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【サルヴィン川花火大会】花火師募集!?

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【サルヴィン川花火大会】花火師募集!?

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 影野 陽太(かげの・ようた)が作るのは4つの花火玉だ。
 伝えたいメッセージが1発の花火に込めるには長すぎて。
 けれど、削るようなことは出来ないため、メッセージを適度な長さで分割してみたら、4つになったのだ。
 一度に4つ作るというのは難しいけれど、彼女のことを思えば、どうってことない。
 作っている途中、ふと陽太は彼女の姿を思い描いた。
 想い人に近々、今一度『自分と交際して欲しい、彼女を愛する想いは世界中の誰よりも負けない自信がある』――そう伝えようと決心している陽太にとって、この花火は前哨戦。
 メッセージの内容に、恥ずかしい気持ちはあるけれど、誰が誰に向けたメッセージなのかは、作った人が公表しない限り、分かるものではない。
 その点、安心しながら、陽太は花火を仕上げていった。
 レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)はパートナーのミア・マハ(みあ・まは)と共に工房を訪れていた。
 作る花火玉のテーマは『お互いのイメージ』だ。
 レキは、ミアのことをどう思い描いているのか、何故だか、いくつかの玉を作っている。
「肉体労働は苦手じゃ」
 一方のミアはそんな愚痴を漏らしながらも1つの花火玉を真面目に作っていた。
「打ち上げはお願いします。上がる順番って教えてもらえますか?」
 想い人の笑顔を模した花火を作る火村 加夜(ひむら・かや)は、花火師へと訊ねた。
「そうだね……お嬢ちゃんのは大きめだから、後半になるかな」
「そうですか」
 加夜の持つ、花火玉の元となる半球を見ながら、答える花火師に、彼女は頷く。
 必ず何番目になるかは皆の花火が揃ってみないからには分からないため、出来上がってから答えるとのことだった。
 周りの皆が作り終えるのを待ってから、改めて聞こうと、加夜は花火玉作りに専念した。
 ゼロ・シーアールシー(ぜろ・しーあーるしー)はメッセージを描く花火を作る。どのようなメッセージにするかを花火師に伝えたところ、1つの玉で長文は難しいと告げられ、そのメッセージを適度な長さに分けたところ4つの玉を作ることになった。
「これからみんなで大きくなるって想いね」
 天貴 彩羽(あまむち・あやは)が作るのは、三尺玉よりも大きな花火玉だ。
 花開くと共に、その花の色が順に変わっていくよう、7色の火薬玉を内側から順に並べながら、作っていく。
 完成した花火は、姉と共に花火大会で打ちあがるのを見守るつもりだ。
「花火ですか? ……難しそうに……見えるのですが……作れるのでしょうか?」
 パートナーたちと共に工房を訪れた神楽坂 紫翠(かぐらざか・しすい)は、既に作業を開始している皆を見回して、呟いた。
「花火? 火薬は、危険だから、火気厳禁と言う所か?」
 工房の入り口に掲げられた言葉を読んだシェイド・ヴェルダ(しぇいど・るだ)が納得したように頷く。
「難しいところは補助をするよ」
 花火師が近付いてきて、呟いた紫翠の問いに答えた。
「そうですか……それなら……自分にも……出来るでしょうか」
 こく、と頷いて、火薬玉を並べていく皿のような半球を受け取った紫翠は適当なところに腰を下ろして、作り始める。
「花火ですか、難しいんですけど、なんで、そんなに上手いのですか? 慣れてますか?」
 同様に、半球を受け取った橘 瑠架(たちばな・るか)は、早々に火薬玉を並べ始めた紫翠を見て、首を傾げた。
「慣れてなど……いませんよ。自分も作るのは……初めてですから」
「そうですか……」
 不器用な瑠架は、火薬玉を上手く並べることが出来ず、既に指先が真っ黒になってしまっている。
 対する紫翠は手先の器用さを生かして、既に半分の火薬玉を並べ終えていた。
「……」
 2人の進行具合の様子を交互に確認したシェイドは、手伝うでもなく、笑みを向けて、作業を見守る。