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隠れ里の神子

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隠れ里の神子

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「そろそろ、私たちも参戦しますか」
 島村 幸(しまむら・さち)は服装を整えると、隣にいた彼女のパートナーであるアスクレピオス・ケイロン(あすくれぴおす・けいろん)を見た。
「ドンパチするのはて鏖殺寺院だけでしろよー。なんで静かに暮らしている獣人まで巻き込むんだぁ? 神子かなんだかしらねぇーけどよぉ……。命ってそんなに軽いもんだったかぁ?」
 アスクレピオスはゴブリンたちの暴れている姿を見て、溜め息をつく。
「さて、どうしましょうか……」
 幸は目の前に広がる光景を見据えて、考え込む。
「こんな案はどうかな? 獣人たちを囮にして、一掃するの」
 茅野 菫(ちの・すみれ)は隣にいた幸に提案する。菫のパートナーであるパビェーダ・フィヴラーリ(ぱびぇーだ・ふぃぶらーり)と馬にまたがっている相馬 小次郎(そうま・こじろう)は、それを黙って聞いていた。
「それはあまりに危険すぎますよ。ここにこれだけの生徒がいるなら、そんなことをしなくても、十分勝算はあります」
 幸は菫たちに微笑みかけると、アスクレピオスを見やった。
「大丈夫だよ。俺たちは絶対勝てる。作戦がなくても、能力で勝てるって!」
 アスクレピオスは白い歯を見せて笑うと、幸とともにゴブリンたちの中へと消えて行った。
「……協力する……ということね……」
 菫は再びぽつりと呟くと、パビェーダと小次郎を見た。
「わしは取り敢えず馬に乗っている利点を活かして、射撃の光や音に注意してレティーフのいる場所を突き止めるとしよう。これだけ、ゴブリンたちがひしめき合い、砂煙があがっていては、同じ目線では探すことが困難だからな」
 小次郎はそう言うと、馬首を巡らし、ゴブリンたちの方へ姿を消した。
「それじゃあ、私たちも行くとしますか。いい? 菫」
 パビェーダは菫の顔を覗き込んで問う。
 自分の作戦が却下されたことがショックだったのか、菫は黙ったままだった。
「ねぇ、菫、聞いてるの?」
「聞いてるわよ。さぁ、あたしたちもみんなと協力して、ゴブリン一掃するわよっ!」
 菫はそう言うと、にかっと笑い、ゴブリンたちの中へと消えていく。慌てて、パビェーダも菫の後を追った。



「蒼い空からやってきて、森の静寂護る者! 仮面ツァンダーソークー1!」
 風森 巽(かぜもり・たつみ)は決めゼリフと決めポーズをしっかり決めると、「とぅっ!」と言い、ゴブリンたちと戦闘を開始した。それを見ていた彼のパートナーであるティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)フゥ・バイェン(ふぅ・ばいぇん)も後に続く。
「獣人さんたちを密猟なんて絶対に許さないんだよ!」
 ティアは襲い来るゴブリンにそう言うと、魔法の詠唱を始めた。
「いっくよ〜! ビリビリだぁ〜!」
 彼女は詠唱が終わると、サンダーブラストを解き放つ。
 ゴブリンはライフルからサンダーブラストを受け、感電し、その場にばったりと倒れた。
「いっちょ上がり♪」
 ティアは誇らしげに胸を張った。
「密漁だぁ!? 獣人として黙ってなんかいられねぇじゃんかよ!」
 フゥはゴブリンたち目がけて、リターニングダカーを投げつけた。ダガーは数匹のゴブリンの腕に傷をつけ、フゥの手元に戻ってくる。
「密猟なんてナンセンスだね。そんな無駄なことよか、もっとやることあるだろっつーの!」
 フゥはそう言うと、再びダガーを投げた。本来、彼はプットの救出に向かおうとしていたのだが、この状況下でプットを探すのは不可能と判断し、取り敢えず、目に映ったゴブリンたちと戦うことにしたのだ。
「フゥさん、カッコイイ! 俺は仮面ツァンダーソークー1! カッコ良く行かねば! とぅ!」
 再び、巽は決めポーズを決めた。そして、
「チェンジ! ライトニングハンド! ブラスター発射!」
 と吠えると、ゴブリンたちに一斉に攻撃をしかける。
 その光景を視界の端に捉えた菅野 葉月(すがの・はづき)と彼女のパートナーであるミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)は、一瞬顔を見合わせた。
「負けてられませんっ!」
 叫ぶと同時に葉月は雷術をゴブリンに向かって放った。
「ワタシも負けないもんねっ!」
 ミーナも葉月に倣って、氷術を解き放った。氷の刃がゴブリンに襲い掛かる。
「やりますね! ミーナ!」
「葉月こそ!」
 2人は顔を見合わせ、くすっと笑うと、2人同時に魔法を解き放った。
 氷の刃がゴブリンに突き刺さり、そのすぐ後に雷術が氷を伝って、ゴブリンへとダメージを与える。ひとたまりもなく、ゴブリンは息絶えた。
「僕たちを敵に回すとどんな目に遭うか、これでわかったでしょう?」
 葉月はにやっと笑って、ゴブリンを見回したのだった。



「全く、珍しい獣人と戦えると思って、ここに来たっていうのに、戦う相手がゴブリンとは、しけたもんだな……」
 神名 祐太(かみな・ゆうた)は1人ごちながら、向かい来るゴブリンに雷術や氷術を放っていた。
 身のこなしも軽く、ゴブリンなど敵ではないと言いたげな表情を浮かべ、涼しい顔をして確実に1匹ずつしとめていく。
「カード、ダイス、etc……。まぁ、何だろうと俺が勝つけどな。勿論、この戦いも」
 ゴブリンたちには聞こえないほど、小さな声で祐太は言った。
「それにしても、数が多いなー……。大分、減ってはいるけど……」
 辺りを見回す限り、ほとんどがゴブリンで埋め尽くされている。時折、怒号と悲鳴が聞こえたが、味方のものなのか敵のものなのか、いまいち判断がつかなかった。
「俺たちって勝ってるよな……」
 ふと疑問を口にする。周りに聞こえるか聞こえないかの声だったのだが、たまたま近くにいた高月 芳樹(たかつき・よしき)は、
「勝ってるぜ!」
 と親指を立てて、笑って見せた。その隣では彼のパートナーであるアメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)がゴブリンの攻撃を間一髪で交わしているところだった。アメリアの美しさに一瞬祐太は目を奪われる。
――いかんいかん。戦いに集中しないと。
「勝ってるなら、いいんだどさ」
「まぁ、相手は鏖殺寺院って言ったって、正直強いのはレティーフだけだろ? ゴブリンなんて雑魚も同然! 俺たちが勝って当たり前!」
「そうね。でも、数では五分五分と言ったところじゃないかしら?」
 アメリアはそれだけ言い残すと、ゴブリンに向かって走り出す。それを確認すると芳樹も共に走り出した。
「アメリア! ムリはするなよ!」
「勿論! この程度のゴブリン、わけもないわっ!」
「頼もしいこった! 行くぞ!」
 芳樹はアメリアをちらりと見てから、ゴブリンの懐へと飛び込んだ。