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【サルヴィン川花火大会】花火師募集!?

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【サルヴィン川花火大会】花火師募集!?

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 発射場では、昨年花火師に師事した経験を生かしたいと打ち上げの手伝いをするルカルカ・ルー(るかるか・るー)とそのパートナーのダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)の姿があった。
 知り合いや他の学生たちが作った花火は、彼女らの手に託されている。
「了解。次に打ち上げるよ!」
 そう答えたルカルカは、携帯電話の通話を切った。
 花火師の工房で、花火玉が出来上がった際に、ある程度、打ち上げる順番は決めている。
 けれど、ダリルが風向きや状況を見て、煙が観客の元へと流れていかないように打ち上げる順番を変えているため、多少のズレが生じるのだ。
 そのため、時折、ルカルカが携帯電話により、連絡を受けて、打ち上げ順の希望を取り直していた。
 途中で、マーゼンが打ち上げたいと言う。
 彼は、花火玉こそ花火師に依頼して作ってもらったけれど、打ち上げは自分も参加したくて、発射場へと来たのだ。
 1発目に上げるのは、シャンバラの6都市を意味する6色の花火を円形に並べたものだ。
 2発目は現在の東西に分裂したシャンバラ王国になぞられた、3色の花火が2つだ。左右に並ぶように2つを同時に上げる。
 最後である3発目は1発目の中央に花開くようになっている。シャンバラ女王を象徴するような、ひときわ眩く光り輝く花火を配したものだ。
 それらが順に上がるようにセットした後、マーゼンが導火線へと火を付ける。
 筒から花火が勢い良く打ち出され、夜空へと向かっていく。上空で大きな音と共に弾ければ、思い描いていた花火が夜空に花を開かせた。
「花火の輝きは一瞬だが、そこに込めたメッセージは、この先もずっと、人々の心の中で輝き続ける……私は、そう信じている」
 ぽつりと呟くマーゼンは、花火で描いたシャンバラ再統一の夢が、視た者の心に何か訴えるものがあればと願った。
 ルカルカたちが上げる花火も残り1発。セットしたのはダリルの作った4尺玉、その名も『昇銀竜付八重芯変化菊残光』だ。
 連結ボートの上で吹き上げ花火が光の帯を作り出す。その上に大きな大きな花が開くように、その花火は打ち上げられた。
 幻想的な時間のフィナーレとも言えるその1発に、観客たちは歓声を上げるのも忘れ、息を飲む。
「場所は違うが、約束は果たせた」
「うん。来年も一緒にやりたいな♪」
 告げるダリルに対し、ルカルカは持参していたチョコバーや差し入れの食べ物を広げながら、答える。
「あぁ」
 ダリルは彼女の頭をくしゃりと優しく撫でた。

「お願いします! そこを通してください!」
 発射場の片付けが始まり、観客たちも大会を堪能したと帰り始める者と、屋台の通りへと再び向かう者に分かれる中、その間を逆走して発射場へと駆けて来る者が居た。
 紺谷 エクシア(こんたに・えくしあ)だ。
 まだ片付けられていない筒へと向かうと手にしていた花火玉を入れる。
「お、おい?」
 花火師が何をするんだと声を掛けている間にも導火線を用意して、彼はそれに火を付けた。
「俺の気持ち……伝わってくれぇー!!」
 叫ぶ。
 風邪を引き、共に大会へと来れなくなったパートナーが見てくれていると信じて、力の限り。
 その花火はとても大きな赤い星の形をしていた。彼女が好きな模様だ。
 帰り出していた観客たちは、打ち上げ忘れでもあったのだろうか、なんて暢気に夜空を見上げている。
「キミ、勝手に打ち上げたら危ないだろう!」
 打ち上がった花火に見とれたエクシアへと花火師は声を掛け、説教するべく、端の方へと引き摺っていった。
「この花火が上がって本当に良かった……。アイツ……ちゃんと見てくれたかな……?」
 引き摺られながらも、エクシアの顔には悔いはなく、満足げな笑みを浮かべていた。

(もっとみてたかったなぁ〜、来年もまたやってくれたらいいな)
 皆の様々な思いを見て、優鈴はそう思いながら、他の客に混ざって、会場を後にするのであった。