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リアクション
第9章 未来を奪う偽りの魂
「この森は自分とそっくりなヤツが出るらしいからな。誰が敵で見方かまったく分からないから騙されないようにしないとな」
武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)は特撮ヒーロー“ケンリュウガー”の衣装を着用し、森へ引き込まれたオメガを探していた。
「偽物が出てくる展開か!」
何者かが牙竜の背後を狙い轟雷閃を放ってきた。
「なんだ、そのカッコは・・・・・・いい年して恥ずかしくないのか?」
自分の服装を棚に上げて、ドッペルゲンガーの牙竜の格好を見て言う。
「このスタイルが分からんとは、どこの三流ヒーローだ!」
同じようなヒーロー姿のドッペルゲンガーの牙竜は腰に両手を当て、上から目線な物言いで言い放つ。
「ぐぅうっ・・・・・・偽者の分際でヒーローを語るとは・・・。しかも俺の衣装を馬鹿にするとは言語道断!」
高周波ブレードの柄を握り正義の剣風を飛ばす。
「似たような格好なのに・・・」
傍で聞いていたリリィ・シャーロック(りりぃ・しゃーろっく)はツッコミを入れ、海よりも深いため息をついた。
「成敗してやる!!―・・・ふぐぁっ」
ダムッと何者かに頭を踏まれ、ベタンッと地面に落ちてしまう。
「現れたな・・・便利な暗黒卿!」
起き上がった牙竜は、袖のない白いスカートのグロロリコスチュームのリリィを睨みつけた。
少女の両腕には真っ赤な血がついた包帯が巻かれている。
「牙竜・・・今日があなたの命日よ!絶望の血海に沈めてあげるわっ」
「普段も悪役らしいじゃないか便利な暗黒卿リリィ!」
ドッペルゲンガーのリリィを本物と間違えて褒め言葉を言う。
「ちょっと!本物のあたしはこっちよ!」
ムッとしたリリィが土を力いっぱい踏んで怒鳴りつけた。
「それになによ、普段のあたしよりぜんっぜん安っぽいヤツじゃないのよ」
偽者の方が本物より勝っていると言われ、リリィは顔を真っ赤にして怒る。
「もう頭にきた・・・どこから斬り刻んでやろうかしら」
少女はどす黒い不のオーラを纏い、ドッペルゲンガーのリリィを睨みつけた。
「フフフ、斬りふせられるのはあなたのほうよっ」
偽者のリリィが自信満々に言い放つ。
轟雷閃で斬り合い、容赦なく微塵に斬り裂く。
「本気で葬るとはこういうことよ・・・」
死体に向かってリリィは悪役らしい言葉を吐いた。
「あっちは決着がついたようだな。こっちも幕引きにしようかっ」
偽者のヒーローと刃を交え、胴を薙ぎ勝利の一撃をくらわす。
「見よっ、これが正義の力だー!」
剣の刃を天へ向け、牙竜は勝利の雄叫びを上げた。
攫われた生徒たちの救出しようと、ルイ・フリード(るい・ふりーど)たちは休むことなく探し歩く。
「ダディ・・・皆無事であろうか?」
リア・リム(りあ・りむ)が不安そうに見上げる。
「ドッペルゲンガーだけでなく、ゴーストもいるそうですからね。正直100%全ての生徒たちを救えるかどうか・・・」
「こんなことで寂しく死ぬなんて可哀想・・・」
ルイは泣きそうになるリアの頭を優しく撫でてやる。
「おぉお〜い、誰かいませんか?イルミンスールのヒーローが助けに来ましたよー!」
行方不明の生徒を探そうとクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)が大声で呼びかけた。
「そんなに大声を出して大丈夫であろうか?」
大声で呼びかけるクロセルにマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)は首を傾げて言う。
「これくらい大声で呼ばないと、隠れているかもしれない相手に聞こえないじゃないですか」
「人命第一だから止む終えないか」
「ドッペルゲンガーだけじゃなく、ゴーストも寄せてしまうことを心配しているのであろう?」
横からリアが口を挟み、さりげなくツッコミを入れる。
「ご・・・ゴースト・・・・・・。―・・・お化けなんていないさ〜怖くないさ〜♪」
恐怖心を紛らわせるためにわざとらしく歌う彼の姿に、リアのヒーロー像が粉々に砕かれてしまう。
「寄せてしまったようだな・・・」
シャーミアン・ロウ(しゃーみあん・ろう)の超感覚が、危険が迫っていることを察知する。
マナを危険な目に遭わせるクロセルの行動に、彼女は顔を顰めた。
「ゆゆゆぅれいですか・・・!?」
ビクッと身を震わせクロセルは足までガクガク震わせた。
「とてつもなく恐ろしいモノが近づいてきます・・・これは強敵ですよ・・・・・・ヒーロー最大のピンチ!」
殺気看破でクロセルの苦手な、その嫌なモノがやってくる気配を探知してしまった。
「(はっ・・・いけない、ヒーローのイメージを崩しては!)」
じーっと見つめるリアの視線に気づき、平常心を保とうとする。
「(落ち着かなければ・・・落ち着くんです俺・・・。そうだ深呼吸を・・・)」
ふぅっと深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
「敵はこの近くに潜んでいるようです・・・気をつけてください。・・・・・・はぁあうぁあっ!」
地中からズボッとナラカの死者が手を伸ばし、クロセルの足を掴む。
手から逃れようと光術を放ち、彼を助けようとルイがバニッシュの術を使う。
聖なる輝きによりゴーストはクロセルから手を離す。
「下がってください皆さん。敵は1匹、この俺が確実に倒します!死者よ・・・ナラカへ帰りなさい!!」
拳を地面へ殴りつけ、遠当てで地中に潜むゴーストを葬る。
「ふぅ・・・・・・やりましたよ皆さんー!」
「よく頑張ったな。(幽霊怖いのに)」
ビビって取り乱さなかったクロセルにマナが拍手を送った。
「ヒーローとして皆さんを守るのは当然のことですよ。はっははは!」
「だっ誰かいるんですか?」
恐れず立ち向かった自分に感動していると、少女の声が聞こえてきた。
「いますよ!森に攫われた生徒さんですか?」
怯えた少女の声が聞こえた方へ怖がらせないようにゆっくり近づく。
「ドッペルゲンガーじゃないですよね・・・」
十代前半の少女の生徒が草むらから顔を覗かせる。
「違いますよ」
「あぁよかったです・・・会う人が皆そうだったんで、てっきり・・・」
「よほど怖い思いをしたんですね・・・」
「だいぶ衰弱しているようだな。ソリに乗せてやろう」
マナはイルミンスールの生徒をサンタのトナカイのソリに乗せてあげた。
「まだ他にも沢山いるのでしょうか?」
「えぇたぶん」
生徒はルイの問いかけに沈んだ表情で頷く。
「こうしてはいられません、一刻も早く他の生徒を探しましょう!」
クロセルは先頭をきって歩きだした。
「やはり出てきたか・・・俺」
クリスタルを探している途中で、七尾 蒼也(ななお・そうや)は自分のドッペルゲンガーに遭遇してしまった。
「見栄ばかりで自分の欲望に正直にすらなれないヘタレめ」
ドッペルゲンガーは見下すような眼差しを向けて小ばかにする。
「・・・俺は確かに欲望に弱いし、可愛い子に目移りもするさ・・・」
「真面目な彼女一人で満足できるのか?俺と代われ。美少女も美形もよりどりみどりのハーレムを作ってやる!」
「だが、大事な人を守りたい気持ちに嘘はない!」
戦いたくはなかったが、避けられない適者生存の勝負を受ける。
「自分の欲望に目を背けるやつに目はいらないな!」
「ぅぁあっくそ・・・」
偽者の光術で目晦ましをくらってしまう。
「どこだ・・・どこにいる!?」
あまりの眩しさに目を開けられない蒼也は雷術を乱発させた。
「あはっははは!見えないのか?これは好都合、ヘタレにお似合いの最後を迎えさせてやるよ」
ドッペルゲンガーは火術を放ち、蒼也を焼き殺そうとする。
「あぁあっ!」
ゴォオゥウウッ。
火術の紅の炎が彼を死に至らしめようと襲う。
「(目を開けている時はあまり気づかなかったけど・・・焼ける匂いと、相手tが火術を発動する時の熱気を感じる・・・)」
目を閉じたことで普段使わない感覚を感じ取った。
「俺には大事な仲間たちがいる・・・負けられるか!」
迫り来る熱源を感知し雷術を放つ。
「視界を封じたはずなのに・・・・・・なぜだ!?」
「俺はこの戦いに勝ったら彼女に告白する!」
熱い思いを込めて火術を使い、未来を奪おうとする偽者を焼き払う。
勝てた喜びに蒼也は告白の意識を固めた。
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