First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
Next Last
リアクション
□□□□□
橘カオル(たちばな・かおる)は、ひたすらチャンスを待っていた。
情報により、とある劇場あたりが怪しいということだけは判明していた。
出入りが激しく、カメラ撮影が許可されている場所もあるため、カメラを持った一般人の姿も多い。
その中でも、望遠カメラと思われるカメラを持つ人物に目星をつけた。カオルその人物が劇場から出てくるまで数時間、張り込み続けていたのだ。
「マーリア、行くぞ」
「うん」
パートナーのマリーア・プフィルズィヒ(まりーあ・ぷふぃるずぃひ)と共に、盗撮犯と思わしき男の後を負う。
男は大通りに出て、飲食店に入ろうとする。
「捕まえようよ?」
「いや、ここじゃ人目につきすぎる」
しかし、突如男が持っていたカメラがぽんと路地の方に弾き跳んだ。
男は驚きながら、カメラをダイビングキャッチしようとする。
だが更にカメラは遠くへと飛ぶ。
やはり、男を怪しいと睨んでいた林田樹(はやしだ・いつき)が、物陰に隠れつつ狙撃して飛ばしたのだ。
盗撮犯と思われる男は、落ちたカメラに駆け寄る。その肩に樹のゴム弾が命中し、男が倒れてカメラを下敷きにしてしまう。
「ま、こんなところか」
弾は的にほぼ命中した。しいて言えば、最後の1発は心臓の位置を狙ったのだが、逸れて肩に当ってしまったが。
カオルとマーリアが路地に駆け込む姿を確認し、樹はその場を立ち去り、再び劇場の方に向かう。
今日は獲物が多そうだ……今回は相手が小物な為、殺傷が目的ではないが。
路地に突入し、カオルとマーリアは男を組み伏せた。
「百合園を盗撮していたことは分かっている! 大人しくカメラを渡し、金輪際盗撮はしないと誓えば見逃してやる。どうする?」
「し、しません。ひ、人に頼まれただけで、僕の意思じゃないんだ、うん」
「言い訳無用、カメラを渡せ!」
男は涙を浮かべながら、壊れたカメラをカオルに渡した。
「よし、行っていいぞ」
カオルとマーリアが解放した途端、男は大通りの方へと駆けていった。
「……くそっ、カメラは壊れてるが、フィルムは無事か? 無事だろうな!」
言いながら、フィルムを超真剣に巻くカオルの姿を見て、マーリアは全てを悟った。
この男、フィルムを自分の物にするつもりだわ、と。
「くそっ、上手く巻けないぜ、俺のコレクショ……」
ゴスッ
マーリアの背後からの攻撃が、クリティカルヒット!
「きゅぅぅぅぅ……」
カオルは奇妙な声を上げて、ぱたりと倒れた。
「さてと。目を覚まさないうちに、学院に届けなきゃ」
マーリアは失神しながらもカメラを抱え込んで死守するカオルの腕を、無情にこじ開けてカメラを引きずり出すのだった。
「ここの定食は最高だな!」
太めの男が2人前の定食をぺろりと平らげて腹をさすっている。
「そろそ行くっスか。我々のアジトに」
同じテーブルで昼食を食べていた飛鳥井コトワ(あすかい・ことわ)が伝票を持って立ち上がる。
「そうっスな!」
太めの男は上機嫌でコトワの肩に腕を回した。
同士として2人はすっかり意気投合していた。
「あっ」
支払いを済ませて店を出た途端、コトワは財布に小銭を入れようとして誤って道路にばら撒いてしまう。
「すみません、こっちは自分で拾うんで兄貴はそっちの道に転がってったヤツをお願いするっス!」
「了解、任せとけ」
太めの男が人気のない道に入っていったのを確認すると、コトワは素早く小銭を集めて男の後を追い突如背後から蹴り飛ばす。男は顔から地面に衝突する。
続けてコトワは男の股間を蹴り上げる!
「うぐあはあーーーーっ」
奇声を上げて倒れた男の前に微笑みながら回りこみ、コトワは昏倒した男の服に手をかけた。
「食事中に散々話しをして、証拠はバッチリいただいたっス! あとは……ロープでえっちに縛ってぇ……あはっ。お婿さんに行けなくしてあげるっス」
ロープで素敵に縛り上げた後、コトワが鞄の中から取り出したのは――ス ク 水 だ っ た !
一方、ベアはまだ逃げていた。
女の子達とぷーる遊び☆を堪能していた最中にどたばたと逃げ出した為、着替えを持っていない。つまり、水着のままで街中を走り回っている。
だがただ逃げているだけではない。自らの潔白を示すために、プールで目星をつけておいた犯人が潜んでいる場所に向かって駆けている!
その場所までもう少し。三脚を仕舞う男の姿が目に入ったその時。
「あのう……」
クライスがひょっこり裏路地から姿を現した。
「それ、スイカですよね……?」
ベアは急ブレーキをかけて、立ち止まる。
そう、乳が無いことを隠すため、偽乳としてベアが用意したのは小玉スイカだった!
「何でわかった!? しかも何故このタイミングで!?」
「いえ、赤い液体が滴り落ちてましたので……」
あはは〜とクライスは照れ笑いを浮かべる。
「そいつも仲間か! もう逃げられないぞ!」
「観念しなさい!」
芳樹が前へ、アメリアがベアの後に下降してくる。
「俺は盗撮犯じゃない。犯人はソイツだけだーーーー!」
ベアは三脚を抱え逃げようとしている男に体当たりを食らわす!
「ぎゃあああああああーーーーっ!」
男は絶叫した。
……理由は言うまでも無い!
そして、周囲に赤い実と汁が散乱する。
「俺の胸がああああああああ!!」
ベアも絶叫した。胸を抱えガクリと倒れこむ。
「お、お、お母さんに食べ物を粗末にしてはいけませんって、小さい頃に習ったでしょ!」
アメリアはなんだか訳のわからない状況に、盗撮犯ではなくベアに箒を向けて説教を始めた。
「せ、生徒会に突き出すべきはどっちだ」
芳樹は混乱し、真面目に悩んでいた。勿論両方だろう!
「……僕、こんなところで何してるんだろう……」
クライスは何しに来たのかわからなくなった。
結局スイカの指摘しかしていないし。うん。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
Next Last