イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

結成、ガーディアンナイツ!

リアクション公開中!

結成、ガーディアンナイツ!

リアクション


ACT2 サンドタウン潜入


 サンドタウン。
 つい先日まではツァンダからやってくる商人やキマクに向かう巡礼者などの姿が多く見られたが、いまはその姿は見受けられない。
 まだ昼間だというのに通りには人の影はなく、町は暗い影に覆われていた。
 そんな町の入り口にある見張り台の上で暇そうに椅子にもたれ掛かっていたミスターカメレオン一味の見張りが妙な物音を聞きつけて遠方へと目を向けた。
 見るとそれはバイクに乗ったふたりの人間だとわかった。見張りはかったるそうに椅子から立ち上がると得物としているショットガンを手に取って下へと降りていく。
 バイクに乗ったふたり――サルヴァトーレとヴィトは町の入り口まで来ると乗り物を止めて、見張りへと近づいていく。
「なんだぁ、おめぇ達は?」
 見張りは自分の方へと向かってくるサルヴァトーレとヴィトにそう言った。
 迫力のある相手なので、見張りは少し腰が引けている。
「俺はパラ実のサルヴァトーレ・リッジョという。実はミスターカメレオンとかいう奴に話があってここまできた。奴はいるか?」
「うちのボスに会いたいって? ケッ、バカいうんじゃねぇ! 素性のよくわからねぇ奴をそう簡単に会わせられるわけねぇだろうが!」
「……サルヴァトーレ様はミスターカメレオンがいるかと聞いています。あなたはその質問だけに答えなさい」
「なにぃっ!?」
「やめろ、ヴィト。少なくともこいつもパラ実を名乗るものだろう。いまは無駄な争いをしている場合じゃない。事態は急を要するんだ。この町にミルザムの私兵どもがやってくるかもしれないんだぞ?」
「ああっ? なんだって?」
「そいつらの言うことは本当だぜ」
 と、そこへ今度はロッテンマイヤーたちがやってきた。
「ミルザムがさぁ、ツァンダで自警団の募集とかやってんだよねぇーっ。それでなんかサンドタウンにそいつらが来るらしいよぉ。ヤバイんじゃない?」
「クララの言うとおりだ。敵は力ならミスターカメレオンより上かもしれないんだぞ」
 ロッテンマイヤーと一緒にやってきたクララとチネッテも言う。
「くっ――ギャハハハッ!」
 と、話を黙って聞いていた見張りは突然笑い出した。
「あんっ!? なにが可笑しいんだてめぇッ!」
 ロッテンマイヤーが青筋を浮かべながら見張りに詰め寄る。
 すると見張りは笑いをかみ殺しながら言った。
「おめえら、揃いも揃っておもしれぇこと言うなぁ! そんな冗談言う為にわざわざここまできたのかよ!」
「チッ、冗談なんかじゃねぇんだよ!」
「へへっ、じゃあ何か証拠でも見せてみろよ。そしたら信用してやってもいいぜ?」
「証拠だと――んじゃあ、これでどうだ?」
 そう言うとロッテンマイヤーはどこから手に入れたヴァンガードエンブレムを取り出し、それを銃で撃ち抜いた。
「どうだ? 少なくともこれであたい達が敵じゃないことくらいはわかっただろ? 敵じゃねぇ奴が言ってることくらい信用しやがれ!」
「うーんっ、まあそこら辺はわかったがよ。それだけで信用しろって言われてもなぁ――それにそんなことなら俺だって出来るぜ」
 そういうと見張りは地面に落ちたエンブレムに向かってショットガンを撃ちはなった。「――どうだ? 俺の方がすごいだろうが!」
「……悪いがそんなことはどうでもいい。ミスターカメレオンはいるのか? いるのならば会わせろ」
 サルヴァトーレが少し語気を強めて見張りに言う。
 それに少し怖気づいたのか見張りはようやくミスターカメレオンのことについて話始めた。
 見張りの話によりミスターカメレオンがまだこの町に帰ってきていないことを知った5人。
 だがどうもこの見張りの男に気に入られたらしく、5人は酒場へと誘われた。
 5人はこの男に半ば強引に連れられる形で酒場へと向かう。
「まあ、シケた酒場だけどよ。ここは俺が奢るから勘弁してくれ。それにボスが帰ってきたらおまえ達のことは俺が紹介してやるよ。ボスは気前がいいところがあるから、きっとおまえ達も仲間に入れてくれるさ」
 そう言って見張りは酒場のスウィングドアを押し開ける。
「おうっ、オヤジ。こいつらに酒を――って、んっ?」
 と、見張りは店に入るなり顔をしかめた。
 それはカウンター席に見慣れない童顔の男が座っていたからだ。
「おいっ、てめぇ。どこから入ってきやがった!?」
 見張りはその見慣れない男に語気を強めてそう訊いた。入り口は自分が見張りをしていたが、こんな男は見なかったからだ。
「見ての通りのただの旅人です」
 だがまったく怯むことなく、そう受け答えをするこの男の正体。
 それはエンリルの依頼を受けて風の如くサンドタウンにやってきた独立傭兵団『風の旅団』の団長・ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)その人であった。
 だがそれを知るものはこの酒場には誰ひとりとしていない。
「チッ、旅人か。ネズミみたいにどこからか入ってきやがって……いいか、あんまり長いことココにはいないこった。わかったら、さっさとそこをどけ!」
「……仕方ありませんね」
 見張りの言葉に今は従い、ウィングはカウンターからテーブル席へと移る。
「おいっ、オヤジなにボヤっとしてやがる! 早く酒だッ!」
「……わかってる。そう急かすな」
 酒場のオヤジはそういうとグラスを出して、その中にウィスキーを注ぎこんでいく。
「へへっ、じゃあここは乾杯といこうや」
 グラスをつかみそういう見張りの男。
 と、その時見張りの男が持っていた無線機に通信が入った。
 男は舌打ちをしながらグラスから無線機へと持ち替える。
「どうした?」
 そして見張りの男がそう訊ねると無線の向こうから、他の男が言った。
 人質のいる屋敷の前に国頭という奴が来ていて、ミスターカメレオンに会わせろと言っていると言う。
 少し厄介そうな相手なので集まって欲しいということだ。
「わかった。いまからそっちに向く」
 見張りはそういうと無線を切って、5人を見つめる。
「ボスに会いたいという奴が他にも来てるらしいが、おまえ達の知り合いか?」
 5人は首を傾げる。
「……そうか、なんだか今日は変わった奴らが多く来るな。とりあえず俺は屋敷前に向かうぜ。そうだ、おまえ達も付いてこい。何かあったら働いてもらいたいしな」
 見張りにそう言われ、特に断る理由もなかった5人は見張りと連れ立って酒場を後にし、屋敷前に向かって歩き出す。
 そんな見張りと5人が見えなくなった頃、町へと近づいてくるある一団。
 それはツァンダ公社の商隊を装ったガーディアンナイツたちだった。