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リアクション
第2章 現地で始まる調査と交渉
2‐01 今こそ立て、奈良のゆる族!
「もしもし……しまった、パンダはしゃべれない。なんてこと、やってる余裕はないかしら」
戦いに際して、独自の調査、独自の行動に出ている者達もいる。たとえば、このパンダ……
「はいもしもし。こちら奈良の観光協会……パンダ? この大変なときに、いたずらはやめてくれる?」
「違うよ? あたいは教導団の熊猫 福(くまねこ・はっぴー)。パンダじゃなくって、パンダのゆる族なんだ。
この大変なときだからこそ、協力し合わないと、と思ってね。っていうわけで、そちらのゆる族の方をお願いできるかな??」
「ちょ、ちょっと待て……ぼそぼそ」
職員A「おい、なんか言ってるぞこいつ」
職員B「ゆる族? ほら、十年くらい前に流行って、そのあとほとんどが早々お払い箱になったあれだよ、あれ。うちの県にも色々いたが……」
職員C「だが、教導団のことは、県警から昨日連絡があったばかりだ。ゆる族と言っても、相手がそこのゆる族なら、無下には出来んぞ」
福「まだかな、まだかなーー?? なんか、ぼそぼそ聞こえてるぞ」
職員A「ちょ、もうちょっと待ってくれるか」
福「ん。早くしてネ」
職員A「どうする? 引き下がりそうにないぞ……」
職員B「いいだろ。お払い箱になったゆる族ぜんぶ、引っ張り出してきてやれ」
職員C「我々奈良観光協会としても、一応教導団に対し協力したことを示せるしな」
福「ねえねえ、決まったかしら??」
職員A「ああ。わかった。奈良のゆる族みんな、そっちに回してやんよ」
福「うわーい♪ じゃあ、永谷にかわるね?」
「教導団の、大岡 永谷(おおおか・とと)だ。
陰陽術で人々の生活が乱されるべきじゃない。
ゆる族の方々の協力があれば、情報ネットワークが築けて、それぞれの事象に対処しやすくなると考える。
協力してくれないか?
……あれ、もう電話切れてるな?」
ともあれ、パートナーの福がかつてお役所(永谷の地元・福井)のマスコットをやっていた縁を頼り、奈良県の行政系ゆる族の力総結集を目指そう、という永谷の目論見は達成されることになる。
かつて奈良で活躍したゆる族が一斉に放たれた。誰も皆、ぼろぼろの着ぐるみを纏って……
「ウウウ! 当事アンナニ持テ囃スダケ持テ囃シテ……(道満じゃないけど)十年間ノ積年ノ恨ミ、晴ラシテヤル!!
皆、イクゾ!! 奈良県デ思ウ存分、暴レテヤレ!!!」
「オオゥ!!!!」
ザッザッザッザッ
かくして。着ぐるみ戦争、日本においても勃発。
奈良の地下に眠りしぼろぼろのゆる族たちが今、再び、地上を闊歩する!!
「許サン……許サンゾ……人間メ!!」
2‐02 修験者さんに会いにゆこう!
「どーまんさんの兵が霊体ってことを考えると……
うん。決まりだわ。
霊体に攻撃できそうで……
それに強い方々。それに、相手の兵力(数)にも対抗できるとなれば……
騎凛センセ。待っててね」
こうしてプリモ・リボルテック(ぷりも・りぼるてっく)の向かった先は……
「うむ。これは奈良の危機。由緒ある奈良の町を、破壊させるわけにはいかぬ。
わかった。我々吉野の修験者は、プリモ殿に、教導団に、力をお貸し致す」
吉野の山に住まう修験者一同。
続々と修験者仲間が集い、石舞台を目指し、進軍してゆくのであった。
「わ、わっえらいことになっちゃった……?!」
しかしプリモはそんなことより……
「ああ、いい眺めよね♪」
教導団の生徒として立派に任務もこなし、且つ修学旅行を満喫できる場所として、吉野を選んだのだもの。
吉野の景色を目一杯堪能するのだった。
2‐03 ×××くんに会いにゆこう!
さて、奈良に埋葬されていたあらゆるゆる族が、奈良の町を蹂躙し始めた頃。
暗闇の中で独り何をか思う。それはかつての奈良のヒーローとして君臨したあのゆる族。
今、彼を訪ねんと、意気揚々道中にあるのは……
「藤原京から平城京へ遷都した時……跋扈する魑魅魍魎を成敗し、奈良に平和をもたらす者として誕生したのが【六角童子】の異名を持つ伝説のゆる族×××くんである!
……って聞いてんのか!?」
これから会いに行く伝説のゆる族について大神に熱く語り、興奮してる神代 正義(かみしろ・まさよし)こと、パラミタ刑事シャンバランその人である。
「え? えぇ、聞いてます聞いてます。要するにただのマスコットゆる族ですよね?」
どうでもいいといった様子で、彼についていく大神 愛(おおかみ・あい)。
「きっとこのゆる族もヒーローだ! そうに違いない!」
目指すは、彼の住居と呼ばれる平城京外京一条五坊十二坪。だが、着いてみると……
「ええ?? すでに×××くんはここにはいない?!」
「は、はい……残念ながら。彼はすでに奈良の山奥にあって、隠遁生活を営んでおり……何でも悟りを開いただとか。
今はもう彼の話題をする者もなく、久しぶりにその名を聞きました。ところでそう言うあなたは……?」
「フェイスオン! パラミタ刑事シャンバラン!
教導団所属のヒーローだ。奈良の伝説のゆる族×××くんに、ヒーローとしての極意を教わりに来た」
「……やっぱり、行くんですか」
「おう」
「……どうしても、行くんですよね」
「お、おう?」
せっかくの修学旅行なのに……といった様子で、さっさと歩き出す大神愛。
「ああ、ちょっと待って! ……それで、×××くんの現在のお住まいは?」
「ふむ。そこまでの意気込みであるならお教えしよう。しかし、道のりは長く険しく困難を伴う道のりであるぞ。本当によいのか?」
「ぴく」(愛)
「おう! 無論だ。このシャンバラン、伝説のヒーローに会うためならば、どんな困難とて切り抜けてみせよう!」
「えー、ではまず。この奈良の西の山これより数十キロ程の距離があるが、ここを目指す。それから、そのあたりに五十程の洞穴があるが、その中の一つが隠居へ続く抜け道になっておる。じゃが洞穴は真っ暗闇を更に数十キロ程行く迷路であり、中には数多妖怪の類が蔓延っており、それを抜けると今度は血の池があって……」
「お〜〜い、ラブリーアイちゃーん。どこ行くんだーー??」
2‐04 地道に文献を調べよう!
――奈良県某図書館。
「蘆屋道満好きですし復讐も全否定はしませんけど、……」
そう言いながら、図書館で文献にあたっているのは、水渡 雫(みなと・しずく)。
「周りに迷惑かけるやり方が好みじゃないですから」
次々、本や資料を読んでいく、水渡。
水渡の調べによると……
(ふむふむ、奈良盆地は昔は湖で、大和川の亀ヶ瀬からしか水が抜けないから、亀ヶ瀬がせき止められると奈良盆地は再び湖になるんですかー……なるほど。
そして伝説。蛇さんはナマズさんと戦った蛇さんなんでしょうか。
興味深いですー……)
「だけど、関連しそうな文献が、何冊か貸出中になっていますね……。
と、思ったら、さっき借りられていた本がもう戻っている。あ、あちらにいらっしゃるのは確か、同じ教導団の……」
図書館の隅の机に、文献が山積みになっている。そこにいるのは、
「……」
黙々と文献を読み漁る、クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)だった。
同じ机には、そのパートナーである、麻生 優子(あそう・ゆうこ)、桐島 麗子(きりしま・れいこ)の姿もあり、それぞれに片っ端から文献に目を通している。
クリストバル ヴァルナ(くりすとばる・う゛ぁるな)が新しく数冊を抱えてやって来て、やはり同じく、黙々とそれに読みふけるのであった。
「こ、声がかけ難い……ある種、異様な光景を見ました。私も、負けていられません!」
水渡も、たたたっと本棚から数冊抜き取ると、クレーメックらの隣の机に向かうや、怒涛の如く、ページをめくり始めた。
麻生、「ど、どうされたのでしょう……あのお嬢さん、私たちと同じ教導団の女性みたいですが」
桐島、「こ、声がかけ難い……鬼気迫るものを感じますね」
……
ここでシーンは一旦、第1章末に戻ることになる。
「では、クレーメックさんたちは、まずは文献調査のため、図書館へ向かうのですね」
「はい。そこで騎凛師団長には、そのためにも、修学旅行中の秘術科生徒への応援要請を依頼したく。おそらく、文献を調べるだけではなく、その後には儀式も必要になるでしょう」
「秘術科、ですか……うーん。セオボルトさんも、フリッツさんも、もう行っちゃいましたね……」
「騎凛ちゃん!! カナリーちゃんがいるんだから!!」
「あ。カナリーさん。マリーさんが憲兵科だからつい……。そうでしたね、カナリーさんは秘術科。
それで、クレーメックさんは、秘術科の方に、どういった応援を?」
「だけどカナリーちゃんは騎凛ちゃんと一緒にいくよ」
ずっこけるのはマリー。
「カ、カナリー。わてがMCでありますぞ!」
ということで、文献調査はクレーメックらだけで怒涛の如く執り行うとなり、その後の儀式のために、秘術科カナリーがギャザリングへクスで魔法のスープを用意する、という形で協力することになった。
「さあ、マリーも騎凛ちゃんも、たんとスープを飲んで、精力を増して、楽しい修学旅行の夜に備えようね♪
クレーメックさんも、ヴァルナさん麗子さん優子さんとの夜に備えてね♪」
「いや、カナリー殿。スープは道満との戦いに……」
クレーメックは至極まじめに応えた。
「夜……どきどき」
「え、ヴァ、ヴァルナ……?」
「え? どうされました。ジーベックさん。何でもありませんわ……!」
夜の憲兵科マリー&真夜中の秘術科カナリーの目がきらりと光った。
「本当の戦いは、道満との戦いの後にあるんだよ♪ だって、修学旅行だもん」
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