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結成、ガーディアンナイツ!

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結成、ガーディアンナイツ!

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ACT5 人質救出作戦2


 アルファチームとして動くガーディアンナイツメンバー(ローザマリア、グロリアーナ、玖朔、ハヅキ、アルフレート、テオディス、トライブ、八神 誠一(やがみ・せいいち)鬼崎 洋兵(きざき・ようへい)鬼崎 朔(きざき・さく)スカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)アンドラス・アルス・ゴエティア(あんどらす・あるすごえてぃあ))は3つに分散した人質グループで東に向かっているグループを追っていた。
 人質を連れた護衛たち――その中にはロッテンマイヤーたちの姿もある――は新たな軟禁場所である建物に到着すると人質たちを中へと押し込んでいく。
 そしてその周辺をぐるりと囲み、警備についた。
「ふむっ、おじさんの見立てによると敵の数がさっきより少ないな」
 物陰から鋭い眼差しで敵の様子を見つめながらそう言うのは鬼崎洋兵。
 タバコを咥えてはいるが火はついてない。煙りが出てしまってはさすがに敵にバレてしまうからだ。だがどうも口元が寂しいのでタバコを咥えしまうのは愛煙家の性というモノだろう。
「……内部で見張りについたものがいるのでしょう」
 と、そんな洋兵の言葉に答えたのは鬼崎朔。
 銀色の長い髪を後ろで纏め、鋭い目つきをした彼女は洋兵の義娘でもあった。
「まずは中に潜入して人質を解放するのが先決ですかねぇ」
 そう提案するのは八神誠一。
 一見すると優しい目つきをした普通の少年だが、その瞳の奥にはどこか底知れぬ闇のようなものが漂う。
「ふんっ、わざわざ身を隠して潜入することもないだろう。見張りどもを皆殺しにして堂々と入っていけばいい」
 と、八神の提案に否定的な言葉を投げかけるのは朔のパートナー、アンドラス・アルス・ゴエティア。
 悪魔のことが書かれた魔導書が少女の姿に化身したものであり、異常に白い肌と長い黒髪のコントラストが人の目を惑わす。
 そんなアンドラスに向かって朔は言った。
「……そんなことはしない」
「ふん、どうかな。相手は貴様を殺そうとしてくるのだぞ。そんな相手に手加減などできるのか? 情けなどかけたところでなんになる?」
「けっ、喧嘩はいけないのであります! みんな笑顔が一番なのでありますぅ〜っ!」
 と、険悪なムードになった二人の間に割って入ってきたのは朔のもうひとりのパートナー、スカサハ・オイフェウス。
 金色の長い髪をした少女型機晶姫である。
「そうですね、スカサハ。今は喧嘩をしている時じゃない」
 朔はそう言うと人質が閉じ込められている建物を見つめた。
「よし、それじゃあ人質の救出開始よ。私たちは援護に回るわ。上手く潜入して人質を解放したら連絡を頂戴ね」
 ローザマリアはそう言うと、得物のスナイパーライフルを持って狙撃ポイントへと動き出す。
 パートナーのグロリアーナは合図があるまで待機。
「わかった、俺たちは前衛に出て人質の救出にあたる――行くぞ、ハヅキ」
「ハイ」
 玖朔とハヅキのコンビはそういうと前に出て行く。
 それに続くように他のメンバーも動き出した。
「ヘッ、来るなら来て見やがれミルザムの犬ども――おい、てめぇらもしっかり見張っとけよ!」
 周りに向かってそう激を飛ばすロッテンマイヤー。だが彼女は周囲で息を潜めながら行動しているガーディアンナイツの存在に気づいていなかった。
 だがロッテンマイヤーのパートナー、チネッテだけは獣人特有の感覚の鋭さで少しの妙な物音に気付く。
「んっ? 向こうの方で何か物音がしたが――」
 チネッテそうつぶやきながら慎重に歩みを進め、建物の角を曲がった。
「――くそっ!」
 と、そんなチネッテの目に飛び込んできたのは気絶して伸びている何人かの見張りの
男。
 すぐさまチネッテは敵襲を告げる声を上げた。
「チッ、気付かれちまったみたいだな」
 建物の中に侵入していた洋兵は眉をしかめる。
「早く人質のいる部屋をみつけないと――!」
 朔はそう言って建物の中を探し回る。
「このやろうっ!」
 と、角を曲がったところで隠れていた男が銃を突き出して現れた。
 朔は間一髪のところでしゃがみ込み、銃撃をかわす。そして男に雅刀の峰打ちを食らわせて気絶させる。
「――ウオらぁっ!!」
 だがそんな朔の後ろからさらに別の男が鈍器を振りかざし襲い掛かって来た。
「朔様には指一本触れさせないのでありますッ!」
 と、叫び声と共に加速ブースターで突っ込んできたのはスサカハ。
 がら空きだった男のボディに金砕棒を叩き込む。男はその一撃で壁まで吹っ飛んで気を失った。
「ありがとう、スサカハ」
「えへへっ、ご主人様をお守りするのはメイドとして当然であります!」
 朔とスサカハはそう言葉を交わすとまた人質たちの探索をはじめる。
「……ふん、なぜこの人間たちを殺さないのだ?」
 と、アンドラスが気絶している2人にトドメを差す。
 2人の断末魔の叫びを聞きながら、アンドラスはその口元に初めて笑みを浮かべた。
「ここかな?」
 人質を探していた八神は扉をあける。
「……正解みたいだねぇ」
 するとそこには数人の女性たちが部屋に押し込まれていた。
 女性達はひどく怯えた顔をしていたので、八神は笑顔を浮かべる。
「大丈夫です。僕は皆さんを助けに来たんですよ」
 そしてそう言って部屋に足を踏み入れた途端、八神は頭に銃口を突きつけられる。
「へへへっ、残念だったな。騎士さんよぉ」
 ドアの後ろに隠れていた男は、勝ち誇った様子で八神にそう言った。
 まさに絶体絶命という状況だったが、なぜか八神は口元に笑みを浮かべたままゆっくりと男の顔をみた。
「――それはどうですかねぇ?」
「うっ……!」
 ぞくりっ、と男は背中に寒気を感じ一瞬動きが止まる。その一瞬を八神は見逃さなかった。
 八神は日本刀の形をした光条兵器を生じさせると稲妻のような一閃を放つ。
「あっ、えっ、があ……ッ!」
 男は自分が斬られたこともよくわからないまま鮮血を吹きだして、床に倒れ伏した。
「死ぬ覚悟くらい当然できてましたよね?」
 と、男に向かってそう言ったのは八神。
 だがすぐにそんな男には興味を無くし、ドアから顔を出して仲間を呼んだ。
「おーいっ、皆さん。人質の人達がいましたよぉ」
 その声に内部の敵と戦っていたメンバーたちが敵を倒して一斉に集まってくる。
 そして人質の無事を確認すると皆は安心した。
「ではここから脱出するのであります!」
 と、スサカハは意気込んで表へ出て行こうとする。
「まあ、待て。今出て行ったら待ち受けている敵にみんなやられちまうぞ?」
 そんなスサカハの首根っこを掴んで止めたのは洋兵。
「その通りだ。内部に突入してこないということはこの建物はいま敵に囲まれている可能性が高い。だが外にはローザマリアがいる――」
 そう言うと玖朔は携帯を取り出して、表で待機するローザマリアへ連絡を入れた。
「ハハハッ、さあ出て来いガーディアンナイツゥッ! でてこねぇと人質もろとも皆殺しだぜっ、ヒャッハァ!!」
 テンションの上がったロッテンマイヤーが蛇節槍の形をとっている光条兵器を振り回しながら、建物の中のガーディアンナイツたちに叫ぶ。
 洋兵や玖朔の予想通り、建物は裏も表も敵がぐるりと囲んでいた。
「ぐわっ――!」
 と、ひとりの男が突然声を上げて倒れた。それを皮切りに建物を囲んでいた敵は倒れていく。
「なんだ! どうなってやがるッ!?」
 ロッテンマイヤーは歯を剥きだして周囲を見回す。だがどこにも敵の姿は無い。
「……よし――次」
 敵を倒していたのはローザマリアだった。
 玖朔から人質を確保したという情報を聞くと、敵を見下ろす高い位置に身を隠していたローザマリアはスナイパーライフルで正確な狙撃を始めた。
 バレルには底を切り抜いたペットボトルを被せて簡易サイレンサーとして活用しているので、敵にはまだその存在を気付かれていない。
 ローザマリアが狙撃スコープを覗き込み、トリガーを引くと敵がまたひとり倒れた。
 見えない敵の攻撃に、建物を囲んでいた相手は陣形を崩す。
 それをみたローザマリアはすぐさまパートナーに連絡を入れた。
「出番よ、グロリアーナ」
『うむっ、わらわにまかせよ!』
 そういうとグロリアーナとの通信は切れた。
 そして――。
「遥か向こうを眺むれば、この世は辛き事ばかり――罪なき民の生き血を吸う悪党ども!その方らの悪事も今日限りだ!」
 そんな口上が周囲に高らかに響き渡り、身を潜めていたグロリアーナが悠然と敵に立ち向かう。
「……グロリアーナったら」
 それを見たローザマリアは呆れながらも、スナイパーライフルでグロリアーナを援護するために狙撃スコープを覗き込む。
「なっ、なんだてめぇは? フザけてんのか!?」
 変な口上と共に現れたグロリアーナにロッテンマイヤーも困惑気味のようだ。
「ふっ、フザけておるのはその方らであろう。だが天意に従いて是よりこのエリザベス1世が成敗仕る――迷わず地獄に堕ちるがよい!」
 と、グロリアーナは地を蹴って一気に間合いを詰めるとブロードソードでロッテンマイヤーに斬りかかる。
「チィっ、ミルザムの犬如きにこのあたいが負けるかよォッ!」
 その一撃をロッテンマイヤーは蛇節槍で受け止めた。
 一方、外で騒ぎが起こっているのを知った内部のガーディアンナイツたちはというと――。
 今がチャンス――そう意気込んで、裏口から飛び出した。
「うわぁっ!?」
 表の騒ぎに気を取られていた裏口を守る敵たちは、突然飛び出してきたガーディアンナイツたちに怯む。
 その隙をついて敵を片付けると、人質達を裏口まで誘導。安全な場所へと非難させることにした。
「安全な場所までは俺が警護して行こう」
 そう言うのはトライブ。
「ひとりでは心配だ。私とテオも一緒に行こう」
 そんなトライブにアルフレートは言った。
 こうして三人は人質を守りながらこの場から離れていく。
「さて、俺は表に出てローザマリアたちがこの場を離脱するのを援護しに向かう。人質を助け出すという目的は達した――もうここに長居は無用だ。他の皆もこの場から離れてくれ」
 玖朔はそういうとハヅキを連れて表に向かう。
「かっこいいねぇ。じゃあこのおじさんもちょっとかっこいいところ見せちゃおうかな?」
 と、洋兵はそういうとそんな玖朔たちの後を追って表へ向かって行った。
 残りメンバーたちもそれに倣って表へと飛び出していく。
「ヒャッハー! ここはパラ実生の縄張りだぁ! てめぇら余所者がでしゃばるこっちゃねぇんだよぉぉぉ!」
 表側ではロッテンマイヤー率いる部隊とローザマリアたちが戦っていた。
 ローザマリアはグロリアーナを援護してライフルで敵を倒してはいたが、やはり数が多い。
 ひとりで大勢を相手にしているグロリアーナもだんだんと辛くなってきていた。
「このままじゃ、マズイ――!」
 ローザマリアがそう思ったとき、裏口から表に飛び出してきたガーディアンナイツたちがロッテンマイヤーたちを攻撃する。
「なにっ!?」
 不意をつかれた形になったロッテンマイヤーの仲間たちは次々と倒れていった。 
 そしてその隙に玖朔はローザマリアとグロリアーナに連絡し、撤退を促した。
 二人はそれを了承し、この場を離れていく。
「まちやがれッ!」
 ロッテンマイヤーがそれを止めよとするが、玖朔がアーミーショットガンを撃ち放ちその進行を止める。
「自分たちも脱出しましょう――スカサハっ、あれを!」
 ザコを相手に立ち回っていた朔はスカサハに向かってそう叫んだ。
「了解であります! メモリープロジェクター起動!」
 スカサハは主人の命令を理解して、メモリープロジェクターを起動。すると巨大なドラゴンの幻影が投影され、敵は思わず怯んでしまった。
 その隙をついて残りのメンバーたちもこの場から離脱する。
 こうしてアルファチームは人質の救出に成功した。