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【十二の星の華】剣の花嫁・抹殺計画!(第1回/全3回)

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【十二の星の華】剣の花嫁・抹殺計画!(第1回/全3回)

リアクション

「確かに同行者を頼んではいたけど…… これは多すぎるねぇ」
 イルミンスール魔法学校のベルバトス・ノーム教諭は、そう言いながら、パートナーであるアリシア・ルードに笑みかけた。生徒たちの部屋が並ぶ廊下の一角は、生徒たちで溢れかえっていた。教諭の回診に協力してくれる生徒を募集した所、20名近い生徒が名乗りをあげたのだ。
「大きな声は出したくないねぇ………… 君、拡声器をやってくれるかい?」
「えっ? 俺? 拡声器?」
「静かにしたまえ」
「えっ、あの、でも……」
「口を塞ぎたまえ」
「あ、いやだから、俺は何をしたら……」
「隼人、『静かにしたまえ』を大声で伝えれば良いのでは?」
「あっ、そういう事か、なるほど」
 蒼空学園のソルジャーである風祭 隼人(かざまつり・はやと)は大きく息を吸ってから『静かにしたまえ』と叫んだ。
「あ、いや、俺が言ったわけじゃなくて、その、ノーム先生が言えって」
「怯む事はないのですよ、隼人」
 一度に集まった生徒たちの視線に向けて、隼人のパートナーで英霊のホウ統 士元(ほうとう・しげん)
が援声を発した。
「教諭の言葉を隼人が伝えますので、心して聞いてください」
「スピーカー代わりに使うとは、面白いでござるな」
 しゃがみ込んで隠れていた椿 薫(つばき・かおる)は、士元の言葉に思わず飛びついて前に出てしまった。その声も大きかった為に十分に目立ってしまい、薫の顔には分かりやすく焦りが現れてしまっていた。
 薫を見つめた教諭は、一つ笑んでから手招きをして薫を呼んだ。
「その制服、蒼空学園だね。なぜイルミンスールに?」
「おっ、おうっ、なぜそのような事を聞くでござるぅうっ」
「疾しい事かぃ?」
「疾しい事などぉぅっ…… 無いでござるよぉぉ、何を言うでござるか、あっはぁはぁ」
 言えぬ、言えぬのだ、部活中とはいえ下見の最中だったとは、のぞき…… おっと、言えぬでござるでござるよ。
「君、「ヒール」「リカバリ」「SPリチャージ」は使えるかぃ?」
「あ、いや、使えぬでござる」
 言葉の後に、教諭は薫を四つん這いにさせて、その背に乗り立った。
「って! アンタは何も言わぬでござろう!!」
「さぁ、続けて」
「あ、はい。え〜、「ヒール」「リカバリ」「SPリチャージ」を使える者は発症者の部屋を回り、発症した生徒の回復と情報収集をすること。スキルを使えぬ者は、【モルモット】候補として私の手足として働いてもらう…… って【モルモット】??」
 隼人の、いやノーム教諭の【モルモット】発言に、場がザワついた。
「教諭は相変わらずですね」
「うん、あんな事ばっかり言ってると、いつか嫌われちゃうよね」
「もう嫌われているかも♪」
「そうかもね」
 表情を変えずに笑んでいる教諭を見上げて、メイドのナナ・ノルデン(なな・のるでん)と魔女のズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)が言葉を交わしていると、集団の中においてローグの緋山 政敏(ひやま・まさとし)だけが踵を返した。
「冗談じゃない、行くぞ、リーン」
「えっ、ちょっと政敏」
 政敏はパートナーのリーン・リリィーシア(りーん・りりぃーしあ)の手を取って人混みからの脱出をはかった。
「政敏っ、私が「ヒール」を使えるから回診組に入れてもらえるのよ」
「良いんだよ」
 政敏とリーンが去った後、他にこの場を去る者は居なかった。生徒たちを見渡してから、ノーム教諭はアリシアに合図をした。
「かしこまりました」
 アリシアが抱えた虫籠を開くと、大量の「赤鼻発光ホ樽」が一斉に飛び立った。ホ樽は生徒たちの頭上を飛び過ぎると、各部屋の扉にピタリと張り付いた。
「ホ樽がとまった部屋が、発症者の部屋だ。さぁ、回診を始めよう……」
「ちょっと待って下さい」
 ソルジャーの高月 芳樹(たかつき・よしき)が教諭の言葉を遮った。パートナーのアメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)は教諭を、芳樹はアリシアに目を向けて続けた。
「彼女も水晶化してるんでしょう? 僕たちが代わりますよ」
「何故に?」
「ふくらはぎを水晶化していると聞いてますわ。異変はありませんか?」
「アリシア、どうなんだぃ?」
「………… いえ、私は…………」
「そうは言っても体力の低下はあるはずです。安静にしてもらった方が良いと思いますが」
「私が部屋までお送りしまして、芳樹が教諭のサポートをしますわ」
「その役は自分たちがやりましょう」
 フェルブレイドのザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)を先頭にチーム「パラミタ探偵団」の面々が名乗りを上げた。
「アリシアさんは自分たちが部屋までお連れします。自分を含め、パーティには「ヒール」を使える者も居ますし、頭数が居る方が教諭も安心かと」
 教諭はアリシアを見つめ見てから、ザカコの提案を受け入れた。
 同じくチーム「パラミタ探偵団」エル・ウィンド(える・うぃんど)が、
「ボクは残って連絡係をします」
 とザカコに提案すると、ザカコもこれを了承した。
「教諭………… そろそろ………… 重くて…………」
 四つん這いで教諭を背に乗せている椿 薫(つばき・かおる)が呻き声を上げたのを見て、教諭は大きく笑んでから風祭 隼人(かざまつり・はやと)に伝えた。
「他に何かあるかな?」
 聞きたい事や言いたい事は数多にあるであろうが、必要最低限の事は聞き終えたと判断したのであろうか、これ以上に声を上げる者はいなかった。
「それじゃあ、手分けして、」
「えっ、ちょっ、」
 教諭は最後の言葉だけを掻っ攫って大きく放った。 
「しっかり働くんだよ」