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天御柱開放祭

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07:祭りだワッショイ其ノ弐 祭りの表2
「ふむ、教官機1機に数機で対応しなければならない。ですか……操縦練度がこれほど影響するのであれば1機のエースによって戦況を変えれる可能性もあると言う事ですか。イコンの潜在能力は凄まじいと思う反面、兵器としてはまだ不安定さも有るように思えますね」
 御凪 真人(みなぎ・まこと)はボサボサの焦茶色の髪と黒い瞳を満ち知的で真面目そうな少年だ。
「ふむ、出店もあるのか。これはこれで模擬戦を見せて周囲に理解を深めてもらいつつ、親しみを思ってもらおうと言うところかのう。日本の自衛隊の基地祭の様なものかの」
 そう言ったのは名も無き 白き詩篇(なもなき・しろきしへん)。乳白金のツインテールと金の瞳を持ち、かわいくてはかなげな印象を受ける。しかしその外見とは裏腹に、口を開けば出てくるのは毒舌のマシンガンだ。
「ふむ、この料理はなんじゃ? たこ焼き? ほう、旨そうじゃな。300Gか。ではひとつもらうとしよう」
 白き詩篇は出店に夢中で真人の話を聞いていない。
「それにしても、強力すぎる兵器な気がしますね。これが対イコンならともかく対人に向いたとき、俺は恐怖を感じるでしょうね。願わくばそうならないことを希望しますよ。ま、その時はその時で何か考えるのでしょうけど」
 真人がそう言うと、コリマ校長がやってきた。
(イコンを対人兵器として使うのはコストがかかりすぎるよ。マンモスでアリを一匹一匹潰していくのに似ている)
「そうですか。それより校長、警備をつけずに平気なのですか?」
(なに、スナイパーとて私には傷ひとつ付けられまいよ)
「それはなによりです。とはいえ、今の状況だと敵のエースが一機出てきて戦況を変えるということもありえるんじゃないんですか?」
 先程懸念していたことを述べてみる。
「それ故の演習だ。練度を底上げするしか対応策はないからな」
「なるほど。わかりました。ありがとうございます」
(若者よお主の懸念はわかる。だが今は任せてくれい)
「はい」
 そう言ってコリマは立ち去っていった。

「当分はイコンに乗れなさそうですから、無謀でも立ち向かわなければならなくなったときのためヒントの一つも得ませんとぉ」
 ひとり一品出店のものを食べながら、皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)達はあーだこーだと非イコン兵器による対イコン戦術の立案をしていた。
 ちなみに伽羅は黒髪をポニーテールにし、髪と同じ色の瞳を持ち、かわいくて優しそうな少女だ。ダテ眼鏡と白羽鉄扇がトレードマークである。
「教導団にはイコンがまだしばらく配備されそうにないですからぁ、現用兵器でどう戦うべきか、効き目があるのか議論しますよぉ。天御柱さんにとっても、現用歩兵に襲撃される想定は意味があるはずですよぉ」
(そのとおりだな)
「ひい、コリマ校長」
(そんなに驚かれるとは心外だな現用の歩兵に襲撃される可能性も論じてある。娘、お主の懸念を話してみろ)
「例えば、関節部とか搭乗席とかセンサー部分を狙撃するというのはどうでしょうかぁ」
(悪くはない。現に上でも、ほれ)
 スナイパーライフルのスコープだけ外して<シャープシューター>でエイミングを試みていた伽羅には、飛行歩兵が生徒の操るイコンの後ろに回って機晶ロケットランチャーを放っているのが見えた。
「伽羅の義弟、うんちょうにござる。以後お見知りおきを」
 そう言ってコリマ校長に挨拶をしたのはうんちょう タン(うんちょう・たん)。ゆる族で関羽をデフォルメしたようなキャラクター造形をしている。
(コリマだ。よろしく頼む)
「ときに、ジェット機などは時折「バードストライク」などといって吸気口などに鳥が衝突すると目も当てられぬ事態になるのでござるが、イコンにはそのような問題はないのでござるかな?」
(ないな)
 コリマの返事は短い。
「例えば、<野生の蹂躙>などで猛禽の群れを叩き込まれたらいかがなさるおつもりであろうか、お聞きしたく存ずる」
(頭部バルカンで掃射すればいい。バーニアに突っ込まれても焼き鳥になるだけだ)
「あいや、そこまで。末孫・伽羅の後見をもって任じておりまする、皇甫義真と申しまする」
 皇甫 嵩(こうほ・すう)はそう挨拶した。
(これはこれは、ご丁寧にいたみいる)
 嵩は黒髪を後ろで束ね黒色の瞳を持った精悍でかっこいい武将の英霊である。
「さて、大兵の敵将には、大外からかかる他に、内懐深くに入り込み蝶よ蜂よと俊敏に敵の鋭鋒をかわしつつ戦う法もあるかと存じまするが、これはイコンには有効にござりまするかの?」
(上に、すべての答えが出ているのではないかね?)
 随伴飛行歩兵がイコンの頭部センサーにペイント弾をくっつけ、破損判定を得ていた。
「なるほど」
 名将は一を聞いて百を知るとも言う。それだけで彼の疑問は解消したようだ。
「献帝の名前は捨てました。私の名前は劉伯和、それ以上でもそれ以下でもありません」
(なるほど。ご高名はかねがね伺っている、と言っても過去のことだが……)
「それで結構です」
 劉 協(りゅう・きょう)が名乗りをあげる。黒髪を角刈りにし同じ色の瞳を持ち、育ちがよく真面目そうな印象の青年だ。
「イコンの飛行原理は知りませんが、空を飛ぶものである以上、重量は可能な範囲で削減してあるはず、ですよね。装甲もまたしかり。とすれば、当たり所によっては通常の機関銃弾などでも貫徹するのではありませんか? あるいは、現用の徹甲弾などではどうでしょう?」
(機関銃は無理だろうが、徹甲弾ならあるいは……だな。実験をしたことがないのでわからんが、現状のイコンならばその程度の代物でも傷つくはずだ)
「現状のイコンなら?」
 協の言葉に校長はサロゲイト・エイコーンの説明を繰り返す。
「そのような恐るべき兵器でありましたか。となるとやはり対戦車砲か機晶キャノンクラスでないとキツイですかね、やっぱり……」
(そうなるな)
「ぬぉわははははははは! 我輩は青 野武(せい・やぶ)であ〜る」
(校長のコリマだ)
「東西対立云々はおくとして、鏖殺寺院は共通の敵、現状、明白にコントラクターの大多数を占める非イコン乗りが敵イコンにいかにして対抗するか(たとえ甚だしく困難とはいえ)を考えておくのも悪くはあるまい。お主ら天御柱にとってもイコンに対する脅威というものを考えておくのは対策上有効であろう?」
(そうだな。その対策の一つが随伴飛行歩兵だ)
「なるほど。だがそれだけでは面白く無いので、思考実験を試みてみるが。例えば、仮に小型飛空艇による体当たり攻撃などというのはどうであろうか。あ、無論、脱出装置は付けるぞぃ。自爆のロマンは我輩一人で十分であーる!」
(無意味だな。まず避けられるだろうし、正面装甲意外にあたらねばはまともなダメージは与えられないだろう)
「なるほど。ところで、十八号、なぜそんな巨大「鯛焼き機」などをこのような場所に持ってきた? 露店でも出すつもりであったのかな? ……おーおーおー、そうであったか、忘れておった」
(どういう事だ?)
「これはお父さんが見た目だけを鯛焼き機風に改造した機晶レールガンですよ」
 と答えるのは青 ノニ・十八号(せい・のにじゅうはちごう)黒のショートヘアに黒の瞳、頼りなくて眠そうな顔の機晶姫だ。
「ところで、購買で売っているレールガンや六連ミサイルポッドはイコンに効きますか?」
(効かんな。唯一の対イコン兵器である機晶ランチャーも、お主の力量では有効打を与えることはできまいよ。というより、今この場にいるもの全員が有効打を与えることができん)
「それは自分もでありますか?」
 黒い瞳に同じ色のショートヘア、知的で優しそうな黒 金烏(こく・きんう)がそう言った。
(残念ながら今の力量では無理だろうよ)
「では、医学の徒としてはあまり使いたくはありませんが、イコンの対NBC防御というのはどうなっておりますかな?」
(NはともかくBCは現有の戦車でも効かんよ。残念ながらな)
「無誘導打ちっぱなし対空ロケット弾の飽和攻撃! ……はどうですかね。構造自体は簡単なので各校で量産も効くと思いますが。日本をはじめ、地上では手製のものが祭礼などに使われているといいますし」
 シラノ・ド・ベルジュラック(しらの・どべるじゅらっく)が尋ねる。焦茶色のロングウェーブと茶色の瞳を持つヒゲが精悍そうな印象をあたえる英霊だ。
(人とロケット弾が用意できるなら可能ではないかね? そこまでの数を用意できるとも思えんが)
「とするとだ、現有戦力で何とかイコンと対向するには、かなりのレベルの使い手が機晶ランチャーなどを使って装甲の薄い場所を狙うという以外にないのであーる」
(そういうことになるかな。第一、イコンの攻撃を受けたら一瞬で生身の人間はやられてしまう。考えることは有効だが実行するのは利口とはいえんだろうな)
 野武の言葉にコリマはそう答える。
「なるほど、参考になりました」
 伽羅が<パラミタがくしゅうちょう>にメモをする。教導団にはお金が無いのでとことん節約しているらしい。
 グロリア・クレイン(ぐろりあ・くれいん)は一生懸命警備をしていた。とにかく手薄になりがちなイコン関連研究施設をクレアと共に警備していた。
 グロリアは金髪碧眼でロリ顔のくせにナイスバディと言う反則的な存在。それゆえに研究所の人間からの視線がちくちくささるが、そんな事は気にせずに。本当に一生懸命警備をしていた。
「警備を任された以上しっかりと守りぬきます。教導団の名前も背負っているのですし自分たちの行動が対外的なイメージを作ることに留意をしませんと」
 そんな事を考えながら警備をしていると、見回りを行っている涼司たちがやってきた。
「よっす、お疲れさん」
 涼司が気さくに声をかける。
「お疲れ様です」
 たいしてグロリアはしゃちほこばっている。
「んな気合入れすぎるなって。ほれ、熱中症になるといけないからな、冷たい飲み物だ」
 涼司はどこから手に入れたのかクーラーボックスからイオン分補給飲料を取り出す。
「ありがとうございます」
 グロリアはそう言うとパートナーのレイラ・リンジー(れいら・りんじー)アンジェリカ・スターク(あんじぇりか・すたーく)の分も受け取る。
「はい、レイラにアンジェリカの分」
 人見知りするため、グロリアの陰に隠れているレイラは銀髪のセミロングに赤い瞳、童顔でかわいい少女だ。
 たいしてアンジェリカは金色の髪を前髪ぱっつんロングにし、青い瞳を持ち、胸が大きい美少女だ。
「……」
 レイラが無言で頷くと、アンジェリカは
「ありがとう、グロリア」
 と笑顔で答える。これでも慈愛を与えるプリースト。笑顔は職業柄だ。
「熱中症は洒落にならないわよね。さっきも熱中症騒ぎがあったし……ありがとうございます」
「何でも神楽坂兄弟がどうにかしたって話だが……」
 そう言って雑談するアンジェリカと涼司。
「涼司、見回りご苦労」
「おう、クレアも警備ご苦労さん。ほいよ、差し入れだ」
 クーラーボックスからイオン分補給飲料を取り出すとクレアとエイミーにわたした。
「有り難い」
「ありがとーだぜ」
 礼を言うクレアとエイミー。
「異常ないか?」
「今のところ問題はない。そちらはどうだ?」
「コリマ校長に襲撃があったが、赤子の手を捻るより簡単に襲撃者を始末しちまいやがったよ。あの校長には警備いらねーな」
「そうか。私のところは見た通りの状況だ。イコンによる襲撃も警戒したがさすがにそれはないようだな」
「さすがに本来の武装にはエネルギーが込められてるから、敵襲があれば5分か10分で40機以上のイコンが動き出すだろうからな。それはないと思うぜ」
 クレアの言葉に涼司はそう返す。
「見知らぬ人間が近づけば鏖殺寺院のスパイリストとの整合を取っているが、果たしてこれにどれだけ網羅されているのか。だが、今のところ西シャンバラの人間が多いよ。ここに近づこうとする東シャンバラの人間は殆どいない」
「そうか。そいつはラッキーだな。とりあえず演習が終わってからが本番だと思ってくれ。それまでは奴さんも本格的に動いてくることはないだろう」
「その通りだ。十分警戒をする。ではな」
「了解」
 涼司とクレアはそう挨拶して分かれると、涼司はさらなる見回りにむかった。
 涼司が他の女性と会話しているのを見てカノンはなぜかイラついていたという。