空京

校長室

終焉の絆 第二回

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終焉の絆 第二回
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【1】エルキナ 1

 空京内。光り帯びた一団と戦闘狂が対峙していた。
『そこをどけ、下賎な輩』
「高貴な頭で少し考えりゃ、どかねぇってわかんねぇか?
 はっ、高尚な脳みそにはお似合いの思考だぜ」
 エルキナの無慈悲ないい様に、軽口で返す業魔。
 女騎士達に囲まれている業魔は、まったく動じず、堂々と立っていた。
『これは警告よ。貴方程度、殺すのは造作もない』
「なら四の五の言わずやってみろよォ!!」
 業魔が動く。
 エルキナへと向うが、四方にいた女騎士にそれを阻まれる。
「ちっ、金魚のフンが邪魔なんだっての」
 避けることもせず攻撃を受ける業魔。
 当然、攻撃を受け止められた女騎士の動きが止まる。
 業魔はその女騎士をぶっきらぼうに掴み、別の女騎士へ投げつけた。
「……うじゃうじゃうぜぇ、皆殺すぞ」
『我が騎士はその程度の脅しには屈しないわ。
 騎士が止め、こちらでトドメを刺す。最初から貴様に勝ち目はない』
「ああそうかい、だけどなぁ……戦いってのは、勝つ負けるで決めるもんじゃねぇぜ?」 
『戯言を。……囲み足止め、その隙に終わらせる』
 エルキナの合図に従い女騎士が八方に散る。
 だが、業魔はニヤりと笑った。
「お前に敵対するのは他にもいるんだよ、バカが」
「エルキナ! そこで止まれ!」
「クイーンとの合流は阻止する。それが私達の役割ですからね」
 業魔を通り越して、三船 敬一(みふね・けいいち)白河 淋(しらかわ・りん)が先陣を切る。
 それだけではない。
 自身の部下と、契約を交わした傭兵団を指揮して、女騎士達へとぶつける。
 たったこれだけで、エルキナと業魔の戦力はかなり縮まる。
「総員、対空戦用意! カバー重視で臨機応変に動け!」
 敬一の気迫溢れる指示に鼓舞され、ツーマンセルになって女騎士を迎え撃つ兵士たち。
 これに対し、女騎士は空中から急襲からの離脱、ヒットアンドウェイで攻撃を仕掛けてくる。
「一方的なのは関心しないですよ。重力に飲まれなさい」
 悠々と空から攻撃をする女騎士たちを、淋のグラビティコントロールが捕え、
 無理やり地上へと引きずり落とす。
 突然の重力操作に女騎士はどうすることもできない。
 それに狙いを付けた兵士二人が女騎士へと向かい、敵を行動不能にする。
 が、女騎士の一人を餌として動いていたもう一人の女騎士が、躊躇なく急襲。
 自らの命を顧みずがむしゃらに応戦する兵士二人だが、
 まったく的を絞ることが出来ず、攻撃の危機に瀕する。
「馬鹿者、死んだ英雄なんていらねぇぞ! 兵士として生き抜け!」
 見かねた敬一が女騎士へと自動小銃を乱射する。
 高濃度の弾幕に舌打ちをした女騎士はそのまま下降、
 地面に足を付けて銃弾を弾きながら後退する。
 しかし、その背後にはゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)が、手をわきわきさせて待ち構えていた。
「がははっ、光るモヒカンの俺様が美乳にしてさしあげるぜぇ!」
 光を帯びる女騎士の胸元へ躊躇なく手を這わせるゲブー。

 ガキンッ!!

 鋼鉄のごとく硬かった。
「こ、こんなに硬い胸があるのかっ……。
 だがおっぱい番町である俺様が、おっぱいから逃げるなんてありえねぇ!」
 ゲブーは決して諦めない。
 相手がおっぱいであるならば、揉めないことなどない。
 おっぱい番町である自分がおっぱいから逃げることなど言語道断。
 おっぱいに生きて、おっぱいに死ぬ。
 それがゲブーの生き方、
「うおわっ!! あぶねぇ!?」
 本当に殺されそうになっていた。
「スゲーぜ、アニキ! 光を帯びてようが硬かろうが関係ねぇ!
 いよっ! アニキのモヒカンは今、輝いているぜ!」
 バーバーモヒカン シャンバラ大荒野店(ばーばーもひかん・しゃんばらだいこうやてん)が声援を送る。
 その声援に応えようとゲブーも奮戦するが、やはり硬いものは硬く、苦戦を強いられる。
 ちなみに、ゲブーが触っているのは女騎士が装備している軽鎧だ。
 光の加減で見辛いがばっちり装備しているのだった。

「皆、この暁の騎士シャインヴェイダーも加勢するぞ!」
 苦戦しているゲブーと奮戦する敬一の元に、
 暁の騎士シャインヴェイダーこと蔵部 食人(くらべ・はみと)が参戦する。
 既に魔装侵攻 シャインヴェイダー(まそうしんこう・しゃいんう゛ぇいだー)は装備済みである。
 更に手に持つのは、ユグドラシルの蔦。意味ありげな、巨大な蔦である。
「さあ暁の名の下に正義を振るわん! とうっ!」
 ユグドラシルの蔦が女騎士の一人に絡みつく。
 装備していた軽鎧は本来装着する位置からズレ、すごく妖艶である。
(女騎士は触手っぽいものに弱い、(と仲間のヴァルキリーから聞いた)んだよ!)
 シャインヴェイダーの声を聞きながらも食人は困惑していた。
「でもこれ、すっごいいけないことをしてる気が……」
(そんなことないって! ほら、拘束した後もウネウネ動かすの! 手を休めない!)
「な、なんだかなぁ……」
 とは言いつつも手を休めることはない食人。
 ……それまで無表情だった女騎士の頬が、心なしか赤くなっている様に見えた。
「よし、ここらで毒虫たちをっ」
 食人が毒虫を放つと、蔦を伝って毒虫が女騎士へと辿り着き、彼女を猛毒状態にした。
(ボクが言うのもなんだけど、君の方が割と発想がエグくない?)
「いや、ほら、一応戦いだから、なっ?」
 確かに、ヒーローの割にはひどい戦法だったように思える。
 しかし相手を無力化できたのだから何も問題はないのである。

「エルキナの移動は阻止できている、といったところでしょうか」
「そのようね。理想的、かしら」
 エルキナと業魔、契約者たちの戦闘を見ていたマーゼン・クロッシュナー(まーぜん・くろっしゅなー)三田 アム(みた・あむ)
 冷静にこの場の分析を済ませ、エルキナが現状動けないことを確信する。
「戦っている者には悪いが、兵は温存させてもらいましょう。
 いざという時の備えはあったほうがよいでしょうから」
 マーゼンは部下達に息を殺すように言って聞かせる。
 一方のアムは周囲を見渡し、何かを探していた。
「クイーンの位置は把握できましたか」
「現在、他の契約者たちがクイーンを発見したとのこと。
 エルキナをここで足止めできれば合流は阻止出来るわ」
 アムの言葉に頷いたマーゼンは、エルキナの方へと視線をやった。
 絶対にクイーンとエルキナを合流させはしない。
 そのためにマーゼンの瞳は常にエルキナの動向を窺っていく。
 何があっても直に足止めが再開できるように、と。