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聖ワレンティヌスを捕まえろ!

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聖ワレンティヌスを捕まえろ!

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 第3章 「チョコはここか! それともここか! おっとホワイトチョコ発見だぜぇー」

 森の中を必死で走るワレンティヌスの前に、トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)が現れる。
 (あなたの街の便利屋さん。ロックスター商会、参上!
  逃げて暴れる奴を捕まえるのは骨が折れる。
  なら、向こうからこっちに擦り寄ってくるようにすればいいのさ。
  俺こと蒼学の恋愛詐欺師が、
  ワレンティヌスを口説いてメロメロにしちまって
  言うことを聞かせれば簡単な話じゃねぇか)
 かくして、トライブはワレンティヌスを口説き始める。
 「あんたに、惚れたぜ」
 ワレンティヌスに手作りチョコを渡しながら、目を覗き込み、耳元で甘くささやく。
 「な、なんだおまえは……」
 「その艶やかな黒髪、清廉さを表わす服装、かわいらしい戸惑いの表情、
 そして、過去の偉業! 恋人達のために殉教するなんて泣かせるじゃねえか」
 トライブが、押しの一手とばかりに、ワレンティヌスを褒めちぎる。
 「なに言ってるんだよ……」
 戸惑いつつも、照れたような様子のワレンティヌスだが、ざんすかが割ってはいる。
 「ワレンティヌス! 何やってるざんす!?」
 「あんたも混ざらないか? 女の子限定なら来る者を拒まないのが俺の主義だ」
 トライブが、予備のチョコをざんすかに渡す。
 「俺、本気を出せば8人まで同時にイケると思うんだ」
 「何の話だよ!?」
 ただの女好きになってセクハラ発言を始めるトライブに、ワレンティヌスがツッコミを入れる。

 「エリザベートから貰える筈のチョコが届かない原因はテメエかワレンティヌスゥゥゥゥ!
  もういい! お前がチョコだ。
  お前はエリザベートから俺に送られたチョコだ。
  ヒャッハァ〜考えてみればそこらのチョコより美味そうだァ〜」
 南 鮪(みなみ・まぐろ)が、ワレンティヌスのスカートの中に潜入する。
 「ヒャッハァ〜! チョコはここか! それともここか!
  おっとホワイトチョコ発見だぜぇー、流石、性ワレンティヌス一味違うぜ」
 「ぎゃあああああああああああ!?」
 ワレンティヌスは自分が真のチョコだから世間のチョコに嫉妬したに違いないと断定した鮪は、
 ワレンティヌスを拉致してエリザベートと交換を要求しようと画策しているのだった。
 「てめー、ふざけんなッ!!」
 ホワイトチョコことパンツを奪った鮪に、ワレンティヌスが思いっきり蹴りを入れる。
 しかし、パンツ奪われた状態なのである。
 「真のイルミンスールの森目撃ダゼェー」
 「こいつ記憶消してやる!」
 赤面したワレンティヌスは鮪を蹴りまくる。
 「おお……いいもの見たぜ……」
 トライブがこっそりガッツポーズしていた。

 そこに、鳥羽 寛太(とば・かんた)が走ってきた。
 「僕がお世話しますから、捕まえるとかやめてあげてください!
  こんな幼い少女を商売に利用するなんて酷いです。
  こんな幼い……黒髪ロングの……女の子……はあはあ」
  寛太は、ワレンティヌスの周りに、弱酸性のアシッドミストを放つ。
 「ワレンティヌスたん、さあ、こっちです!
  ……はあはあ」
 寛太は目くらましに成功すると、ワレンティヌスの手を取って走り出す。
 「お、おい、服が溶け始めたじゃねーかっ!?」
 「あ、ごめんなさい、濡れちゃいましたね。どうぞ、たまたま持ってた物ですが」
 森の奥で2人きりになり、寛太がスク水を差し出す。
 ワレンティヌスの服はアシッドミストのせいで溶けておりボロボロになっていた。
 なお、パンツは鮪が確保済みである。
 「くっ、背に腹は代えられねー!」
 ワレンティヌスはスク水に着替える。
 寛太はどこからともなくコタツを取り出した。
 「冷えますからどうぞ。みかんも食べてください。チョコなんてくそ食らえですよね?」
 ワレンティヌスをコタツに入れると、寛太はコタツの中にもぐりこむ。
 「あ、ちょっとコタツの温度設定変えますね」
  そう言って下半身をのぞく寛太であったが、もはや我慢の限界であった。
 「コタツバリアーッ!」
 「ギャーーーーーー!?」
 コタツごと覆いかぶさる寛太を、ワレンティヌスが蹴り飛ばす。
 「だってしょうがないでしょう! エロスを糧に生きているんですから!」
 開き直ってキレる寛太から、ワレンティヌスが逃げる。
 「来るな変態ーッ!!」
 「待ってください、はあはあ」
 
 スク水で逃げるワレンティヌスを、風森 望(かぜもり・のぞみ)が発見する。
 「アーデルハイト様へのチョコレートを奪った方には
  それ相応の報いを味合わせませんとねぇ……ふふふふふ。
  デ校長? 知りません。私はアーデルハイト様一筋ですから!
  あら、素敵なお召し物を着ていますね?」
  望は、アーデルハイトとともに、ワレンティヌスを追いつめる。
 「さて、アーデルハイト様。どのようなお仕置きが宜しいでしょうか?
  私は、巫女装束を着せた上で、セクシャルなお仕置きをしたいですね。
  折角の黒髪ロングなのですから!
  ストライクゾーンではありませんが、十分に守備範囲です。
  スク水も捨てがたいですが、この巫女装束を着ていただきましょう!」
 「お、おい、あんまりやりすぎるのは……」
 望のセクハラを身を持って経験しているアーデルハイトがドン引きして言う。
 「うわあああああああああああああん!!」
 「あっ、こら、待ってください!
  これから撮影会を開始するところなんですよ!!」
 巫女装束に着替えさせられたワレンティヌスが、望から逃亡する。
 
 しかし、日堂 真宵(にちどう・まよい)
 パートナーの吸血鬼アーサー・レイス(あーさー・れいす)
 同じくパートナーの英霊土方 歳三(ひじかた・としぞう)が待ち構えていた。
 「逃げ回るのにも体力は必要でーす、ここいらでカレーで一息つきませんかー?」
 「な、なんだおまえら……ぐむぐむ」
 アーサーが、ワレンティヌスに無理やり大量のチョコを隠し味にしたカレーを食わせる。
 「我輩の愛が詰まったカレーをご馳走しまーした!
  変わりに貴女の愛つまり血を頂きマース!
  一度聖職者の血を味わってみたかったのでーす」
 「ぎゃあああ、やめろおおおおお!!」
 アーサーがワレンティヌスに襲いかかる。
 「『盗まれたチョコに、“こんな事もあろうかと”事前に用意しておいた
  懐かしのメタボリック草混入真宵のらぶはーとたぁっぷり錬金ハンドメイドチョコを混ぜて
  便乗してイチャラブしてる連中を太らせてしまえ作戦ー!』
  とか思ってワレンティヌスに合流したらアーサーがおかしいわ。
  普段ならざんすかをカレーにして煮込もうとしててもおかしく無いのに、
  完全にワレンティヌスまっしぐらよ」
 「ははーん判りましたよ。
  つまり妬ましいから自分も結婚式をしたいのですねー?
 宜しい我輩が貴女を吸血鬼の花嫁にして差し上げマース」
 「やめろっつってんだろー!!」
 「極め付けに求婚まで始めたわ。面白いから見学しましょう!
  婚前っ! 婚前交渉ね! お下品よアーサー。
  そこっ! 一気に押し倒してしまいなさい。
  違うわもっとがばっと。
  馬鹿ねそこは吸精幻夜って無理矢理言う事聞かせるのよ!
  きゃっわたくしに何を言わせるのよ」
 ちょっとお嬢様ぶってる素に戻りつつ、真宵が見守る。
 「下品なのは好きじゃないけど、
  自分が被害に遭わずに他人が悲惨な目に遭ってるのならば、
  それを見て羞恥プレイ状態にしてあげるのも悪っぽいものね。ふふふふふ」
 「はーなーせー!!」
 ワレンティヌスがアーサーをげしげし殴る。
 「どうでも良いが魔法学校と言うのは上から下まで揃いも揃って阿呆で馬鹿なものなのか?
  ここまで馬鹿ばかりならイルミンスールでのバレンタインは
  石田散薬を服用する日と言う噂を触れ回って見てはどうか。
  反対する者疑う者は拷問すれば問題ない……。
  いかん、毒されかけているな」
 土方はもっと根源的な問題が気になっていた。
 「拙いぜこの森は。滞在するものの知性と品性を奪う瘴気が満ちていやがる。
 同じ様に馬鹿になれ? だが断る」
 そこに、寛太が走ってきた。
 「あっ、ワレンティヌスたん! 巫女装束とはこれはこれで、はあはあ」
 「おい、本当にこの森に危険は無いんだな?」
 「何するんですか、ぎゃあああああああああ!?」
 土方は寛太を拷問しはじめた。
 そこに、ワレンティヌスが元から着ていたのとお揃いの聖職者の服を着た、
 ケイラ・ジェシータ(けいら・じぇしーた)が走ってきた。
 アーサーから必死で逃れていたワレンティヌスに、
 「あなたのワレンティヌスより」と書いたメッセージカードと共に薔薇の花束を渡して、ケイラが言う。
 「皆に結婚式してあげてたんだから、根は優しいんだろうね。
  折角英霊として具現化したんだから……
  自分の為にやりたい事をやればいいと思うよ?」
 「お、おい!?」
 言って、ケイラが駆け出し、ワレンティヌスが戸惑っていると、
 七尾 蒼也(ななお・そうや)が、朝臣 そるじゃ子を伴って現れる。
 「バレンタインには感謝してるぜ。だがチョコを奪うのはよくないな。
  バレンタインはチョコの日じゃないが、相手を思う気持ちがこもってるんだ。
  愛の尊さはお前が一番知ってるはずじゃないのか?」
 「子どもだってことで、あたいからは奪わなかったが、
  カツ丼の兄ちゃんが大切な人のために作ったチョコ奪ったらしいじゃねえか」
 蒼也はそるじゃ子とともにジーナへのトリュフを奪ったワレンティヌスを追い、
 捕まえて説得しようと思っていた。
 また、ケイラがワレンティヌスに一目ぼれしているのに気づいた蒼也は、
 2人をくっつけようとしているのであった。
 「オッス、ワレンティヌスだよ♪ ……テヘッ」
 片手を腰に当てもう片方の手は目元で横ピースして、ケイラがアーサーの前に立つ。
 「こうなったらあなたでもいいデース!!」
 「うわああああああ!?」
 ケイラは、なしくずしでアーサーに襲われる。
 そこに、朱宮 満夜(あけみや・まよ)が、
 板チョコ形カレールーをベースにした「偽チョコ」を持って現れる。
 ワレンティヌスをイルミンが確保できるようにカレー製偽チョコでおびき寄せようとしていたのだ。
 そのままでは大きいので、あらかじめ分割して、水あめでコーティングし、
 りんごと蜂蜜で味付けして、色をイカスミでごまかしたという、凝った作品である。
 「プレゼントするのにチョコレートじゃなければいけないとか、そんなの関係ありません!
  相手を思いやる気持ちがあるなら、どんなものでもいいんです!」
 ワレンティヌスを説得しようとする満夜だったが、
 どうも聞いていないようなので、
 強硬手段に出ることにする。
 「「吸精幻夜」でワレンティヌスに接吻します!
  女性は恋愛対象じゃないですが、やむを得ません!!」
 「うわあああ!?」
 満夜がワレンティヌスに襲い掛かろうとしたところを、アーサーが割り込む。
 「カレーを持っていますねー。
  カレー好きの女性はすべて我輩のものデース!!」
 「うわ、なんですかあなたは! やめ……ぎゃあああああ!?」
 満夜もアーサーに襲われる。
 「くっ、やむをえないな!」
 そるじゃ子が発砲する。
 「この状況、やったもの勝ちのようですね!
  こうなったらアーデルハイト様、
  ご本人にあんなことやこんなことをしてしまいましょう!」
 望が、アーデルハイトに迫る。
 「やめんか馬鹿者―!!」
 混乱の中、アーデルハイトは望と一緒に満夜もぶっ飛ばしてしまった。
 「きゃー、お仕置きするつもりがアーデルハイト様にお仕置きされてしまいました!
  でも、これはこれで♪」
 「ちょ、なんで私までー!?」
 
 「い、今のうちだ!!」
 ワレンティヌスは必死で逃げ出した。
 
 「ふぅ、危ない危ない。危うくバレンタインに出番が無い所だった……」
 そこに現れたのは、全裸に薔薇学マントの変熊 仮面(へんくま・かめん)であった。
 「おおっ! さすが聖ワレンティヌス様! なんと高貴な風格……」
 ありがたやーありがたやー、と変熊が手をすり合わせて拝み始める。
 「な、なんだおまえは!? 今、2月だぞ!?」
 「おお、なんというベタなツッコミ。さすがは聖ワレンティヌス様。
 恋愛に全く縁の無い坊さんの絞首刑日にいちゃついて、
 あわよくばお持ち帰りなんざ……今回ばかりは全面的に聖ワレンティヌス様が正しい!」
 「てめー、何言ってやがる!?」
 「しかし、多勢に無勢。いずれチョコも取り戻されてしまうでしょう。
  私に考えがあります。クックックッ……」

 変熊は、巨大鍋を用意して、チョコを溶かしはじめた。

 アーデルハイトが追ってきたところを、
 変熊がざばあ!! とチョコの鍋から現れる。
 「待っていたぞ! 哀れな資本主義の奴隷どもよ!
  私の美しき造形美と芳しい香り。完全なる美の前に改心するがよい!」
 「な、なんつーことしとるんじゃ!?」
 「あ、固まってきた……。
  ざんすか様!
  願わくばチョコの残り湯で私の等身大チョコを作ってください!
  さてみんなに送り返されるチョコは変熊入り? 変熊なし?」
 「わかったざんす!
  身体中にチョコぬってやるざんす!」
  ざんすかが変熊チョコを作り始めるが。
 「ハアハア……どうしたというのだ、呼吸が苦しく……」
 「以前、金粉を全身に塗ってまったく同じことになった奴がいるざんす!!」
 変熊は皮膚呼吸ができなくなって呼吸困難になったのであった。
 「ヒャッハァー! こいつが欲しけりゃエリザベートと交換だァ〜!!
  略奪する子は略奪しちゃうぞぉー!!」
 「ぎゃああああああ!?」
 そこに、鮪が復活して、ワレンティヌスに襲いかかる。
 「待ちなさい!」
 そこに、蓮実 鏡花(はすみ・きょうか)と、
 パートナーの剣型の機晶姫ディソーダー トリストラム(でぃそーだー・とりすとらむ)が現れた。
 「人は常に何かと戦っている。
  正義と悪は表裏一体であり、
  戦うという事は正義にも悪にも成りうると言う事。
  よって、戦いに正義や悪といった概念は存在しない……。
  確かにあるものは自らの正義の為に敵に立ち向かう心のみ!
  人、それを『勇気』と言う!!」
  鏡花が、トリスを構え、鮪に斬りかかる。
 「おいおい、鏡花。
  こいつはヤバいんじゃねーか?
  キーを使えよ鏡花。
  そうすれば俺が叩き斬ってやるぜ?」
 「ツインスラッシュ……セット!」
 鏡花がヒーローっぽく宣言すると、トリスが覚醒する。
 「キタキタキタキタキタァ!!!
  みなぎってきたぜェ!
  相手を叩き斬った時の感覚がたまらねぇよな?
  そう思うだろ? お前もォォ!?」
 サイコな感じになったトリスの攻撃で、鮪がぶっ飛ばされる。
 「グヒャッハアアアア!?」
 「ちょ! そこ折るなよ。中入ってたらどうするんだ!」
 鮪は変熊チョコに突っ込んでいき、一緒に鍋につかった。
 「よし、このまま固めてしまいましょう!!」
 鏡花は、変熊チョコに鮪を融合させた。