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リアクション
第1章 じゃたの特訓と精霊ズ強化大作戦のこと
前回、ザンスカールの森に除草剤を撒こうとして、アーデルハイトにぶっ飛ばされ、お星様になった立川 るる(たちかわ・るる)は、ジャタの森の上空でキラキラ輝いていた。
実際には、空飛ぶ箒で飛んでいるだけだが、るるは自分が大好きなお星様のつもりである。
「後編から参加した人たちは、実はるるの光に導かれて現れたんだよ。ホントだよ?」
そう言って、るるは、森を守る人たちに星のパワーを送ろうとする。
「キラッ☆」
効果音を自分で言いつつ、るるは森の様子を見守っていた。
そんな中、ジャタの森の精じゃたに向かって、ラーフィン・エリッド(らーふぃん・えりっど)が、いきなり殴りかかっていた。
「じゃたちゃんのバカー!」
マジックワンドで撲殺する勢いで殴打するラーフィンだが、それだけ本気ということである。
「!?」
ぶっ飛ばされて呆然としているじゃただったが、ラーフィンはなおも泣きながら殴り続ける。
「ちょっとご飯を食べる場所をおかしくされたくらいでどうしたのさ! 所詮この世は弱肉強食! なら、じゃたちゃんもご飯に困らないように、強くなろうよ!?」
「オマエ、何を言っているじゃた……?」
「じゃたちゃんに足りないのは、ハングリー精神と必殺にまで高めた技だと思うんだよね。そういうわけで特訓だよ! 強くなるまで断食! そして磨く技は、ラリアットに対抗したドロップキックだ!」
スポ根ものや、青春ドラマのような台詞で、必死で説得するラーフィンの後ろで、パートナーで巨大な皇帝ペンギンが燕尾服の上着とシルクハットを身につけ、ステッキをもっている姿のゆる族ドン・カイザー(どん・かいざー)が渋く鳴いてうなずく。
「……くぇー……」
(……ラーフィンの手段はどうかと思うが……お嬢ちゃんが強くなるべきだというのは賛成だな。今後もざんすかのようなやつが出ないとも限らない。そういったときに自分の身を護れるようでないとな)
そう考えたドンは、自分がドロップキックの師匠として、じゃたの練習台を買って出ようとしていた。
(特訓が終わった頃には、じゃたちゃんは獲物に餓えた一匹の狼になっているはず……! そうなれば、でっかいだけのヤツとか、既にかませ犬としての強さを見せ終えたざんすか程度、モノでもないわー)
ラーフィンにはそんな思惑もあったのだが、とりあえず飢えた獣のような闘争心を与えるため、じゃたは断食させられた上、ドンから特訓を受けることになった。
「るるの星」も、上空から見守っている。
「ううっ、腹減ったじゃた……。痛いじゃた……」
「どうした、お嬢ちゃんの力はその程度か? 俺を本物の敵だと思ってかかってくるんだ!」
渋い声でドンの厳しい指導が飛ぶ。
それをハラハラしながら見守るのは、ドンと同じくラーフィンのパートナーで魔女のヴィオレッテ・クァドラム(う゛ぃおれって・くぁどらむ)であった。
(……じゃたさん。ご飯が食べられない辛さはよくわかるよ……。我も放浪時代は苦労したし……。そ、そうだ、どこか別の場所でご飯を探しに行けばいいと思うよ!)
「じゃたっ……!」
ドンにドロップキックを必死で繰り出すも、弾き返されたじゃたが、ボロボロになって地面に転がる。
ついに見ていられなくなって、ヴィオレッテが駆け寄る。
「もう、いいじゃない。こんな痛いことや辛い事をしないで、別の場所でご飯を探そう?」
(ラーフィンたちには悪いけど、我にはもう見てられないよ……)
本人にそのつもりはなくとも、天然で楽な道を示して誘惑するヴィオレッテに、ラーフィンが大声を出す。
「何言ってるんだよ! ジャタの森の食物連鎖の頂点に立つ存在として、じゃたちゃんには頑張ってもらわないと!」
「ゴメンなさい、ゴメンなさい!」
普段と異なるラーフィンの剣幕に、驚いて謝りまくるヴィオレッテだったが、じゃたの瞳には怪しい光が宿っていた。
「別の……ごはんじゃた」
つぶやくなり、じゃたは、姿勢を低くして走り、肉食獣のようにドンに飛びかかった。
「……くぇー……!?」
じゃたは、思いっきりドンの腕にかぶりついていた。
「鳥肉じゃた……がぶがぶがぶ」
「うわー、じゃたちゃんー!? 本当に獲物に飢えた獣に!?」
「た、食べちゃダメだよ、じゃたさん!」
「……く、くぇー……!!」
ラーフィンとヴィオレッテが必死でドンからじゃたを引きはがそうと試み、ドンも必死で振り払おうとするが、空腹と身体へのダメージで狂乱状態に陥ったじゃたには通じない。
「落ち着くんだ、フロイライン・じゃた!」
そこに、エリオット・グライアス(えりおっと・ぐらいあす)が現れ、呼びかける。
エリオットのパートナーの剣の花嫁クローディア・アンダーソン(くろーでぃあ・あんだーそん)が、じゃたを落ち着かせようと優しく話しかけながらヒールをかける。
「こわがらないで。私はキミの味方よ」
ヒールには精神異常を治す効果はないが、身体の傷が癒されたことで、じゃたはひとまず平静を取り戻した。
「あれ……。ワタシ、なんでオマエ食べてるじゃた?」
「……くぇー……」
ドンの渋い鳴き声からは、「こっちが聞きたいよ」という思いがにじみ出ていた。
エリオットが、じゃたに向き直り、真面目に話しかける。
「事態収束のため、聞きたいことがある。まず、魔大樹に瘴気を吸収する以外の行動は可能なのか。仮にできるとして、特定の対象物、例えばあの機関銃の名前をした大男に瘴気を集中させることができるか。これは、瘴気の集め過ぎでパンクするのを狙うためだ」
「難しいことはよくわからないけど、魔大樹はワタシの身体の一部じゃた。魔大樹は周りに瘴気があればどんどん吸い込んでしまうのじゃた。魔大樹の力で別の何かに瘴気を送るということはできないじゃた」
「では、魔大樹に瘴気を全て吸収させるとして、時間をかけて吸収させるしかないか、即効性のある何らかの手段があるか、教えてくれ」
「魔大樹はグレートマシンガンのせいで、普段と比べ物にならないすごい勢いで瘴気を吸収しているのじゃた。もし、これ以上のスピードで吸収したら、魔大樹が暴走して、大変なことになるのじゃた」
相変わらず、自分の身体の一部などといいつつも、じゃたの口調は淡々としている。
「いままでは、瘴気が森になんとなく発生していたのをごはんとして魔大樹で吸収していたのじゃた。でも、変な儀式のせいで、大量発生して消化しきれないのじゃた」
「なるほど、では、エリザベート校長とアーデルハイト女史に現状報告と騒動解決の協力を要請しなければならないな」
「了解だよ、エリオットくん! ジャタ族も攻め込んでくるかもしれないからね。あんなのどこかの世紀末救世主でも勝てるかどうか……」
エリオットのパートナーの機晶姫メリエル・ウェインレイド(めりえる・うぇいんれいど)が頷き、クローディアから借りた空飛ぶ箒でイルミンスールに向かおうとする。
「それにしても、さっきの『こわがらないで』は、攻撃色に目の色が変わっていたじゃたちゃんを止める効果のある言葉だったね!」
「何の話をしているの?」
メリエルの言葉に、クローディアがきょとんとする。
メリエルは、どこから仕入れてくるのか「パクリネタ発言」が非常に多く、それが「ある意味危険」と判断され封印されていたのだが、そのことを本人は知らない。
「いいから早く行ってくれ……」
「はーい」
頭痛をこらえつつ言うエリオットに、メリエルは元気よく返事すると、イルミンスールに向かって飛んでいった。
そこに、茂みからざんすかが飛び出し、じゃたに襲い掛かってきた。
「ぶっ殺してやるざんす! 邪悪な魔大樹の元凶!」
そこに、菅野 葉月(すがの・はづき)とパートナーの魔女ミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)が割って入る。
「じゃた自身は助けを求めに来たのに、ざんすか、君は一方的に攻撃を仕掛けようとしています。これではいけません。僕はじゃたを守ります!」
「ワタシも葉月に賛成! いきなり攻撃するとか過激すぎるでしょ。おとなしくしなさい!」
葉月とミーナが、じゃたの前に立ちふさがり、ざんすかに宣言する。
「ごちゃごちゃうるさいざんす! まずはユーからぶっ飛ばすざんす!」
ざんすかが、葉月に思いっきりラリアットをかます。
「ううっ!?」
「葉月!? ちょっと、葉月のきれいな顔に傷がついたらどうしてくれるのよ! ざんすか、本気で許さないよ!!」
ミーナがソニックブレードでざんすかに攻撃するが、まともに喰らってぶっとばされるも、ざんすかはすぐ立ち上がり攻撃を仕掛ける。
「だから、うるさいと言っているざんす!」
「は、葉月いーっ!?」
ミーナは、ざんすかの返り討ちにあい、葉月と一緒にぶっ飛ばされた。
葉月やミーナほどの手足れであっても、ざんすかのラリアットは脅威なのだ。
「ざんすか、ケンカよくないと思うじゃた」
じゃたは、守ってくれた葉月とミーナに近づき、ざんすかに言う。
淡々とした物言いはいつもどおりだが、自分をかばってくれた者を傷つけるざんすかに、なんとなく抗議しているような感じがする。
「待つじゃた! 敵の敵は味方だぜじゃた! 皆ココは手を取り合って世界を守るため立ち上がろうじゃた!」
「ベアの言うとおりじゃた! ここは手を組んで、皆で仲良く悪を倒して平和を守ろうじゃた」
ベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)とパートナーの剣の花嫁マナ・ファクトリ(まな・ふぁくとり)が現れ、ざんすかとじゃたを説得しようとする。
ベアとマナは、前回に引き続き、語尾を「〜じゃた」にしていた。
「ざんすか! 今は世界の危機なんだぜじゃた! 森の精同士で小競り合いをしている場合じゃないじゃた! このままではグレートマシンガンに世界を滅ぼされてしまうじゃた! 俺達であいつの野望を阻止して世界を救うじゃた! それこそが、ザンスカールの森の精であるおまえの務めだと思わないかじゃた! ザンスカールとジャタの森の危機に今こそ立ち上がろうじゃた!」
「ベア……言ってることは賛成だけど、なんとなくおおげさな気がするのはなぜ、じゃた?」
熱く語るベアに、マナが突っ込むが、ベアは気にしないでざんすかの手をがしっと握る。
「ざんすか! 共に戦おうじゃた!」
「オマエら、いいこと言うじゃた。ワタシも一緒に戦おうと思うじゃた」
「それにしても、私、このままだと誰がしゃべってるかわかりにくいと思うんだけど……じゃた」
じゃたが、ベアの言葉にうなずき、マナがぼそっとつぶやく。
「ユーたち、『じゃた』『じゃた』って、さっきから言ってるざんすが……」
ざんすかが、拳を握りしめて、わなわな震える。
「なんだかムカつくざんす! ミーを説得したいならせめてミーに口調を合わせるざんす!!」
「そ、そうだったかじゃたー!!」
ベアは、ざんすかのラリアットで、思いっきりぶっ飛ばされ、空に飛んでいった。
「きゃー、ベアー、じゃた!!」
マナが慌てて追いかけつつも、語尾を「〜じゃた」にすることは忘れない。
そこへ、シルエット・ミンコフスキー(しるえっと・みんこふすきー)が木陰からクールに登場する。
「ざんすか君。キミのラリアットは素晴らしかった……でもそれじゃあのグレートマシンガンは倒せない……」
木に寄りかかって、ちっ、ちっ、と人差し指をふるシルエットだが、前回、ざんすかに抱きついてあんなことやこんなことをしようとしたせいでぶっ飛ばされたため、包帯ぐるぐる状態である。
「何を言うざんすか!?」
怒りをあらわにするざんすかだが、シルエットは続ける。
「……前回のキミのラリアットじゃ、ボクは2kmしか吹っ飛ばなかった……。グレートマシンガンはボクの身長の20倍。体重で多分8000倍さ」
そして、シルエットはざんすかをビシッと指差す。
「そうさ! キミのラリアットじゃ、あいつは25センチしか動かない!」
「な!? そ、そうだったのざんすか!?」
大嘘だが、ざんすかは本気にしてのけぞる。
「友情だよ……ざんすか君。一人で2km飛ばす力が出るなら、二人なら2km×2kmで4000km飛ばせるはずだ……! それなら、あのマシンガンも500mは吹っ飛ばせるはずさ……」
さらに大嘘理論を続けるシルエットに、ざんすかは息を飲む。
「たしかにそのとおりざんす! じゃあ、じゃたと力を合わせれば、グレートマシンガンを倒すこともできるということざんすね?」
「やってみるじゃた」
ざんすかの言葉に、じゃたもうなずく。
「友情のダブルラリアットを……狙うんだ……」
そう言うと、シルエットはその場にがくっと倒れた。
シルエットのパートナーのドラゴニュートエルゴ・ペンローズ(えるご・ぺんろーず)が、あわてて駆け寄る。
「ワー、シルエットしっかりー」
「ありがとうエルゴ。困ったときの友が真の友……って中国のことわざでもゆーじょー」
エルゴは、シルエットの駄洒落がつまらなかったので、思いっきり頭を踏む。
「ああっ」
シルエットが喘ぎ声を上げる。
そんな中、四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)が現れ、ざんすかとじゃたに宣言する。
「兎にも角にも、あの図体で妙な踊りをされては、いい加減目障りよね。というわけで、対抗するなら同じ土俵で勝負よ! あなたたちをアイドルユニットとしてスカウトするわ! 可愛いは正義!」
唯乃のパートナーの魔女エラノール・シュレイク(えらのーる・しゅれいく)も、一緒にプロデュースをするつもりである。
「私は裏方として、演出の魔法を担当します」
「じゃあ、誰か、歌を用意してくれる人いない?」
唯乃が周囲に無茶振りする。
「それにしてもじゃたは可愛いわね。お持ち帰りしたーい」
「顔がにやけてるですよ、唯乃……」
唯乃に、エラノールがツッコミを入れる。
「ん? エル、やきもち焼いてるの?」
「そ、そんなことないのですよっ」
とはいえ、エラノールは寂しがり屋なので、ちょっと嫉妬してるのかもしれなかった。
そこに、空飛ぶ箒に乗ったウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)が現れ、ざんすかにこっそり耳打ちして説得しようとする。
「ざんすかたーん、大事なのは、物事の優先順位だぜ! まずぶっとばすなら見た目ウザいオッサンからだろ!? なぁ、俺、じゃたぶっとばすの協力すっから、とりあえずオッサンぶちのめしにいこーぜ? ざんすかたんがじゃたとオッサン両方に敵対したままだと、オッサンの一人勝ち構図が崩れないだろ? それで、頭数減らした後、疲れたじゃたに襲い掛かればOKだと思うぜ!」
「む、ユーはなかなか頭いいざんすね! その作戦乗ったざんす!」
ウィルネストの漁夫の利作戦に、ざんすかはニヤリと笑ってうなずいてみせた。
「よし、城定の弔い合戦じゃー! オッサンぶちのめすのに俺も参加する!」
ウィルネストがそう言って気合を入れる。
しかし、前回、グレートマシンガンに一対一の決闘を挑んで敗れた城定 英希は、もちろん死んでいるわけではない。気絶しているので、今回の戦いには参戦できなかったのである。
それに対して、七尾 蒼也(ななお・そうや)は、正攻法でざんすかとじゃたの共闘を提案する。
「一人より二人。力を合わせれば強敵にも勝てるはずだ!」
ざんすかにたいして、蒼也が言う。
「やはりとどめはざんすかラリアットで決まりだろ」
「当然ざんす!」
ざんすかはうなずく。
「運動してお腹が空けば瘴気をもっと吸収できるだろ? ひとつ踊ってみるか?」
蒼也は、用意してきた百合園女学院制服をじゃたに渡す。
「たしかに、腹減ってたらなんでもできる気がするじゃた……」
「ん? なんだか少し怖い顔になってる気がするが……なんかあったのか?」
じゃたの様子に、蒼也が首をかしげる。断食による暴走を思い出させてしまったらしい。
そこへ、さらに、真口 悠希(まぐち・ゆき)が現れ、ざんすかとじゃたに百合園女学院校長桜井 静香(さくらい・しずか)の素晴らしさを力説する。
「静香さまのナイト」を自任する悠希は、ざんすかとじゃたに静香の写真を見せる。
「どうですか? この静香さまの、瘴気も一発で吹き飛ばしそうな、清楚で可憐なお姿は……こんな女性を目指してみたいと思いませんか? ちょっとお年頃の割にお胸がぺったんこ過ぎる気がしないでもないですが……胸なんて飾りです、偉い人にはそれが分からないんです!」
「こいつが百合園のボスざんすか? ケンカとか弱そうなのに、トップに立ってるってことは、何かすごい力を持っていそうざんす!」
「そうなんです! 静香さまはすごいんです! 静香さまの衣装のレプリカを持ってきました! ぜひ、これを着てみてください!」
「これを着れば、力が手に入るかもしれないざんす! じゃあ、ミーはこれを着るざんす!」
悠希とざんすかの会話は、微妙に噛み合っていなかったが、ざんすかは静香のコスプレをすることになった。
「ああ、かわいいなあ。静香さまが山の手言葉で話してるみたいだ」
悠希はざんすかを満面の笑みで見つめながらつぶやく。
「ま、マジで?」
ウィルネストはそんな幸せそうな悠希に対して、本格的にツッコミを入れる勇気が出せない。
他の面々も同様であった。
「ワタシはこれを着るじゃた」
じゃたは、蒼也の持ってきた百合園女学院制服を着る。
「百合園コスプレのアイドルユニットね。なかなかいいじゃないの。後は歌だけど……」
「それは、俺がパラミタ少年少女合唱団の、森に関係する童謡CDを持ってきた。ついでに一緒にスーパーで売っていた年配向けの叙情歌もあるぞ」
唯乃の言葉に、蒼也が用意してきたCDを見せる。
こうして、グレートマシンガンの踊り狂うステージに、エラノールの火術と氷術を組み合わせたスモッグが焚かれ、静香コスプレのざんすかと百合園制服のじゃたが乱入した。
「イルミンの妖精! 森の歌姫? ざんすかたんと、成長率急上昇! 超魔大樹シンデレラじゃたたんの登場だァー!」
ウィルネストがかけ声をあげる。
「な、なんだ、貴様ら、その格好は!?」
さすがにあっけにとられるグレートマシンガンだったが、さらに、悠希が高らかに宣言する。
「こうなったら……静香さまのナイトのボクが、静香さまの代わりに悪を成敗します!」
言うなり、悠希はグレートマシンガンに向かって、ドン・キホーテのように突撃した。
「邪魔するなあああ!!」
グレートマシンガンのキックで、悠希は一撃でぶっ飛ばされた。
「静香さま、今日もボクは静香さまの為に頑張りましたっ……!」
たとえ勝てなくても、ナイトの誇りを守った悠希は、ヴァイシャリー方面に飛んでいってお星様になった。
なぜか、その方向の空には静香の笑顔が浮かんだような気がする。
それを見ていたのは、エリオットのパートナーの英霊アロンソ・キハーナ(あろんそ・きはーな)だった。
「我輩はエリオットの指示に従い、魔大樹、およびグレートマシンガンなる愚か者の監視をしていたが……『どうせ別の誰かが天誅を加えるだろうから、自分達はその下準備をしていればいい』とエリオットに言われたからと言って、ここで騎士道に従い、愚か者どもに天誅を加えずして、なんとするか!? あのような年端も行かぬお嬢さんが騎士の名乗りを上げて挑んだというのに!!」
「本物のドン・キホーテ」であるアロンソとしては、ここで黙って見ているわけにはいかなかった。
「ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ! 騎士道に則り、いざ参る!」
アロンソは、ランスを構え、愛馬ロシナンテ代わりの自転車にまたがり、グレートマシンガンに突撃した。
「くどい!!」
グレートマシンガンのキックで、アロンソもまたお星様になる。
その隙に、ざんすかとじゃたのステージが始まった。
蒼也がCDをかけると、森に関係する童謡と年配向けの叙情歌が流れ、ジャタ族の純粋な気持ちが呼び起こされそうになる。
「おお、やはり森を大切にしなければ……」
「よし、効いているな! このままうまく行けばいいんだが……」
蒼也は、踊るざんすかとじゃたの後ろで小さくガッツポーズする。
そこへ、ウィルネストもステージに上がる。
「ざんすかーるのもりのー♪ かわいいようせいがぁー♪ 俺は大好きぃー♪」
ウィルネストは、見た目は童顔アイドルのようだったが、体育1のため、踊りは呪いのダンスになり、さらに歌が苦手なので、大惨事となった。
「きゃー、私は何も舞台効果の魔法を使ったりしていないのに、黒い煙が出てますっ!」
「ええっ、エル! これって、瘴気じゃないの!? 舞台効果でなんとかして!」
舞台裏にいたエラノールと唯乃が、大騒ぎする。
エラノールが、あわてて雷術と火術で花火を作り、音をかき消そうとするが、かえってステージのウィルネストが目立ってしまった。
「や、やめろー!! なまじパラミタ少年少女合唱団の歌と混ざり合って、頭が割れそうだー!」
蒼也が悲鳴を上げる。
「ミーたちのステージが台無しざんす!!」
「瘴気、出過ぎると吸収できないじゃた……」
ざんすかとじゃたからもクレームが出て、ウィルネストは総ツッコミを受ける。
「え? 瘴気レベルの公害なのは、オッサンの見た目なんじゃないの? う、うわー! ジャタ族! 物を投げるなー!!」
見物していたジャタ族から座布団や食べ物の残りを投げつけられ、ウィルネストは強制退場した。
一方そのころ、メリエルは、空飛ぶ箒でイルミンスールに急いでいたのだが。
「星に願いを! 空にお星様が増えたから、落ちてきてみたよ!」
るるが「流星」のつもりで空飛ぶ箒で突っ込んできて、思いっきり激突し、二人とも墜落していった。
「ちょっと! なんてことするの!!」
怒るメリエルに、るるは謎の言葉でごまかす。
「きみの小宇宙は燃えているか」
「え? なんとなく気が合いそう……って、ぎゃあああああ!?」
「キラッ☆」
メリエルとるるは仲良く地面に激突した。
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