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聖ワレンティヌスを捕まえろ!

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聖ワレンティヌスを捕まえろ!

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■□■2■□■「なんてこった、アーデルハイトがアーデルハイトを!!」

 「待て!」
 そこに現れたのは、緋桜 ケイ(ひおう・けい)
 パートナーの魔女悠久ノ カナタ(とわの・かなた)であった。
 側には、等身大のアーデルハイトチョコが立っている。
 「シナリオガイドのキャラクエネタとは、
  何のことかわからないみんなに俺が一から解説してやるぞ!
  何度死んでも生き返るアーデルハイトだが、
  そのスペアボディは驚くことに実は誰にでも簡単に製造可能なんだ。
  材料はイルミンスールの森にあるキノコ、これだけだ。
  そのキノコですら何だってかまわない。
  これをアーデルハイトの工房にある鍋で煮て、
  その汁を鯛焼きの型が大きくなったようなアーデルハイトの型に入れて流し込む。
  後は一時間ほど冷やすだけで、誰にでも簡単に鯛焼き感覚で作れてしまうんだ。

  魔法って何だろうな……。

  以前はキノコを鍋で煮るとき、チョコやバナナといったフルーツも入れてみたんだが、
  バナナチョコアーデルハイトとか新型アーデルハイトができちゃって驚かされたもんだぜ。
  そこで今回はキノコを煮る鍋に、
  あの空京のカリスマショコラティエが作った『ショコラティエのチョコ』をふんだんに投入して、
  まったく新しいタイプのアーデルハイトを作ってみた!

  名付けて、フルチョコレートアーデルハイトだ!」
 ケイが解説する。
 「なんでも毒々しい色のキノコを入れると今のアーデルハイトっぽい性格になるという話だ。
  ならば見た目が素朴なキノコのみを入れて作れば、
  きっとできるアーデルハイトも素直で初々しい子になるに違いない。
  一つ、わらわのことは「お姉さま」と呼ばせてみるとしよう」
 フルチョコレートアーデルハイトが、カナタに寄り添う。
 「かなた……オネエサマ……」
 「ふ……ふふ……。
  チョコとはいえ、あのアーデルハイトを従わせていると思うと、
  なにか、こう、背筋がゾクゾクするわ」
 カナタが怪しく笑う。
  
 ナナ・ノルデン(なな・のるでん)も、
 チョコレートの原材料を混ぜ合わせて、アーデルハイトの型に流し込み、
 等身大のチョコを持ち歩き、ラブい空気をかもし出していた。
 「あとは、ワレンティヌスがひっかかるのを待つだけですね。
  ひっかからなかったら、皆で砕いて食べてしまえばいいでしょう」
 「ぬな!? でっかいチョコ持ち歩きやがって!!
  確保!!」
 ワレンティヌスが飛び出し、ナナの持つ等身大アーデルハイトを奪おうと飛びかかる。
 すると、別方向からおそろしい声がした。

 「ギャース!!」

 カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)と、
 パートナーの英霊八坂 トメ(やさか・とめ)が、
 泥人形のような姿のチョコ人形3体を追いかけてきた。
 「別にあげる人いないけど、
  大図書館でこっそり借りてきた禁断のレシピを見ながら、魔法のチョコを作ってみたんだ。
  でも何か借りてきた本が悪かったのか、材料と配分を間違えたのか、
  トンデモないチョコが出来ちゃって……。
  そしたら丁度タイミング良く聖ワレンティヌスの騒動が起きて、
  皆がチョコ奪還のため、森に向かったから、この機に乗じてあの妖怪チョコを証拠隠滅
  ……もとい、回収するよ!
  一体でもいいからじゃたが食べちゃったりしてくれると都合がいいけど、
  普通の人が食べるとお腹壊すぐらいじゃ済まないよ〜
  って、アーデルハイト様がいっぱい!?
  まさか分身してボクを怒りに来たのかな!?」
 「おねーちゃんからは、逃げたチョコ人形は3匹とも倒せって言われてるけど、
  何か可哀想に思えてきたから、チョコ人形と一緒に暴れ回るよ!
  食べ物を粗末にする人達には天罰てきめんなのだ」
  トメが、妖怪チョコ人形の味方になって暴れはじめる。
 「ちょ、トメさん!? 何してるの!?」
 「だ〜か〜ら〜、トメさんって呼ぶなぁ〜っ!!」
 動転するカレンがうっかりトメが嫌がるおばあちゃん風な名前で呼んでしまい、火に油を注ぐ。
 「これは、コメディシナリオなのでなぜかできてしまったじゃた。
  他シナリオではできないじゃた。証拠隠滅のため、食べるじゃた!」
 じゃたが、妖怪チョコを食べようと襲いかかる。

 そこに、棚畑 亞狗理(たなはた・あぐり)が現れる。
 「1年365日バレンタインデーなら、
  記念日も食物の恨みも中毒も商売も、俺様の農業の夢も解決じゃき!
  チョコ会社の陰謀に隠れた産業経済の闇勢力……それはカカオ農園なんじゃー!
  ちゅうわけで、こうも皆を魅了し狂乱に堕としめる麻薬物質の生産を握ろうというのが、
  俺様の野望じゃきに。
  ……もとい、平和裏にチョコ天国を築くのが夢じゃきに。
  三つの森の一部をカカオに転換すべく、『パラミタ通年バレンタイン計画』実施じゃけん!
  聖ワレンティヌスは、一年中を記念日にすれば感謝される!
  超ババ様は、残機の分まで毎日生徒からチョコがもらえる!
  じゃたは、内製化すれば依存症も解決!
  環菜は、商戦の期間が増える!
  もうカカオ不足は必至!
  颯爽と俺様が、三つの森にカカオを植樹にかかるんじゃ!
  手始めはイルミンの森じゃきに。ヒャッハー!」
 独自のパラ実農学科理論により、亞狗理はカカオの植樹を開始した。

 「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
 「あれはホワイトチョコのデコレーションじゃないんです、
  拘束具なんです!!」
 さらに、ナナの量産型チョコレートアーデルハイト初号機が暴走した。

 「ばかもーん!!
  私の身体をなんだと思ってるんじゃー!!」
 ブチ切れたアーデルハイトが、量産型チョコレートアーデルハイト初号機とともに、
 妖怪チョコも一緒に、カレンとトメと亞狗理ごとぶっ飛ばす。
 「うきゃああああああ!?
  ボク、【空京の撃墜王】なのに、打ち上げられたー!?」
 「きゃあああああ、あたし、お空飛んでるよー!!」
 「はっ! ドM向けチョコ温泉『ドM&ドM’S』ちゅうのはどうじゃろう?」
 それを見た、ケイが戦慄する。
 「なんてこった、アーデルハイトがアーデルハイトを!!」
 さらに、ケイの作ったフルチョコレートアーデルハイトが溶け始める。
 「と、溶けてやがる……暑すぎたんだ」
 ケイが呆然とつぶやく。
 「か、かなた、オネエサマ……」
 「どうした!? 言いたいことがあるのか、アーデルハイト!?」
 「タベモノハ……タイセツニ……」
 「ああぁぁぁー!
  アーデルハイトォォーッ!
  わ、わらわの大切な妹がああぁぁぁーーーッ!」
 ドロドロに溶けたフルチョコレートアーデルハイトの前で、カナタが盛大に嘆き悲しむ。
 「お前らー……」
 アーデルハイトが、ケイとカナタとナナに説教を始める。
 「お前らは比較的真面目な生徒だと思っておったのに!
  どういうつもりじゃ!
  特にカナタ! 私のことをなんだと思っているのじゃ!!」
 「さきほどのアーデルハイトはあれほどかわいかったのに……」
 カナタは深い悲しみに浸っているので、
 ライバル視しているアーデルハイトに怒られても反論しなかった。

 なお、ぶっ飛ばされたり溶けたチョコレートはじゃたが美味しくいただいたのであった。

 「なんかやべーし、今のうちにずらかるぜ!」
 ワレンティヌスは、その隙に逃げた。
  
 そのころ、六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)は、
 パートナーのヴァルキリーミラベル・オブライエン(みらべる・おぶらいえん)と、
 同じくパートナーの英霊坂本 龍馬(さかもと・りょうま)とともに、チョコの回収を行っていた。
 「御神楽校長先生は商売の道具にするつもりのようですけど、
  私は単純にチョコを奪って隠す人が許せません。
  見つけたらお説教ですっ!」
 (……私は下手でもちゃんと手作りをした物を、
  今回連れてこなかったもう一人のパートナーにあげるつもりですけど)
 そう考える優希だが、ミラベルが方向音痴のため、3人とも道に迷っていた。
 「あれ? 2人とも、どこに行かれたのでしょうか?」
 気がつくと、ミラベルと龍馬が、優希の側を離れている。
 「道に迷うと、腹が減るのも早いのう……チョコを食べて、腹を満たそう。
  1個や2個ぐらい減ってもゴミをちゃんと片付ければ、誰にもわからんと思うきに」
 「って、何をされているんですか!」
 ミラベルに怒られて、龍馬が市販品のチョコを探して見せて言う。
 「ほれ、中身はこんなのばかりじゃ。
  良い手作りのチョコがあれば嬢ちゃんにも見せて、勉強させるのも良いかもしれんのう」
 「確かに……包装の割に市販品ばかりならば、その人に説教をしたくなりますわね。
  中の手紙等は見ずに、包装も後から元に戻せば大丈夫でしょう……多分。
  イルミンスールの方々の料理の腕の平均が気になりますので、調査しましょう」
 龍馬とミラベルがチョコを開封し始める。
 「……っ、2人共、何をやってるんですかー!?
  ああ、こんな所を作った本人に見られたら何をされるか……」
 「調査ですわ、優希様」
 「もぐもぐ、調査じゃきに、嬢ちゃん」
 「いいかげんにしてくださいっ!!」
 優希が、チェインスマイトでミラベルと龍馬を叩きのめす。
 「がるるるる、チョコレートじゃた……」
 「きゃあああああ!?」
 チョコを開封していたため、優希とミラベルと龍馬は、じゃたに襲われたのであった。