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謎の古代遺跡と封印されしもの(第1回/全3回)

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謎の古代遺跡と封印されしもの(第1回/全3回)

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第五章 ――遺跡内部 異変アリ――

・道は開かれる

「なるほど、行き止まりですか。でもここが怪しいと?」
「はい、この階が上階とは異なる造りになっている以上、何かがあるとは思います」
 話しているのは、ウイングとクライスである。ウイングは壁を叩いて調べる。
「ただ、この先に空洞は無いようです。音が他の壁と同じですから」
「壊そうとしても壊れなかったのです……」
 ひなが呟く。
「よし、だったら俺が……」
「周くん!」
 一歩前に出た周の足をレミが踏みつける。
「いてて、何だよレミ、俺はただ女の子を手伝ってやろうとだな。いや、だからナンパとかじゃないって」
「顔にナンパって書いてあるよ。全く、下心丸出しでいいとこ見せようってのが丸わかりよ。恥ずかしいからや・め・て・ね」
 じっと周の顔を睨んで念押しする。
「わかったわかったって。で、どうすんだ? このまま立ち往生ってわけにもいかないだろ?」
 この様子に先にいたクライスらの一行は呆気に取られこそしたものの、すぐに平静になる。
「やっぱり仕掛けなのか? 俺達がまだ試してない何かがあるってことか?」
 その場の全員が沈黙し、考える。静かではあるが、あまりにも集中し過ぎていたせいでさらにこの場に現れたものの存在に気づかなかった。

「わ!!」

「うおっ!!」
「きゃあ!!」
「な、なんだよ!」
 三者三様の悲鳴が上がる。
「いやー、ごめん、ごめん。あまりにも静かすぎて私達が来た事にも気づいてなかったようだからさ」
 五月葉 終夏であった。彼女以外に、リヴァルト一行の姿が全員、そこにはあった。
「暗い顔してると悪いものが寄ってくるよー ?やー元気にいこう、元気に!」
 彼女はその場の雰囲気を良くしようと努めているようだ。
「そうは言いますけど……今、私達八方塞がりなんです」
 緋音が弱った様子で答える。
「だ、そうだ。リヴァルト、君ここに覚えは?」
「うっすらとですが……隠し扉のような場所に入る前に行き止まりにあたったような気がします」
 リヴァルトが言う。先にいた者達は、第一発見者の登場に、この状況が解決されることを期待した。
「確か一度壁に寄り掛かろうとして……え?」
 がこん、という音ともに、壁の一部が反転した。それは扉のような形で直角で止まる。かなり分厚く、音だけでは周囲の壁とは区別がつかなかった。
「まさかこれが隠し扉なのか?」
 にゃん丸が驚愕する。
「ずっと調べてたのに……こんなところだったなんて。手で押しただけじゃダメだったんですね」
 クライス達は細かく調べていたが、休む時も含めて壁の隠し扉部分に寄り掛かる事だけはしていなかった。ただ、別の壁には寄り掛かったりもしていたため、調べた気になっていたのである。盲点だった。
「お、リヴァルト、さすがだな。きっと記憶が消されても身体が覚えてたんだね」
 梓が感心していた。
(都合が良すぎる。まさかこいつが導いている……のか? いや、操られているようには見えないな。もし嵌めるつもりならいくらでもやりやすい場所はあっただろうし……)
 にゃん丸は出来過ぎた展開に疑いを感じずにはいられなかった。
「まさか……でも入って確かめましょう」
 一行は中に入っていく。
「思っていたよりは狭い部屋だね。それに何もない。これは何の部屋だろう?」
 護衛役を買って出ていたリアトリスが周囲を見渡して呟く。常に警戒をした状態だが、何かが起こる気配はない。
 人数の関係で、半分が通路、半分が部屋の中という状態になっている。
「何もないみたい、ですね」
 リリエが確認し、部屋から出る。入れ替わりでひなと緋音が入って来る。
「ほんとに何もないですね。一体この部屋はなんでしょう?」
 一通り部屋の中も壁も探り終えた。仕掛けも見当たらない。
「ふむ、何もない……ちょっと待て。何かまだ試してないことがある。リヴァルト、おい何をする気だ!?」
 にゃん丸がリヴァルトを止めにかかる。
「この扉を閉めてみます。大丈夫です。通路の人達ももう開け方を知ってますから」
「待て、早まるな!」
 リヴァルトへの疑いが晴れてないにゃん丸は彼を制止する。だが、
「すいません!」
 勢いよくドアを閉めるリヴァルト。他の者達に動揺が走る。
(コイツ、やりやがった!!)
 この時部屋の中にいたのはリヴァルト、緋音、にゃん丸と、リアトリス、周、梓と彼らのパートナーである。
 部屋の中は静かだ。だが、わずかにだが動いているような感覚に中の者は襲われていた。
 一方、部屋の外側では、
「な、リヴァルトが扉を閉めたぞ。何をする気だ?」
 レイディスは仲間と分断されたため、気が気でない。クライスも同様だ。
「きっと彼なりの考えがあるのでしょう。もっとも、まだ彼を信用したわけではありませんが……」
 ウイングは慎重だ。
「いや、大丈夫だと思うよ。何か企んでるだったら、ここに来るまでの間に私達を嵌めてるさ」
 終夏は彼を信用しているようだった。


・外

「なんだ、ナガン。出てきたのか?」
 悠司は遺跡の入口まで出てきていたナガンと話している。
「ハッ、とんだ期待外れってもんだ。何も面白いもんなんてありゃしないねェ」
「その手に持ってるのはじゃあなんだ?」 
 悠司は手に持っている書物を指差す。
「せっかくだから拝借したまでだよォ。中にゃ罠も秘密兵器とやらもないから、せめてこれでもってな」
 表紙には謎の模様がある。それまでに発見されている魔法陣の書いてある本とは若干異なるものだ。もちろん、この道化師はその事は知らない。
「ちゃっかりしてんな……ん、なんか中が騒がしくなってきたようだが……」
 何やら様子がおかしい事に気づいた。
「なんだかトランシーバーにノイズが混ざってるんだよね。壊れてはいないようだけど……おや、誰かから発信されたみたいだよ」
 その場に歩いてきたのは司城だ。そして彼の持っているトランシーバーから音声が流れ終わると、
「あ、おいナガン!」
 ナガンは最後に「なんだ、出てきて損したぜ」とだけ残して遺跡の中に戻っていった。
「さて、君はどうするんだい?」
 悠司に問う司城。
(ヤバい事になりやがった! 未憂……)


・第二層 

「っ! 何事です!?」
 空気が一変した、遺跡の入口のある階層。遠くの方で大きな物音がしたのを夜住 彩蓮は耳にした。
 おかしいのはそれだけではない、周囲に積もっている砂が突如として撒き上がり……人形を形成する。
 ――サンドゴーレム、砂で出来た魔法の力によって操られているゴーレムである。
 付近の魔法陣のような模様が光を放っている。それに呼応するかのように、一体、また一体と数を増やしていく。砂のある場所にはこの巨人が現れた事だろう。それはこの階層がもはや安全ではない事を意味している。
 ゴーレムの腕が彩蓮を捉える。
「……っ!」
 寸での所ではパートナーのデュランダルがそれを受け止める。
「どうやら戦うしかないようですね……」

 同刻、上層階への存在が疑われていた場所に階段が現れた。天井が開き、落ちてきたのである。そして階段から流れ込んでくるのは大量の砂サソリだ。人間ほどではないが、その大きさは1メートルくらいはある。間もなく第二層は砂サソリとサンドゴーレムによって埋め尽くされてしまうだろう。
 だが、同時に上層階への扉も開かれたのである。


・第三層 一階

「イーヴィちゃん、こっちは行き止まりです」
 藤原 すいからマッピングをしていた組は一階部分の外周にいた。二手に分かれて地図を作成したが、片方が行き止まりにぶつかったようだ。
 その場所は、先にリヴァルトらが向かった最深部へ続く通路の手前だった。
「こっちには道があるわ。まったく、この階だけ造りが違うなんて……え?」
 天井から勢いよく壁が落下してくる。何も罠のようなものに触れてはいない。次の瞬間、
「あれ、なんで?」
 すいかの目の前の壁が天井に向かって上がっていった。いきなりの出来事に二人は目を丸くするほかなかった。
「一体、どうなっているんでしょう?」
 卓也も動揺しているようだ。
「……月白さんに後藤さん、一ノ瀬さんは?」
 遺跡を把握するために行動していたものの中で姿の見えないものがあった。
「さっき、もうこの壁の向こう側に行ってたわ。無事ならばいいけど……」
 その時、すいかの手にあるトランシーバーから音が聞こえてきた。
「え……大変です。図書館が……!!」

「くそ、何が起こったというんだ!?」
 いきなり壁が出現して分断されたことに驚く日和。不用意に怪しいものには触っていなかっただけに、平静を保つのは難しかった。
「戻る事が出来なくなったのは確かだ……進むしかなさそうだな」
 悠姫が暗がりの通路の先を見る。
「それに、この先には何かがありそうだ」
 周囲の壁の魔法陣が光を放っている。
「え、ちょ、何が起こってるの?」
 月実が思わず声を上げた。
「この遺跡の『何か』が動きだしたようだな。ん、なんだ、この声は……?」

 既にこの時、それは遺跡にいる者達を震撼させる深刻な事態になっていた。