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【十二の星の華】剣の花嫁・抹殺計画!(第2回/全3回)

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【十二の星の華】剣の花嫁・抹殺計画!(第2回/全3回)

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 教諭の研究室前でパッフェルの毒弾を受けたレーヴェ・アストレイ(れーう゛ぇ・あすとれい)は、校舎内に設置された救護所にて治療を受けていた。ナーシングを施したジーナ・ユキノシタ(じーな・ゆきのした)は優しい瞳でレーヴェに笑みかけた。
「終わりましたよ」
「ありがとう。助かりました」
「いぇ。他に何か気になる所はありませんか? 治療致します」
 大丈夫、と言ったレーヴェに、パートナーの如月 葵(きさらぎ・あおい)が肩を貸して立ち上がらせた。葵もジーナに礼を告げた。
「本当に行かれるのですか?」
「えぇ、玲奈が行くと言った以上、私もついて行きます。玲奈を守らなければなりませんから」
「ん? お姉ちゃん、何か言った?」
「いいえ、何も言っていないわ。治療、終わったわよ」
「本当? よぉし、それじゃあ行きますか」
 如月 玲奈(きさらぎ・れいな)イーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)と顔を合わせてから歩み寄って来た。それと同時に四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)がジーナの腕にそっと手を触れた。SPリチャージをかける唯乃に、ジーナは心配そうな表情を見せた。
「くれぐれも無理は、なさらないで下さいね」
「それはあなたも同じでしょう。治療をしている人が倒れてしまう事だってあるんだから」
「はい、気をつけます」
「やはり、パッフェルの目的を探りに行くのか」
 ジーナのパートナーでドラゴニュートのガイアス・ミスファーン(がいあす・みすふぁーん)の問いかけに、唯乃は首を縦に振った。
 救護所を設置し、水晶化した花嫁たちを治療していた唯乃であったが、自身もパッフェルに会いたいと願い出た。パッフェルの犯人像と情報を聞いた時、どうにも納得のいかない点が数多くあったからである。そのため、救護所はジーナに任せる事にし、つい先程に引き継ぎを終えたところであった。
「本人に聞くのが一番早いだろうしから。怪我しない程度に無茶してくるわ」
「それはあまりお勧めできぬが、健闘を祈っている」
「それじゃあ行きましょう。あたしが案内します」
 シィリアン・イングロール(しぃりあん・いんぐろーる)は言いながら右手を高く掲げてピョンピョン跳ねた。背の低いシィリアンは皆を先導しようと全身を使って、また怒鳴り声にも近い音量で「こちらですよ〜」と叫んでいた。無論、校舎を出るまでの案内は必要ないのだが。
 如月 玲奈(きさらぎ・れいな)四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)イーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)の一行が、「毒苺のなる巨樹」を目指して出発した。


 校長室での報告を終えた譲葉 大和(ゆずりは・やまと)が部屋に戻ろうと階段を下りていると、階段を上っていたメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)と踊り場で顔を合わせた。
 大和は、ベッドで上体を起こしていたラキシス・ファナティック(らきしす・ふぁなてぃっく)の肩をパッフェルが赤い光を放って狙撃したのだとしたら、それは校舎から1km以上離れた木陰から位置から狙われた可能性がある、という事を報告してきたのだと告げた。
「話を聞けば聞くほど、彼女と争うのはリスクが高すぎる気がしますねぇ」
「ねぇねぇ、やっぱりっ、やっぱり電話しても良い? かけても良い?」
「もう少し、待ちましょうね。もう少し」
「えぇ〜、さっきもそう言ったじゃん! もう待てないよ〜」
 携帯電話を持つ手と腕を振るセシリア・ライト(せしりあ・らいと)を、フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)が温和な表情でなだめていた。やりとりの内容を大和が訊ねると、メイベルは苦笑いを浮かべて応えた。
「さっき話していた時にミルザム・ツァンダ様は「剣の花嫁」なのでしょうか、という話になりましてぇ、そうしたらセシリアがクイーン・ヴァンガードに問い合わせると言いだしたんですぅ」
「えっ、かけたのですか? こんな時間に」
「はい、こっぴどく怒鳴られてました。でも調べて折り返してくれると言って下さったそうなので、それを待っているんですけど…… 待ちきれないみたいですねぇ」
 メイベルに続いて大和が視線を向けると、セシリアが携帯を耳に当てた所であった。催促の問い合わせになるという事には…… 恐らく気付いていないのだろう。
「女王候補である条件が「剣の花嫁」であること、という仮定ですね」
「そうですぅ。パッフェルが「剣の花嫁」だけを水晶化させていた理由が、女王候補や女王器を扱うための資格といった事と「剣の花嫁」であるという事が何か関係しているであるんじゃないか、と考えたんですぅ」
 顔を俯けたまま、セシリアはメイベルの袖を掴んでいた。
「…… 天使さまだって……」
「天使?」
ミルザム・ツァンダ様は「守護天使」だそうですわ」
 「守護天使」? という事は。いえ……。
「もう一度、情報を整理する必要がありますですぅ」
 近づいている実感はあった。パッフェルと十二星華の狙いと真実に辿り着いてみせる、メイベルは決意を瞳に浮かべていた。


 譲葉 大和(ゆずりは・やまと)が部屋に戻ると、ベッドに横たわったまま顔を見せたラキシス・ファナティック(らきしす・ふぁなてぃっく)と、バトラーの水神 樹(みなかみ・いつき)が笑顔で出迎えた。
「樹さん、ありがとうございました、助かりました」
「いいえ、私は。それよりも」
 樹はラキシスの肩を支えて起き上がらせると、服の裾を掴んでラキシスの脇腹を見せた。
 大和はラキシスに寄りて覗き込んだ。ラキシスの左脇腹から腹部にかけてが水晶化していた。
「水晶化が進んでいる」
「えぇ、このままでは、直に上半身が動かせなくなるでしょう」
「だそうだ。ラキ、好きなポーズを取るなら今のうちですよ」
「ばか…… むかしっからそうだよね…… 大事な時ほどふざけたがるんだから……」
 そう言って笑みを見せたラキシスだったが、その笑みは無理をして造られた笑顔である事は一目瞭然であった。そしてそれが大和と樹の胸を刺していた。
「限界です。ラキ、救護所に行きますよ」
「ダメだよ、治療をしないとどうなるのか、それを見れば治療法の解決に繋がるかも知しれないでしょう、だから、」
「体力が限界にきています。ヒールをかけて貰いましょう」
 大和がラキシスを抱きかかえると、樹がラキシスに上着をかけた。救護所には毛布の類も用意されていると聞いていたが、樹は毛布と枕を持って部屋を出た。
 時間と共に水晶化は範囲を広げてゆく、そのうちに全身が水晶化してしまうだろう。しかし全身が水晶化した時に訪れるのは死であるのか、それはまだ分からない。教諭がユイードを調べているが、生存しているのかさえ分からないようであった。朝までの、いや早い解明が求められて、願われていた。


 ディアス・アルジェント(でぃあす・あるじぇんと)はパートナーのルナリィス・ロベリア(るなりぃす・ろべりあ)を図書館の椅子に座らせてから、念を押すようにして言った。
「いいな、ここでジッとしてるんだぞ、動くなよ」
「………………」
「私たちが調べるから、ゆっくりしててください」
 レイフ・エリクソン(れいふ・えりくそん)が言っても、ルナリィスは言葉を発しなかったが、すぐに棚に並ぶ大量の本へと瞳を向けていた。
 ルナリィスは後方から聞こえた足音に顔を向けようとしたが、首筋が水晶化しているために顔を向ける事ができなかった。そうしてるうちにカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)がルナリィスの顔を覗き込んでいた。
「そうだよぉ、本はボクたちが持ってくるから、ルナちゃんは読んで調べてね」
「……………… 了解」
 機晶姫のジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)晃月 蒼(あきつき・あお)を誘導して椅子に座らせた。
「晃月蒼も動きまわらずに、ここで待っていると良いぞ。本は我とカレンが持ってくるからのぅ」
「んん〜、ちょっと悔しいような気もするけど…… でも頑張るんだっ、何としても手がかりを見つけろって先生に頼まれたんだからぁ」
「よし、それじゃあ俺は「伝承」や「おとぎ話」の関係から調べるぜ」
「ボクたちは「あの赤い光を放った銃」について調べるよ」
 ディアスはレイフと、カレンはジュレールと共に本棚が作りし通路へと向かって行った。それを見送ってから橘 恭司(たちばな・きょうじ)フィアナ・アルバート(ふぃあな・あるばーと)も歩みを始めた。
「私たちは、どうするのです?」
「そうですね。彼ら以外にも図書館で調べていた生徒がいると思いますので」
「その人たちから話を聞けば良いんですね」
「えぇ、行きましょう」
 イルミンスールの膨大な書物への挑戦が再びに始まった。