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隠れ里の神子

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隠れ里の神子

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「というわけで、プットを救出しなきゃいけなくなったわけだが、こうもタイミング良く、レティーフがお出ましとは驚いたな」
 梓は溜め息をつき、レティーフたちを見た。そこには数は減ったものの、多くのゴブリンとプットを抱きかかえたメイコと彼女のパートナーのマコトがいた。
「さぁ、プットを返して下さいっ!」
 エドはびくびくと怯えながらも、メイコに言った。
「渡せないの! だって、そんなことしたら、私たちが殺されちゃう!」
 メイコは口から出まかせを言った。しかし、彼女にはこのハッタリがきくことがわかっていた。どう見たって、自分たちが鏖殺寺院に見えないことはわかっていたのだ。
「助けてはもらえないか?」
 マコトの懇願するような言い方にエレンはそっと手を差し伸べた。
「こっちに来て!」
 レティーフは突然の寝返りに驚いたものの、彼女たちが鏖殺寺院であるとこを伏せている以上、仕方のない状況だと思い、怒鳴りたいのをぐっと堪えた。
「これで隠れ里には案内してもらえるけれど、まずは鏖殺寺院を倒すことから始めないといけないようだな!」
 玲はそう言うと構えた。それに合わせて、獣人たちを守る側と戦闘に加勢する側がさっと別れる。
 そして、その一部始終を近くで見ていた生徒が数名いた。
 葉月 ショウ(はづき・しょう)は隠れ里に入る為には獣人との戦いもじさない考えだったが、獣人はどうやら別の生徒が説得してくれたようで、隠れ里には案内してくれると言っている。しかし、神子を守れるだけの強さがなければ、隠れ里には入れられないとも言っているのだ。こうなれば、自分の出番だと思った。元々、彼は強さを示す為、獣人と戦うつもりでいたのだ。その相手が鏖殺寺院になっただけのことだ。
 ショウのパートナーである吹雪 小夜(ふぶき・さよ)もショウの考えには賛成で、鏖殺寺院と戦うことを決めていた。
「さぁ、行くぞ!」
 ショウの言葉に小夜は「はいっ☆」と答えると、鏖殺寺院たちの前へと躍り出た。
「久々の戦闘だよな〜。まっ、気楽に行こうぜ!」
「うん! やっぱり、身体はしっかり動かさないとなまっちゃって良くないもんね!」
 そう言って、2人はレティーフの前に立ちはだかるゴブリンたちと対峙する。
 先制攻撃をしかけてきたのはゴブリンの方だった。それを素早く交わすとショウは一撃を放つ。それに続いて、小夜もゴブリンに攻撃を繰り出した。
 それを傍目に見ていた白砂 司(しらすな・つかさ)と彼のパートナーであるサクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)は加勢することにした。司は後ろに控えている獣人たちに、
「俺たちが信頼できないなら、それも仕方がない。だが、俺はお前達獣人を信じることにしている。……サクラコのせいでな」
 と言い残し、戦場と化した隠れ里の入り口へと消えて行った。それをサクラコは走って追う。
――正面衝突が、必ずしも無策とは限らない。一度間違えれば無謀となることは、確かだがな……。
 司は内心多少の不安は感じてはいたものの、それを悟られないようにサクラコに「大丈夫か?」と問いかけた。
「そりゃ、私はどってことない三毛の猫ですけど。彼らと同じ『獣人』なんですからっ! 大丈夫ですっ!」
 サクラコはぷくっと頬を膨らませ、司を見上げた。
「それでは戦いに行くとするか。危なくなったら、すぐに逃げるんだぞ?」
「司こそ、ドジらないで下さいよ?」
 サクラコはにっこり微笑むと、ゴブリンたち目がけて走り出した。
――最近のテロでジャタの森が破壊されてるのはホント許せないんですから! しかも、毛皮狙いだなんて許せません! この私がいるからには、好きなようにはさせないんですから!



 銃声が響き渡っていた所為か、次第に隠れ里の前には生徒たちが集まり始めていた。
 愛沢 ミサ(あいざわ・みさ)もそのうちの1人だった。彼女は隠れ里に一体どんな古い文化が残っているのかが気になって、ジャタの森へやって来ていた。そこで乱戦が繰り広げられている。加勢しない手はなかった。人質を助けたいと思っていたが、この乱戦では人質がどうなっているのかはわからない。しかし、何もせずにこの場に佇んでいるだけなんてことは出来なかった。
「サンダーブラストっ!」
 ミサは大きな声で詠唱の終わった魔法を解き放つ。近くにいた数匹のゴブリンたちは雷に打たれ、のたうった。しかし、ゴブリンもただやられているわけにはいかない。
「こざかしいっ!」
 ゴブリンは叫ぶと同時にライフルを撃つ。その弾をミサは間一髪左に避けた。さすがにライフルの弾の速さにはミサも舌を巻いた。
――このまま、1人で戦うのはツライな……。
 そんなとを思っていた時、
「助太刀するぜっ!」
 とラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)がミサの隣に走って来た。
「そんじゃあ、行くかな!!」
 言うが早いか、ラルクは近くにいたゴブリンを素手で殴りつける。その威力は高く、ゴブリンたちはその場に倒れ伏していく。
「ったく、こういう場所に限って、悪役とかそういう奴がいるんだよな」
「そうみたいですね」
「って、お前、ケガしてねーか?」
「大丈夫! これくらい!!」
 ミサはそのまま光術を放った。眩い光のすぐ後に爆発音が聞こえる。
「あんまり、ムリすんじゃねーぞ!」
 ラルクはゴブリンの鳩尾に強烈なパンチを入れると、身を翻した。
――人質は誰かが助けてるだろうから、俺はコイツらを徹底的に叩きのめして、レティーフをしめるとするか!
「テメェらは邪魔だ! すっこんでろ!!」
 ゴブリンに向かって吠えると、ラルクの回し蹴りがゴブリンの背中目がけて放たれた。



「キミには絶対に負けないよ!」
 攻撃をしかけてくるゴブリンたちに如月 玲奈(きさらぎ・れいな)はチェインスマイトを繰り出した。
「ふんっ! お前みたいな貧乳に倒されるわけないだろうが!」
 ゴブリンはいけしゃあしゃあと言い放つとライフルの引き金を引いた。しかし、玲奈には当たらない。
「今、貧乳って言ったわねぇぇぇぇっ!」
 玲奈は顔を真っ赤にし、一瞬の隙もなく、チェインスマイトを連続で繰り出した。その速さにはゴブリンもついていくことが出来ず、あっという間に地に倒れ伏した。
「……また、貧乳って言われた……」
 半べそをかきながら、玲奈は襲い来るゴブリンたちに立ち向かうのだった。