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第三章 ひとつになるもの

 湾内北側の「魚撃ゲーム」会場は、息も詰まる程に静まりかえっていた。その中心は目を閉じてスナイパーライフルを構えている影野 陽太(かげの・ようた)であった。
 気配を消す、ではなく、自然と一体となる。発は魚人が水中から飛び出す音、水の音がしたなら。
 それでも一つ目の音に気付いた時、陽太は意識的に発を遅らせた。目を開けた瞬間の意識と現状との差を確認する為である。魚人が飛び上がった高さは、音からの予測よりも高かった事もあったが、その魚人が再び落ち入る直前にゴム弾を放った。
 弾は見事に魚人の頭の的を射抜いたが、陽太は唇を噛んでいた。
「次だ」
 二つ目の音。これにも直ぐには動かない。
「まだだ…… まだ」
 魚人が頂点に達し、落ちるを始めた。
 狙うは一瞬、待つしかない。
 再び海に入る直前に、もう一つの水の音がしたのを捕えた。
 陽太は迷いなく引き金を引いた。
 放たれたゴム弾は、落ち入る魚人の的に当たり兆ね上がると、上昇している魚人の的を空中で待ち構えていた。魚人の的から弾に当たる形となりて、見事に成功した。
「ふぅ」
 一息をついた陽太に、ウィザードのレイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)が駆け寄った。
「おめでとうございます。お見事です」
「いえ、際どかったですが、どうにか。お次、頑張ってください」
「えぇ、ありがとうございます」
「レイナー! 一発で成功させたらキスしてやるぜー!」
「なっ、ちょっと、静麻! 公衆の面前で何を言い出すんですか?!」
 パートナーである閃崎 静麻(せんざき・しずま)の声援に、レイナは顔を赤らめた。
「一発での成功を期待してるようですよ」
「全く! 一発目、わざと外そうかしら」
 そう言ってスタンバイをしたレイナだったが、スタートの合図と共に火術を唱え、手にしたロープに炎を纏わせると、鞭のように操った。
「おおっ」
「レイナお姉ちゃんの炎、綺麗―!」
「おぉ、あれが炎の蛇というやつか」
 パートナー達が各々に感嘆の声を上げている内に、レイナは3つの的を射抜いていた。
 腕は一度しか振り出していない、つまり一撃である。しかし手首の返しにより、踊る鞭が魚人たちの的を次々に射ていったのだ。
「なるほど、確かに、とんち、のようですね」
 振り返り、舌を出して笑んだレイナから陽太は、温かな笑みを得ていた。


「住みなれた〜 我が家に〜 潮の香りを添えて〜 リフォーム〜」
「待て待て! 玲奈、その先は待て!」
「えー、どうして?」
「色々とマズイんだ! 続けると」
「もう! ジャック、さっきから文句ばっかり! 私達は、いっぱいヒールを唱えて頑張ってるのに! ねぇ、アクア」
「何をぅ! オレたちだって力仕事して、頑張ってるってんだ! なぁ、ショウ」
 如月 玲奈(きさらぎ・れいな)ジャック・フォース(じゃっく・ふぉーす)の2人それぞれに、ふられて、葉月 アクア(はづき・あくあ)葉月 ショウ(はづき・しょう)は顔を見合わせて苦笑いをした。
「あ、いや、その」
「えぇ、どちらも頑張られていると思いますよ」
「あっ、アクアに気を遣わせちゃったじゃない! アクアは『ディテクトエビル』も同時に使ってくれてるのに!」
「何っ、そいつは凄いな、御見それしたぜ」
「え、いや、私は、そんな」
「よぉし、オレももっと頑張るぜぇ!」
 ジャックが全身に力を入れ直した時、チーム「真実の探索者」五十嵐 理沙(いがらし・りさ)がトレイを片手に歩み寄ってきた。
「皆さん、そろそろ休憩はいかがです? コーヒーも出来てますよ♪」
 この声に真っ先に反応して飛びついたのはジャックであった。頑張るって言ったのはどこの誰だ! というツッコミが玲奈から入ったが、理沙の気配りは場に憩いを与えていた。
「お茶やコーヒーは私が、お菓子はセレスが用意してるので、ドンドンどうぞ♪」
 理沙のパートナーであるセレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)がクッキーやパウンドケーキの乗ったトレイを差し出そうとした時、歩み来る御凪 真人(みなぎ・まこと)セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)の姿に気が付いた。
「まぁ、ずいぶんと寒そうですわね」
「えぇ、先程までずっと氷術ばかり使ってましたので、体が冷えてしまいまして」
「もう! 結局言われた通りにやるんだから、真人は」
「??? えっ、俺、どこかミスしてた?」
「そうじゃなくて! …… もういいわ」
 体を震わせている2人に、セレスティアが熱い緑茶と紅茶を差し出した。器を包む手、それから口の中から喉の奥まで。2人はゆっくりと温かさを体に沁みさせていった。
「そういえば、お二人は龍が空けた穴の補強をなさってたのですよね。うちのザカコとヘルにお会いしませんでしたか?」
「えぇ、会いました。あの穴に階段を付けて地上と洞窟とを結ぶ、と言ってましたね」
「氷術を使えるって言ってたから、置いてきちゃったんだけど…… マズかった?」
「あ、いえ。実は、わたくし、作業の進行具合のチェックも任されていますので。ハーモニーホールの建設が驚くほど順調のようですので、彼らはどうか、気になりましたの」
 セレスティアに驚くほど順調だと言わしめた建設チームの面々は、それぞれの役割をしっかりと果たしていた。
「おぅおぅ、どうした刀真! へばってきたか?」
「誰がですか! 君こそ、今日は随分と素直に動くんですね」
 力仕事組のラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)樹月 刀真(きづき・とうま)は自分の体程の岩塊を担ぎ走りながらに会話をしていた。
「いや、なんつーか…… まぁ、一部でも壊しちまったしな、直すのが筋ってもんだって思ってな」
「あれだけ派手に壊しておいて、一部と言いますか」
「うるせぇな、お前だってスパスパスパスパ岩を斬ってただろうが!」
「そうですよ、そうですとも、ですから! こうして修復作業に勤しんでいるんでしょう」
 言っている間にも2人は次々に岩を運んでいる。その岩を、ラルクのパートナーであるアイン・ディスガイス(あいん・でぃすがいす)が設計図通りに配置し、刀真のパートナーである漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が『ヒール』を唱えて岩と岩とを接合してゆく。
「ラルクの奴…… 随分と楽しそうだな」
「刀真… 笑ってる」
 ホール建設の指揮を取るルカルカ・ルー(るかるか・るー)は、4人の働きに満足気な笑みを浮かべてから、桐生 円(きりゅう・まどか)たちの元へと向かった。
「相変わらず、無茶苦茶だね」
ルカルカは彼女たちに、運ばれた岩の形を整える役割を与えていたのだが、これまでも見事に、頼んだ通りの形に岩を加工してくれているのだが。
「ほらほらほらぁ〜! あ〜っはっはっ〜!!」
 セイバーである桐生 円(きりゅう・まどか)は機関銃にて。
「うふぅ〜、あはっ、あでぅ〜お岩さんたちぃ〜」
 吸血鬼であるオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)は氷術と光術を用いて。
「アハハハハアハハハハハハーあたーっく! あたーっく!」
 英霊であるミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)も機関銃にて。
 何たる声の掛け辛さ。ふむふむ、ルカルカは視線を置いただけに留めておいた。