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リアクション
地球、某所。
「此度の作戦、うまくすれば原住民と結託したテロ屋を壊滅させられるかもしれんぞ。土地と資源の入手も進むだろう」
「だからと言って、あまり派手に動いては御神楽環菜(みかぐら・かんな)めの注意を引いて、手痛い損失を食いますぞ」
「フン、奴らとて我々の援助は欲しかろう。聞き分けよく御手伝いをする良い子には、おこづかいをくれてやるさ」
彼らの会話を聞きつけたのか、プラント内の分解された機晶姫の頭部がわめきだす。
「パラミタハ禁忌ノ地! 近寄ルナ近寄ルナ近……ギガガガガッ」
オペレータの操作で、機晶姫の残骸は異音をあげて静かになる。その機体には鏖殺寺院の紋章が刻まれていた。
ナラカ城へ向かう飛行艇
鏖殺寺院は『世界を破壊する闇』を呼び出そうとしていた。
全学校は危機に即し、当面の連携を見せる。
雲海に浮かぶナラカ城に各学校の連合軍で攻め入り、世界の破壊者の召還を阻止しようと計画が進められた。
そして各学校はナラカ城まで兵力を送る為、大商会の持ち船から個人商船まで、あらん限りの手を尽くして輸送用飛空艇を集めた。
学校連合の船団は、ナラカ城のある島を向けて雲海を進んでいく。
教導団員を乗せた飛行艇の一隻では、聖・レッドヘリング(ひじり・れっどへりんぐ)が技術科兵士ケイティ・プロトワンの髪をくしけずっていた。
髪を整えながら、聖は彼女に話しかける。
「ケイティ様はレゾネイターであるとおっしゃっていましたが……一般にレゾネイターと言えば、共鳴効果を利用して空気振動を増幅させたり低減させたりする部品でございますね。共鳴板とも言いますか。
ケイティ様の持つあの槍、遠目に観察させて頂きましたが……目には見えない空気振動を発しているように見受けました。
その振動を増幅する役割を果たすのが、レゾネイターといったところなのでございましょうか?」
それまで黙って髪をすかれていたケイティが、つぶやいた。
「聖……技術科みたいな事を言う」
「技術科の将校は、そのように話していたのですか?」
ケイティはうなずいた。無表情な顔からは、彼女が何を考えているか分からない。
だが「レゾネイター」が部品の名前でもある事が、聖には引っかかる。
聖は話題を変えることにした。
「ケイティ様の御髪はとても美しい薄茶ですね。『ママ』も同じ色なのでございますか?」
ふたたびケイティはうなずいた。だが、わずかにほほ笑んだように見える。
と、ケイティは何かを探すように、きょろきょろと周囲を見回す。
「何か御探しですか?」
「……?」
その頃、ケイティが探す猫耳キャンティ・シャノワール(きゃんてぃ・しゃのわーる)は、空京の第一師団仮設屯営にいた。
シャンバラ教導団は空京の治安を維持する為、第一師団を空京に派遣したのだ。
キャンティは食堂のスイーツメニューを前に、うなっていた。
「杏仁豆腐も胡麻団子もマンゴープリンも美味しいですけど、いま食べたいのは、生クリームたっぷりのスイーツですわ〜
教導団は中華ばかりで、うんざりですぅ!」
聖はケイティにかまってばかりの上、中華スイーツのみの食堂に、キャンティはご機嫌斜めだ。
「あらぁ?」
彼女は印象的な怖い顔を見つけた。第一師団憲兵科大尉灰 玄豺(フゥイ・シュエンチャイ)が、定食を食べている。
「待遇の改善を断固要求しますぅ。キャンティのラブリーさの前に跪くといいですわ」
「何だ?」
大尉は突然言われて、怪訝そうな顔をする。
キャンティはかまわず、仮設屯営の食堂にあるスイーツが中華ばかりだと訴えた。灰大尉は呆れた様子で答える。
「そのような要望は補給科に出したまえ。もっともナラカ城攻略で、今はそれどこではなさそうだ」
「では、その作戦が成功したら、キャンティとケイティに空京で有名なお店のケーキをご馳走して欲しいんですの」
大尉は額を押さえた。
「だから、そのような要望は補給科に出したまえ」
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