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【十二の星の華】マ・メール・ロアでお茶会を

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【十二の星の華】マ・メール・ロアでお茶会を

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第3章 ティセラへ質問を

「……聞きたい事が3つある」
 茶会が始まって、幾分か経った頃、グレン・アディール(ぐれん・あでぃーる)が問いかける。
「答えられる範囲であれば、お答えしますわ。勿論、他の方からの問いも」
 ティセラは笑みながらグレンへと答えると、他の学生たちも見回しながら、そう告げた。機会を見計らっていた学生たちは彼に続こうとやや身構える。
「1つ……十二星華が扱う星剣……あれは単なる兵器なのか? ……兵器以外の役割があるじゃないか?」
「答えられませんわ」
 1つ目から口を閉ざすティセラ。
 グレンは本当に答えてもらえるのだろうかと思いつつ、再度口を開く。
「2つ……リフル……山羊座の十二星華にも訊いたんだが……本当に破壊された星剣を修復させる方法は存在しないのか?」
「……ありませんわ」
 首を振りながら答える。
「そうか。最後だ……ティセラが今、最も危険視している存在はなんだ? ……前に『シャンバラをどんな脅威にも屈しない国にする』と言っていたな……脅威となる存在が知っているからあんな事を言ったんじゃないのか?」
「それは、皆さんもご存知の『鏖殺寺院』ですわ」
 ティセラが答えると、グレンは「ありがとう」と告げる。
(正直、色々と判断し辛い奴だな……)
 答えた様子と今までの彼女とその仲間である2人のことを思い出しながら、グレンは思う。
(非道な奴かと思えば……そうでない一面も見せる……よく分からない3人だ……。まだ味方になっても良いとは思えないが……かと言って俺から敵になろうとも思わないがな……)
 そんなこと思いながら、今一度、ティセラを見遣った。
「ティセラさん、私も1つだけ伺いたい事があります」
 グレンの隣に座っていた、彼のパートナーのソニア・アディール(そにあ・あでぃーる)が言う。
「ええ、どんなことかしら?」
「もしも……の話ですがミルザムさんが女王に即位した場合、貴女はどうしますか?」
 訊ねてくるソニアに、ティセラは1拍置いた後、ゆっくりと口を開いた。
「この、マ・メール・ロアの力を行使しますわ」
 笑顔で、武力行使も辞さないと告げる。
「あ、ありがとうございます」
 ティセラの笑顔に気圧されて、ソニアは身を竦めながら、ぺこんと頭を下げた。
「どういたしまして」
 答えて、ティセラは金の杯へと手を伸ばすと、一口、紅茶を口にする。
 それから「他には?」といった視線を学生たちに向けた。
「百合園の桐生円と申します、ボクはまだどっちにつくかを決めかねております。ですから今回、いい判断材料になればと思いまして、今回のお茶会に参加させていただきました」
 立ち上がるなり、一礼しながら、そう告げる円。挨拶と共に、持参したケーキと茶葉を差し出す。
 通りかかった、給仕をしている永太がケーキを切り分け、差し出された茶葉で淹れたお茶と共に、ティセラの前に出す。
「まずは、パラ実でもらったんだよ、これ本物?」
 持参していたモヒカンがティセラの義理チョコだと告げたチョコを取り出しながら、円は訊ねる。
「どうかしら?」
 ティセラは小首を傾げながら、曖昧に答える。
「それから本題。誰かが消していかない限り。このシャンバラって国は意図的に消されている情報が多すぎると思うんだ。これじゃぁさ、自分の目で見たこと意外は本当に信用できないと思うんだがねぇ」
「見聞きしたことを信用するのは良いことだと思いますわ」
「だって、まだ気になるってるんだろ? パッフェルくんもティセラくんもね。信頼して、裏切られたと思ったからこそ、今の行動があるんじゃないの?」
 頷くティセラに、円は追及するような言葉を投げかけた。
「……そうかも知れません。だからこそ、わたくしは裏切らない女王になりたいのですわ」
 黙するかと思いきや、頷いて、そう答える。
「そう。ぼくらはね、ティセラくんやパッフェルくんの女王への感情をさ、利用されてるんじゃないかと少し心配なんだよねぇ」
「心配してくださるのですか。ありがとうございます。けれど……利用などされてませんわ」
 そう告げるティセラに、円は「参考になったよ」と座る。
「ティセラ様の建国はエリュシオンと共に行われるらしいんですがぁ〜、シャンバラが強くなりすぎるとぉー、エリュシオンから止められるんじゃないでしょうか? 普通に考えるとエリュシオンの属国扱いになると思うんですがぁー。
 ティセラ様は女王になるというよりもぉ〜、前女王への感情を原動力にしている気がしますの。私はあの人のようにならないとねぇー、まだ前女王の事が気になってるんじゃないですか?」
 円の隣に座っていたオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)が、訊ねる。
「その感情が失望感、とでも言うのでしたら、否定はしませんわ」
「そして、その感情が利用されているんじゃないですか?」
 答えるティセラに、オリヴィアもまた、円と同じことを訊ねた。
 信じていたからこそ、裏切られたときの失望感はすごいものになるのだ。
「利用などされていませんわ」
 ティセラは先ほどより強く否定し、オリヴィアにそれ以上深いところを探られてしまわないよう、すぐさま他の学生へと別の質問はないかと視線を向ける。
「多くの血と命を失った原因であるあなたを今も許し難いと思っています。ですが、それとは別に真実は知っておかないとはいけないと考え、ここに来ました。
 ヴァイシャリーの舞踏会であなたが言いました『アムリアナはわたくし達十二星華を捨て駒のように扱った』……これはいつ、どこで、どのような形で行われたものなのか、具体的に話していただけないでしょうか?」
 ヴァイシャリーで購入してきたクッキーやマカロンを差し出しつつ、ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)が訊ねる。
 差し出されたクッキーやマカロンは、給仕をして通りがかった恭司が封を開け、ティセラが取りやすい場所を中心に、テーブルの各所へと並べられていく。
「全てにおいて問題のない善き人というのはありえません。また、十二星華に関する当時の資料が隠匿されたかのごとく見つからない等、不可解な点が数多くあります。
 ですから私は、悪かった部分は悪かったとして、真実の女王の姿を知りたいのです」
 補足するように告げれば、ティセラはゆっくりと口を開いた。
「アムリアナは……、わたくしを始め、セイニィやパッフェルたち、戦死した十二星華の遺体を野ざらしにしましたの。それを回収したのはエリュシオンでしたわ」
 彼女の答えにロザリンドは不明瞭さやエリュシオン陣営で何らかの動きや指示を受けた感じが無いかを確認を確認していく。
 今後の足がかりにすることも、記憶違いがないかを調べることも出来るだろうと、ロザリンドは記しておいた。
 学院の授業で習ったテーブルマナーや作法で茶会を貴族のように楽しみつつ、出された菓子やお茶を素直に喜んでいたヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は、他の学生が次々と質問をしていることに気付いて「ボクも」と手を上げる。
「ティセラおねえちゃんのコトも分かりたいっておもってるです。でも、いつも力がひつよう、軍事国家にしてシャンバラをまもるっていうです。そのりゆうやききかんは、どこからくるですか? むかしナニかひどいことがあったんじゃないですか?」
 首を傾げて昔話をせがむヴァーナーに、ティセラは菓子を勧めながら、口を開いた。
「鏖殺寺院の動きを見ていますと、5000年前の悲劇が繰り返されるかも知れないと思いますわ。……昔のことは、答えたくありませんの」
「ありがとうです」
 菓子にも答えにも礼を告げると共に、ヴァーナーはティセラにハグを求めるように手を広げ、近付いた。
 ティセラも微笑んでそれに応え、彼女を抱きしめる。
 頬へと口付けるヴァーナーにティセラも彼女の頬へとお返しの口付けをした。