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学生たちの休日

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学生たちの休日

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    ☆    ☆    ☆
 
「ふははははは、これでリーズは素っ裸や」
 ゲームコントローラーを持った七枷 陣(ななかせ・じん)は、画面を見ながら高笑いをあげた。今日は休日。レポートも片づけたので、パートナーたちと寮の個室でゲーム三昧だ。
 ゲーム画面の中では、小競り合いに勝った七枷陣のキャラが、のびて倒れているリーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)のキャラから装備を身ぐるみ剥がしていた。まあ、そうは言っても、アイテムリストから一つずつレアアイテムをゲットしていっているだけなのではあるが。
「嫌あ! なんて外道なの、陣くんって。そんなことする人とは思わなかったんだもん!」
 コントローラーを取り落としたリーズ・ディライドが、頭をかかえて叫んだ。
「ふっ、勝負の世界はシビアでっせ。情けはかけない!」
「かけてよ。少しは装備残して」
「はははは、だが断る!」
 そう言うと、七枷陣はルーレットを回して先に進んでいった。
「ほい、次は真奈のターン」
「はい。だいたいルールは把握しました」
 途中参加してきた小尾田 真奈(おびた・まな)が、コントローラーのボタンを慣れた指さばきで押していく。
 ルーレットが回り、小尾田真奈のキャラが画面上のコマを進んでいった。途中で、一回休み扱いでプリケツをさらして倒れているリーズ・ディライドのキャラを踏み越えて進んでいく。
「真奈さん、ひどーい」
「仕方ありません。ゲームですから」
 淡々と小尾田真奈が答える。いつもは優しいのに、ルールがはっきりとしているゲームでは、そのルールの範囲内でかなり厳しい。
「御主人様。キャラが重なりました。戦闘のようです。では御主人様、お覚悟を」
 画面上でキャラ同士が重なったのを見て、小尾田真奈が言った。
「いや、ちょっと待たんかい、オレは戦闘直後で不利じゃないか。ここは、一〇〇Gやるから、戦闘回避ということで……」
 正しい判断として、七枷陣は小尾田真奈との戦いを避けようとした。機晶姫である小尾田真奈は、こういうゲームにはめっぽう強い。
「申し訳ありませんが、勝負ですので。一〇〇Gは魅力的ですが……だが、断ります」
「げげ」
 先ほどの自分の台詞をまんま返されて、七枷陣は絶句した。
「モードは格闘戦モードで」
「せめて、五択クイズモードとかじゃんけんモードにして……」
「格闘モードで」
 七枷陣の言葉を無視して、小尾田真奈が戦闘方法を選択した。
「やっつけちゃえ、真奈さーん」
 ついさっき七枷陣にぼこぼこにされたリーズ・ディライドが、小尾田真奈を応援する。
『レディー・ゴー!!』
 戦闘開……。
『ユー・アー・ウイン』
「しゅ、瞬殺やとぉ……。ああ、オレのシミター+5がぁぁぁ」
 一撃で倒された七枷陣が、あっさりと激レアアイテムを奪われて絶句した。
「真奈さん強ーい! いいぞーっ、そのままやっちゃえー♪」
「まだだ、まだライフは一つ残っとる!」
 七枷陣は、気合いを入れてコントローラーを握り直した。
 そのときだった。
「すまん、邪魔するぜ!」
 いきなり玄関ドアを乱暴に開けて、トライブ・ロックスターが部屋の中に入ってきた。
「なんだなんだ!?」
「すまんが追われているのじゃ」
 驚く七枷陣たちに、ベルナデット・アンティーククールがすまなそうに言った。
「じゃ、後は頼むぜ」
 不吉な言葉を言い残して、トライブ・ロックスターとベルナデット・アンティーククールの二人が窓を開けて外へと逃げ出していった。七枷陣が唖然としていると、彼らの後を追って、千石朱鷺が部屋に飛び込んできた。
「逃がしません」
「うおお、剣なんか持って、危ないじゃないか」
 文句を言う七枷陣を無視して、千石朱鷺は部屋の中を猛スピードで駆け抜けていった。ひらりと窓を飛び越えて外へと走り去っていく。
 その勢いに、部屋の中の物が巻き込まれて散乱した。
「ああ、ゲームがぁ!」
 舞い飛んだゲーム機の電源コードが抜け、ブツリと画面がブラックアウトする。
「これからオレの華麗なる逆転劇が始まるところやったのにぃ」
 そう叫ぶ七枷陣に、それはないないと、リーズ・ディライドと小尾田真奈が、見合わせた顔の前で片手を振った。