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虹色のかたつむりを探せ

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虹色のかたつむりを探せ

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=第9章=   みんなと一緒




 雨の精霊とさつきが再会し、あわただしく「虹色のかたつむり探索」が終息した翌日、かのかたつむりを探索したメンバーは
 三度幼稚園へやってきていた。

 子供が苦手・人と接するのが苦手な生徒は、この機会にさまざまな年齢層の人間・種族と付き合えるかもしれないという
 各学校長の粋な計らいで、幼稚園来訪は本当の授業の一環となったのだ。

 この頃になると、園児たちと探索組のメンバーは会話にも遠慮がなくなり、むしろより一層仲良くなっているように見受けられた。


 氷室 カイは、ひとまずおっとりとした女の子と1対1で会話するところから始めている。
 口数は少ないが、相手の女の子から笑い声が聞こえる辺り、会話は弾んでいるようだ。

 
 別の教室では、マイト・レストレイドが親のような目でターリア・ローザカニナを見つめている光景がある。
 ターリアはやっと物陰からではなく、直に園児たちと話して遊べるようになっていた。
 ただ、話題のタネを持っていないので、話している内容自体は本当に他愛もないものだ。


 一方、鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)は、一昨日も昨日も、そして今日も園児たちの好奇心と言う名の濁流に飲まれていた。
 ブラックマントというアイテムの「ひらひら感」が、なぜか園児たちの心を鷲づかみにして一向に離さない模様だ。

 特に男の子の集合率が半端なく高い。
 しかしだからと言って女の子の集合率も低くない。
 つまり、あらゆる子供たちに大人気なのだ


「ちょっと、背中が重いんだけど、誰か乗っかってない?それと、マント引っ張ってないかな?ねえ?」


 園児たちに埋もれる主を涼しい目で見ながら、テーブルに座しているのはパートナーの鬼龍 白羽(きりゅう・しらは)と、
 貴仁の籠手型HCに接続された魔導書である医心方 房内(いしんぼう・ぼうない)だ。


「レポート作業の方が大事だっていうのに、貴仁ったら仕方ないなぁ、もう・・・・・・」
「うむ。さすが我が主様じゃ」
「さすが、じゃないよ、えろ本・・・・・・ボクは貴仁の威厳の話をしてるんだけどな」
「適材適所というやつじゃろ。主様は童たちと遊戯に興じる役目が適任なのじゃ」


 わりと酷い事をサラッと言いながら、房内はそれ以上関与はするまいと言うように貴仁から敢えて視線を外す。

 テーブルには他に、セレアナ・ミアキス神皇 魅華星も座って、手元の白い紙にかわるがわるペンを走らせていた。


 今回の「虹色のかたつむり探索」は、レポート提出をして初めて完了する。
 そのレポート執筆作業を、現在幼稚園で行っている最中なのだ。

 挿絵担当の綾原 さゆみ師王 アスカは色鉛筆を持ってパートナーと共に描写する絵について相談している。

 手前の席には、今回の探索組を発足させた秋野 向日葵さつきの姿もある。
 そしてさつきの隣には、雨の精霊がちんまりと正座している。


「すごい、レイン! 字が読めるんだ」
「う、ん・・・・・・すこしだけ」


 雨の精霊は、さつきから【アメウ・レイン】という名前をもらい、もうすでに園児たちと一緒に幼稚園で過ごす仲間の一人になっていた。
 向日葵が、幼稚園の先生や山葉涼司に話をつけ、幼稚園に通っていいという許しを得たのだ。

 昨日からさつきとレインはつかず離れず、寝る時も食事の時もずっと一緒にいる。
 よほど嬉しかったのか、さつきの表情には満面より更に上の「満開の笑顔」が咲いている。



 「虹色のかたつむり」という名前ではなくなってしまったけれど、さつきはいま、もっとも必要とした友と共存していた。









 *









 後日、山葉涼司の元に分厚いレポートの束が届けられた。
 厚みがあるのは文章のせいではなく、写真やイラストが内容の8割方を占めていたからだ。

 薄く微笑みながら、涼司はやっと辿り着いた最後のページをめくった。

 そこには、やたらとかしこまった文面でこう書いてあった。




 ―“虹色”のかたつむりは、この星に無数に存在すると思われます。

   つきましては、蒼空学園学長様には今後、“かたつむりの生息地(生けるものの思い出)”を保護して下さいますよう、

   秋野 向日葵とその一同、心よりお願い申し上げます―






 ―了―

担当マスターより

▼担当マスター

さくら まう

▼マスターコメント

 はじめましての方が殆どかと思いますが、ここではお久しぶりです、と挨拶させていただきます。
 日が空きましたが、2作目のリアクション発表となりました【さくら まう】と申します。

 6月、梅雨の時期に、リアルタイムなお話が書けたのではないかと思っています。
 自分で作成したキャラクターと皆様のキャラクターががきちんとお話の流れに溶け込んでいるか心配しながら物語を
 作成しましたが、皆様に物語を楽しんで頂けたのであれば、それが一番の幸せでございます。

 第1回のリアクションでご参加いただいた方々にも再び参加していただき、感謝の極みです。



 文章が読みやすいよう個人的見解で整頓してございますが、いたらない部分がある場合はご指摘いただければ幸いです。
 ご一読、まことにありがとうございます。