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第3章 天御柱学院 海洋生物学研究会「シャチのいる風景」



「マーシャルアーツにガンファイト、有事の戦闘に生かせる技を磨くコミュニティが続きましたが、続いては少し平和な活動を続けるコミュニティを紹介します。
 プログラムNO.3、天御柱学院 海洋生物学研究会」

 画面に、海の景色が広がった。
 海京の沖、波の間に間に黒い背ビレが見える。。
 ラグナル・ロズブローク(らぐなる・ろずぶろーく)のナレーションが入った。
「『キラーホエール』『海の殺し屋』との異名を持つシャチ。
 彼らは確かに肉食性ですが、人を襲う事はほとんどなく、逆に人懐っこくて知能が高い生き物である事は知っていますか?
 私達、天御柱学院 海洋生物研究会は、そんなシャチの生態を研究している部活です」

 映像が切り替わった。
 巨大な水槽の中で、活発に動き回る数頭のシャチの姿が映っていた。
 その中にアクアラングをつけた高峯 秋(たかみね・しゅう)が悠々と泳ぎながら、カメラに向けて手を振っている。
 イングリッド・ランフォード(いんぐりっど・らんふぉーど)のナレーションが入った。
「ご覧のように、群れの中に入っていっても襲われる事はありません」
 シャチの一頭が秋を鼻先で突っつく。その頭を撫でる秋。シャチは、秋のその手にいきなり噛みついたり、という事はしない。
 それに呼応して他のシャチも秋に身をすり寄せたり軽く体当たりをするようになってきた。次第にもみくちゃにされてるような状況に。水槽内に仕掛けられたマイクが、シャチの出すエコー波の数々を拾った。
 イングリッドのナレーションが入った。
「彼は、襲われているのではありません。じゃれつかれているのです。それだけシャチに信頼されていると言う事ですね」
 さすがに身の危険を感じた秋は、慌てて水面に上がり、プールサイドにへばりついた。待機していたエルノ・リンドホルム(えるの・りんどほるむ)がその手をつかまえ、陸上へと引き上げた。
 イングリッドのナレーション。
「もっとも、シャチにとってはスキンシップのつもりでも人間にとってはかなりの負荷になる事もありますね。
 人懐っこいのは飼育されて馴らされているからだろう、と思いましたか? いいえ、そんなことはありません。次の例を見てみましょう」

 映像が切り替わった。
 水辺にボートが浮かんでいる。その近くにはシャチの群れがあった。
 ボートにいるのはリュート・エルフォンス(りゅーと・えるふぉんす)エリス・フォーレル(えりす・ふぉーれる)ルシア・クリスタリア(るしあ・くりすたりあ)。マイクがエリスの声を拾う。「シャチって美味しいの?」
 イングリッドのナレーションがエリスの問いに答えた。
「シャチを食用にする例は少ないようです。味にクセがあったりしっかり加工しないとお腹を壊すなどの話の他、海の食物連鎖の頂点に立つ為に、現在では海洋汚染物質が体内に濃縮されているという話もあります。まぁ、口にしない方が無難でしょうね」
 アクアラングを着けたリュートとルシアが、ボートから海中に飛び込んだ。
 が、しばらくすると、リュートがルシアを抱えて海上に浮かび上がり、ボートに戻った。
 ボートに上がったルシアから、リュートとエリスが装備を引きはがす。ウェットスーツのみになったルシアは船上で足を押さえて動かなくなった。
 ナレーションが入った。
「泳ぐ前にはしっかりと準備運動をしましょう」

 映像切り替わった。
 今度は沖合に浮かぶボートが映った。少し離れた所には、シャチの群れがいた。
 今度のボートの上には狭霧 和眞(さぎり・かずま)ルーチェ・オブライエン(るーちぇ・おぶらいえん)の姿がある。
 和眞が双眼鏡でシャチノ群れを見ていた。横にいるルーチェは手持ち無沙汰だ。時折「次貸して下さい」と手を和眞に伸ばす。が、和眞は「後で後で」と手を振り、ルーチェを追い払う。
「う゛〜っ! 貸して下さい貸して下さい貸して下さい!」
「うわっ! 落ち着け、何するんだ!」
 ルーチェが躍りかかるようにして和眞の双眼鏡に飛びついた。
 ルーチェはかなり本気で双眼鏡をひったくろうとしており、ふたりはもみ合う形になった末、ついにバランスを崩してボートから転落――
 が、数秒もしないうちに、ふたりの体はすぐに浮かび上がってきた。
 すぐ傍に来ていた一体のシャチの背中に、両者の体が乗せられていた。
 リーリヤ・サヴォスチヤノフ(りーりや・さう゛ぉすちやのふ)のナレーションが入った。
「私たちはシャチの生態について観察・研究を行っています。」
 被さる文字「天御柱学院 海洋生物学研究会   海洋生物研究会 >検索」
 


「海洋生物学研究会のPV作成の企画制作は、エルフリーデ・ロンメル(えるふりーで・ろんめる)さんが担当されました。エルフリーデさん、ひとことお願いします」
 ごほん、と咳払いをひとつしてから、エルフリーデはマイクに向かって口を開いた。
「いつもの活動風景などを撮影した記録映像などからチョイスして編集しました。
 ご覧の通り、私達は主にシャチの研究をしております。パンダのようなカラーリングに愛らしい外見、知れば知るほど興味が湧く事間違いありません。
 見学は随時受け付けております。天御柱学院の皆様、是非一度遊びに来て下さい」


 エリィは、「へぇ〜」と感心した声を上げた。
「ウチの学校の部活って、イコンやドンパチ関係だけじゃなかったんだねー。これはビックリ」
 一方のエレナは、
「あのエリスって子の目の付け所は面白いですわね。お肉がダメなら、シャチの血って美味しいんでしょうか?」
と、全く違う感想を述べる。