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第4章 命の選択 3

「呼ばれていようがいるまいが」
 バッと、赤いウサギ調のコスチュームを着た小柄な娘――宇佐木煌著 煌星の書(うさぎきらびちょ・きらぼしのしょ)がポーズを取った。
「5人のうさぎは、やって来る!」
 続いてポーズを取るのは、白のコスチュームに身を包む霧島 春美(きりしま・はるみ)である。
「愛と勇気を力に変えて」
 黄色のコスチュームを着込んだディオネア・マスキプラ(でぃおねあ・ますきぷら)は、ウキウキ気分のままポーズを決めた。
「守ってみせます、あなたの未来」
 慣れていないのか、たどたどしくポーズを取るはピンクコスチュームの宇佐木 みらび(うさぎ・みらび)だ。
「平和を祈る、希望の5つ星」
 黒のコスチュームを着て、最後にピクシコラ・ドロセラ(ぴくしこら・どろせら)がクールなポーズを決める。
 そうして揃った五人の少女たちは、一斉に同時合体ポーズを決めた。
「「バニー☆ファイブ参上!」」
 キラーン! と、どこかで効果音が鳴ったような錯覚が起こる。いや、むしろ信じていれば効果音だって聞こえるかもしれなかった。
「さぁ、わたしたちバニー☆ファイブが来たからには、もう安心よ!」
 ビシィッ! と指を突き出してウィンクする春美――いや、げふんげふん。うさホワイトは、だって昆虫たちの大群とそれに囲まれているコビアたちに高らかに告げた。
 まさしく文字通りぽかーんとしているコビアたちを差し置いて――
「命を投げ出すなど、そんな行為はノーセンキュー! でも、命をかけるかと言われればイエス! だって私たちは正義の味方だから!」
 やっていることはキョトンとすることだが、言っていることは信念の溢れたものだった。
「さすがホワイト! 言うことが違うね! さぁ、みんな行くよ!」
 煌――ああっと、げふん。うさレッドの掛け声で、バニー☆ファイブは陣を展開して昆虫型機械生命体に立ち向かった。
 それまで呆気にとられていたコビアたちも、ようやく意識を取り戻して昆虫たちと戦い始める。誰かは判らない謎の集団(正義の味方)だが、これならば敵を全滅させることも不可能ではなさそうだ。
 昆虫は機械で出来ている。となれば、雷に弱いだろう。
 みらび――うさピンクはすぐに自らの力を集中させた。雷を放つ魔法、サンダーブラストを放とうと、手のひらを突き出す。しかし、そのとき――気づかぬうちに眼前まで迫っていた敵の攻撃がみらびを弾き飛ばした。
「きゃああぁ……!」
「みらび……!」
 それに、すぐさま駆け寄ろうとしたレッドはしかし、ぐっとそれを堪えた。今すぐにでも彼女に駆け寄って、助けてあげたい。しかし、いまの自分は彼女の祖母でもなければ、彼女は孫でもないのだ。いまの自分たちは――誇り高きバニー☆ファイブのレッドとピンクである!
「みらび! ……いや、うさピンク立ちな! ヒーローはね、倒れちゃダメなんだよ! 自分が倒れたら、残される彼らがどうなるか考えてみな!」
(の、残された人が……どうなるか……)
 うさピンクは、気力を振り絞り、痛みを我慢して立ち上がった。
 それに、レッドだけでなく、バニー☆ファイブの仲間たちがみな微笑みかけてくる。
「みんな、ピンクを守ろう!」
 うさホワイトの言葉を合図に、バニー☆ファイブたちはうさピンクを守るように陣形をとった。ホワイトの雷術が近づく昆虫を蹴散らし、
「みらピンク立って。ボクの力を全部あげる。」
 うさイエローのヒールがピンクの傷を癒す。
「ピンクをこんなに傷つけちゃって、許してはおけないんだから!」
 うさブラックはトランプ手裏剣で敵の注意を引き、ピンクが詠唱を終えるまでの時間を稼いだ。
 やがて、よろよろとしながらも決にと立ち上がったうさピンクの目が、敵の姿を見据える。
「く……う……護る為に、戦うんですーーー!!」
 うさピンクのサンダーブラストが、彼女たちの周りにいた昆虫たちを破壊していく。
 そして――
「今がチャンスよ!」
 レッドの掛け声に従って、バニー☆ファイブたちが一斉に集まった。
 それぞれの手を一箇所に集め、己の力を集中させる。正義のバニーエネルギーが満ちて、彼女たちの周りを囲む力が増幅していく。
「さぁ、行くよ! バニー☆ファイブの心を一つに! デッドリークィンテッドアターック!」
 バニー☆ファイブたちの一つになった力――単なる魔法なんかの複合技とも言う――が、残されていた昆虫たちを撃滅せんばかりに吹き飛ばしていった。
 残されたのは、昆虫の残骸と暴れ回った挙句に広がった荒地。
 ――そして、勝利のポーズを決めるバニー☆ファイブであった。
「勝利のポーズ、バニー☆ファイブ!」