯……」
「え」
「これよ! 待ってたのよ大スクープを!」
「ちょ……待っ……」
「行くわよタンタン! 事件が私たちを呼んでるわ!」
雅は小銭をテーブルに置くと、タンタンを引っ張って店を駆けだしていった。
そんな姿を隅のほうの座席でサングラス越しにながめていた男がいた。身長三メートルはあろうかというその超巨漢は、教導団のジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)だ。
「ふーん。何かと物騒だねぇ。オレの行く先はよ」
と、どこか嬉しそうにつぶやいた。
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