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リアクション
「今のうちに静かにさせちゃおうよね」
問答無用で、遠野歌菜がメメント銛を振り上げた。
「ちょっと待ったー。そこの三人の犯人と一人の被害者! ええと、誰が犯人だか区別つかないから、とにかく攻撃しようとしている人!」
ベルフラマントをはだけて姿を現したフレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛い)が、イルミンスールの杖を掲げて突っ込んできた。そのままポカリと遠野歌菜の頭を殴る。
「きゅう〜」
ふいをつかれた遠野歌菜が気絶した。
「まさか、あなたたちが真犯人?」
あわてて身構えながら、テスラ・マグメルが訊ねた。
「犯人は、あんたたちだわ!」
フレデリカ・レヴィが決めつけた。今度は、テスラ・マグメルにむかってイルミンスールの杖を振り上げる。
話してもだめだとテスラ・マグメルが反撃しようとしたところへ、駆けつけたルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)がサイコキネシスで牽制した。
「予想していた犯人像とは、かなり違いますね。私は、ゆる族のが何らかの原因で着ぐるみを破損して、中を見られまいとするがために人を襲っていたと考えていたのですが。よければ、真相を話してくださいませんか」
フレデリカ・レヴィの攻撃を避けながらテスラ・マグメルが言った。
「どういうことなの。せっかく犯人を捕まえたと思ったのに、違うの!?」
テスラ・マグメルの言葉に、やっとフレデリカ・レヴィが手を止めた。
「うーん、やはり、歩く巨木か何かが犯人なのではないでしょうか」
ほうらやっぱりという感じでルイーザ・レイシュタインが言った。ミスティルティン騎士団の一団として早く手柄をあげたいのは分かるが、フレデリカ・レヴィは焦りすぎだと思う。もっとよく確認してから攻撃をすべきだ。
「どうやら、みんな勘違いをしていたようですね」
遠野歌菜にヒールをかけながらテスラ・マグメルが言った。
「いずれにしても、犯人は木のお化けやゆる族なんかじゃないわよ。これは撲殺祭りなのよ」
「撲殺祭り!?」
なんだそれはと、テスラ・マグメルがフレデリカ・レヴィに聞き返した。
「つまり、スイカ割りのように、人の頭を叩いて割ることができた者が得点をあげるというはた迷惑な祭りに決まって……」
フレデリカ・レヴィが力説しようとしたとき、彼女の足許にころころと本物のスイカが転がってきた。
「スイカ……」
一同が、唖然として転がってきたスイカを目で追う。まさか、本当にスイカ祭りが行われているとでも言うのだろうか。
「あーん、スイカさん、待ってくださーい!」
フレデリカ・レヴィの足許で止まったスイカを追いかけて、リース・アルフィン(りーす・あるふぃん)が走ってきた。その腰には、星のメイスがゆれている。
「待て、そこの撲殺犯人! 逃げるな!」
リース・アルフィンを追いかけるようにして、椎堂 紗月(しどう・さつき)とラスティ・フィリクス(らすてぃ・ふぃりくす)が走ってくる。
「いやーん。私はこの大切なスイカちゃんを食べようと散歩していただけです」
「なら、その腰のメイスはなんだ。動かぬ証拠じゃないか。思いっきり怪しいぞ」
「これはスイカ割りのための物です!」
椎堂紗月に追いかけられて、リース・アルフィンが叫んだ。
「スイカ割り……。あの子が真犯人か!」
勝手に決めつけて、フレデリカ・レヴィがリース・アルフィンの前に立ちはだかった。
「もう。こうなったらスイカさんを守る……はうあ」
意を決して振り返ったリース・アルフィンが、椎堂紗月に立ちむかおうとした瞬間、突然彼女の腕にプスッと何か針のような物が刺さった。
「うっ、お腹が痛い……」
とたんに、リース・アルフィンがうずくまって苦しみだす。
「ブロウガンによる毒? 他にも敵がいるの?」
椎堂紗月が周囲を見回したが、すでに狙撃の真犯人である鬼崎 朔(きざき・さく)は、椎堂紗月に見つからない所まで離れていた。
「ふっ、愛する紗月に手をあげる者たちは、容赦なく潰す!」(V)
身を隠したまま椎堂紗月の無事を確認しながら鬼崎朔はつぶやいた。あからさまに護衛していると分かれば椎堂紗月が嫌がるかもしれないので、あくまでも秘密裏についてきていたのだ。
「こんなことをするのは、たぶんあの子であろうな」
あえてその名を口にしないように気をつけながら、ラスティ・フィリクスが言った。
「で、結局、真犯人は誰なのですか?」
テスラ・マグメルの言葉に、その場にいた者たちは互いに顔を見合わせた。
とりあえず、ルカルカ・ルーを敵視して暴れている日堂真宵だけは縛りあげて、それぞれの情報を交換する。
「つまり、日堂さんがたっゆんに恨みを持って、便乗犯として暴れていただけで、真犯人ではないと。リース・アルフィンさんはスイカを食べに来ただけで、後はみんなが誤解に誤解を重ねただけということですね」
テスラ・マグメルが、とりあえず状況をまとめる。
「せっかくのお手柄だと思ったのに……」
「まあまあ、後で日堂殿は大ババ様にでも引き渡してお説教してもらえばいいであろう」
がっくりするフレデリカ・レヴィに、ラスティ・フィリクスが言った。日堂真宵がルカルカ・ルー以外に敵意をいだかないのはなんとなく納得したくない部分ではあるが。
その言葉を聞いて、日堂真宵は内心ほっとしていた。大ババ様であれば、話をうやむやにしてくれるだろう。
「ほっとしたら、お腹がすいてきました」
ルイーザ・レイシュタインのナーシングで毒から回復したリース・アルフィンが、自分のお腹をさすりながら言った。
「そうだ、みんなで仲直りにスイカ割りをして食べましょう。こういうときはスイカです」
ニッコリと、リース・アルフィンが断言する。
別段反対する理由もないので、リースの言葉どおりに仲直りとして急遽スイカ割り大会が行われることとなった。
「頑張ってスイカを割りましょー」
「おー」
リース・アルフィンのかけ声と共に、十一本の鈍器が掲げられた。
十一本……!? 縛られている日堂真宵を別として、どこにいるのか分からない鬼崎朔をも外して、各人が武器を融通して一人一本の鈍器を持ったとしても……八本のはずだ。三本多い。
「楽しそー」
「私たちもまぜてー」
「殴っていいんだよねー!!」
誰の声だと一同が叫ぶ前に、立て続けに起きるごすっという鈍い音に、次々と人影が倒れていった。そして、少し離れた場所では、鬼崎朔がすでに気を失っていたのだった。
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