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第七章 別れの時間

 参加は自由で、行きの時間は皆バラバラなのだが、帰りの列車だけは別だった。
 門限までには帰らなければならない。
 百合園貸切で、列車が数台やって来ていた。
 皆それに乗って自分のいるべき場所へと戻って行く。
 ざわめくホームでのしばしの別れの時──
「また行こうな、如月」
 風次郎は微笑みながら言った。
「今日は……案内、してくれて……ありがとう、ですぅ……風次郎お兄ちゃん…」
 昔の呼び方で、日奈々ははにかみながら礼を言う。
 風次郎は照れながら、日奈々の頭をくしゃくしゃと撫でた。
 そんな光景を見ながら、ティアが嫌味を含んだ口調でエリスに言う。
「今日は楽しかったですねぇ。──それにしても、相手が捕まらなかったらエリスがだらしない証拠ですよ」
「……」
 エリスが泣きそうな顔をした。
「まぁ……嫉妬しなくてすんだのは幸いですが……」
「え?」
「帰りましょ」
「ティア、ティア! 今なんて言わはりました?」
「この列車逃したら、門限に間に合いませんよ!」
 駆け出すティアを慌てて追いかける。
「あ、待っておくんなまっし〜」

「──そんな変装して何やってるんですか?」
 セラは思い切り驚いた顔をした。
 絶対に気づかれていないと思ったのに。
「フィル……」
「途中から分かってましたよ。最後まで黙っていようかとも思いましたが、帰りくらいは……もっと早く出てきて下さいよ」
「ごめん……」
「……来てくれて嬉しかったです」
 セラとフィルはお互い微笑みあって、列車に乗り込んだ。

「占い、儲かりましたか?」
 野々に声をかけられて、オリヴィアは飲んでいたジュースを噴出した。
「わ〜ん。野々ちゃんにそんなキャラで見られてるよ〜」
 円が泣き出す。
「占いは無償でやってたし〜お金には困ってないよ」
「え? そうなんですか?」
「うんうん。あ! たこ焼き美味しかったよ〜」
「それは良かったです」
「次もあのたこ焼き屋、あるといいなぁ」
「そうですね」
 三人は祭りの余韻に浸った。

「案内ありがとうございました。おかげですごく楽しかったです! ……あとお土産選び、長く待たせててごめんなさい。お詫びと言ったら何ですけど、これ!」
 歩にクマの人形を渡されて、セオボルトは困りながらも微笑んだ。
「自分に、似合うかな?」
「可愛いですよ、とっても」
「そ、そうか……」
「これ見たら今日のこと思い出してもらえたら嬉しいなぁ……なんて。また遊びましょうね」
 歩はにっこりと笑った。
「真希ちゃんも、ユズちゃんも、ありがとう」
「こっちこそありがとう──あ、これ」
 真希はお土産屋でこっそり買っていた物を皆に渡した。
「今日の思い出にね」
「あ、私もあるよ」
 歩も土産を交換する。
「ありがとう、大切にするね」
「ありがとう」
「嬉しい〜」
 感謝の言葉を言いながら、4人は祭りの終わりを惜しんだ。

「今日はめちゃくちゃ楽しかったね。誰にも会わなかったのは、すごく残念だけど……」
「ミーナちゃんは、でも、アリスと一緒に遊べてすっごく嬉しかったよ」
 臆面もなく恥ずかしい台詞を吐くミーナに、アリスは苦笑する。
「次も一緒に来れるかな?」
「ううん」
「え?」
「次はお友達た〜くさん連れて、皆で来よう!」
「そうだね」
 アリスは大きく頷いた。

 既に座席に座っている葵とエレンは、遊び疲れたのか肩を寄せ合って、うとうとしていた。
 しっかりと手は握られている。
「観覧車、凄かったね……」
「そうですね」
「何もかもがちっちゃく見えて、この世界には私とエレンしかいないような錯覚になるの」
「本当にそうなれば良かったのに」
「え?」
「あ、でもお医者さんとかお店屋さんは必要ですかね。病気になったら私じゃ治せませんし食べ物も……」
 リアル問題を提示して、一瞬にしてムードを壊すエレンに、葵は笑った。

「俺はフェイトや有栖やミルフィと出会えて本当に嬉しかった。百合園の二人も俺とフェイトの大事な仲間だ。困った時はお互いが協力し合って助けよう」
 松平 岩造が、真剣な目を皆に向ける。
「今日は本当に楽しかった。こんなに素敵な思い出が出来て……本当に……嬉しかったです」
 涙ぐみながらフェイトが言う。
「あぁ〜泣かないでください。こちらこそ、ありがとう。すっごく楽しかったです」
 有栖が満面の笑みを浮かべた。
「そうですわ、泣いちゃいけませんわ。また、お会いしましょうね。名残惜しいですが……」
「じゃあ」
 最後は皆、笑顔で手を振った。

「ジュリエット、今日は助かった」
 青は頭を下げた。
 女装もせずにすんだし、何より話の合う女性と知り合えたことはこの上もなくラッキーだった。
「わたくしも、とても楽しかったですわ」
(爆弾は見つけられなかったけど、青を脳内『愛人兼手駒リスト』載せてあげなきゃ)
 ジュリエットの天使の笑みの裏には、悪魔の考えが渦巻いていた。
「きょ、今日は……ありがとうございました。黒」
「いや、礼を言われる程のことをしたわけでもないと……」
 ジュスティーヌは首を思い切り振った。
「私にとってはとってもとっても嬉しいことだったのです!」
「そ、そうですか?」
 吊り橋効果の余波が、未だ継続中。
 ジュスティーヌの黒を見る目が、恋する少女の瞳?に変っていた。

「遊園地に連れてってもらったことがなかったから、今日は凄い楽しかったですぅ。付き合ってくれてありがとう」
 メイベルはセシリアに向かって頭を下げた。
「な、お礼なんて言わないでください。私の方が、今日はメイベルと一緒にいられて、とても嬉しかったから……」
「ふふ」
「ふふ」
「また来ましょうね」
「はい、必ず」
「その時は、今日作ってくれたサンドウィッチ、また食べたいです」
「かしこまりました、お嬢様♪」
 その言葉に、二人は噴出して笑った。

「今日はありがとう、一緒に遊べてすっごい楽しかったです」
 弥生は少し照れくさそうに言った。
 ヴァーナーはいきなりハグをして親愛を情を示した。
「また遊んで下さいねっ」
 満面の笑顔でヴァーナーは言った。
 せっかくの教導団からのご招待。恋の相手でも探すつもりでいたのだが──何にせよ、友達が出来たのは喜ばしいことだ。
「ぜひ、また遊びましょう!」
 弥生も心の底から、そう思った。

 はるなは関羽の顔を思い浮かべては、ため息をついていた。
「どうしたの?」
 アンレフィンが声をかける。
「うん? 関羽様に会えたな〜と思って」
 夢見心地に答える。
「今、アンの背中に乗って飛び回りたい気分!」
「ここからじゃ遠いから無理だけど……帰ってからなら良いよ。寮を抜け出して……」
「あぁ〜…今日はやめとく。アンも私も、疲れてると思うし」
「そうだね」
「明日の夜、お願い」
 はるなに可愛くねだられ。
「了解」
 二つ返事のアンレフィンだった。


──走り去って行く列車の音が耳に届いた。
 楽しかった祭りも終わり、たこやきの器材を片付けながら、亮司は一人、小さく呟いた。

「……次は必ず、誰かと来よう」

 呟きは、夜の闇の中に、溶けて消えていった……



担当マスターより

▼担当マスター

雪野

▼マスターコメント

今回こちらのシナリオを担当致しました雪野です。
関帝誕に参加下さいまして、ありがとうございました。

爆弾騒ぎで”ブツ”を見つけられた方、おめでとうございます。
ご褒美があれで、オイオイ……とツッコミを入れられる方がほとんどかと思いますが(笑)。

騒ぎの要因を見事完璧に推理されていた方がいらっしゃいました。拍手拍手です。