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【初心者向け】遙か大空の彼方・後編

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【初心者向け】遙か大空の彼方・後編

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LastPart. 帰還
 
「全員の乗船を確認いたしましたわ」
 オリガ・カラーシュニコフの言葉に、
「よっしゃ!」
とヨハンセンは頷いた。
「それじゃあ、出航だ!」
 最後まで助手を務めさせて欲しいと言うオリガの希望を聞き入れて、アウインは帰路もその役目をオリガに譲って見張り台に乗り込んでいる。
「出航!」
 ヨハンセンの言葉を反復して、オリガも唱和した。
 白鯨の背から、飛空艇が飛び立つ。
「お願いがあるのですが」
 白鯨を見つめながら、オリガは言った。
「あの鯨の前を通り過ぎてくださいません?」
「嬢ちゃん、粋だねえ」
 ヨハンセンは笑ってそう言うと、操縦桿を傾ける。
 飛空艇は、白鯨の視界前方を、大きく旋回した。
 その巨大な目が、うっすらと細められたように見えたのは、オリガの目の錯覚では無かったと、そう思う。
 ヨハンセンは何も言わなかったが、まるで白鯨と同じように見える表情で目を目元を和らげていた。


 密航紛いの行きとは違い、帰りは木箱ではなく、飛空艇のデッキで、夜薙綾香は、自分に集められるだけ集めた、オリハルコンのデータを見つめて、溜め息をつく。
「……人知を超える力、か……」
 フリッカは、オリハルコンの存在が大陸に知られ、広まることを恐れていた。
 白鯨は長い長い年月、決して大陸には近づかなかった。
「…………まあ、いつか、人にとって役立つ日も来るであろう」
 そう呟いて、綾香は、オリハルコンのデータを封印した。


「そういえば、変なニオイもしなかったけど、いいニオイもしなかったよ」
 ご飯の匂いとか。
 ファル・サラームは、街の中のことを思い出して、そう言った。
「街の人達を幻で作っちゃうなんて、オリハルコンてすごいね!」
「それだけ、フリッカの心が寂しさに満ちていたということか」
 早川呼雪が呟く。
「シキさん、街が幻だって、最初に気がついたんだね!
 でもそうゆうの、教えてくれたらいいのに〜」
 ぶうぶう文句を言うと、シキは苦笑して肩を竦めた。
「……まだ何か、あるのか?」
 その様子に、呼雪はピンと気付いて訊ねる。
「いや……ここからは推測だから」
 首を横に振るシキに
「教えて!」
とファルが詰め寄る。
「教えてくれないと、頭からかじりついちゃうよ!
 ボク、おなかすいてるんだから!!」
 覿面だった。
 シキは、行きの船の中でのファルの食べっぷりを見ている。
 わかったよ、とシキは両手を上げて降参した。
「……寂しかったのは、あの子だけじゃなかったんじゃないかな、と」
「え?」
「だからさ。背中に街を乗っけてそこに住んで貰ったのも、誰も居なくなって尚、その人達の幻を造ったのも、一人で遠海を漂っているのが、寂しかったからじゃないのかな」
「……あ、そっか」
 ファルも気がつく。
「クジラさんだね……」
 白鯨が、自らオリハルコンの力を使って、それを成した。
 そう考えると、あの街の成り立ちにも納得できた。
「そういうことか……」
 

 フェイは悩んでいたようだが、フリッカに諭され、白鯨の街に残らず、共に帰路についている。
 いつかまた、と、口先だけではない約束を交わした。
 その日はきっと来るのだと、確信できる。
 きっとフェイは今回のように、いつかまた、何とかして空に旅立ち、何とかして白鯨を見つけ出すだろう。
 そしてその時にはまた、この中の誰かが、フェイと共にフリッカに会いに行くのかもしれないな、と、そう思った。



◇ ◇ ◇


 
 ツァンダの飛空艇発着所に戻ったトオル達は、あっさりと捕まった。
 ここは逃げない方がいい、と相談しあった結果でもある(一部、密航で帰って来た者は密かに逃げたが)。
 だが、こっぴどく叱られはしたものの、特に刑罰らしきものは受けなかった。
 それは、出航前、トオルがウラノスドラゴンを探す為に空賊を探している、という噂が、それなりに広まっていて、クイーン・ヴァンガードの、今回の作戦を指揮するはずだった、初心者チーム作戦指揮官の耳にも入っていたこと、明らかに賊とは思われない学生達の集団であったこと、そして、とりあえず空賊の一味を捕縛したことで、プラマイゼロ……には、ならなかったが、恩赦が出たのだ。
「そんなことをやっている暇があったら、依頼でも受けて事件をひとつ片付けなさい」
 最後に、大きな溜め息と共にそう言われて、放免となった。


「最後ちょっと締まらなかったけど。ありがとな、皆」
「ま、終わりよければ、ってことで」
 トオルが礼を言って、笑い合って、再会を約束して、別れる。
「またな」
 またそのうち。

 誰もさよならと言わなかった。









 ところで。と、トオルはシキに訊ねた。
「おまえ、ウラノスドラゴンがどんなんか知ってるんだろう。いい加減教えろよ」

 ところで。と、アウインはヨハンセンに訊ねた。
「親分、ウラノスドラゴン知ってるみたいだったっすね。何なんです?」

 ああ、そのことか、とシキは言う。
「アトラスは、居るけど、見えないだろう。ウラノスドラゴンも、同じ」

 ああ、そのことか、とヨハンセンは言った。
「今時の若い奴はあまり言わなくなっちまったがな。
 昔は、飛空艇乗りが一人前になると”ウラノスの加護があるように”ってな祝辞を送ったもんさ。
 ドラゴンが成龍になった時もそうだって噂を聞いたことがある」

 ふうん、とトオルは空を見上げた。
「……でも、居るんだよな?」
 アトラスも、その存在を感じ取れることがある。
 それなら、いつかは、と、トオルは思った。




END







■NPCリスト■

●トオル・ノヴァンブル(18)
 スナイパー。単純お馬鹿さん。

●磯城・グレイウルフ(22)
 グラップラー。呑気者。実は漢字の名前でした。

●フェイ・ハウリングスペル(14)
 行動力があるんだか無いんだか。

●フリッカ・プレジーナ(5OOO〜)※外見年齢10歳
 ”彷徨える島”の唯一の住人。

●ヨハンセン・アルマース(43)
 フリーの飛行船操縦士。面白そうなことが好き。

●アウイン・ワルデラ(36)
 ヨハンセンの助手。ちょっと気弱。
 
 

担当マスターより

▼担当マスター

九道雷

▼マスターコメント

トオル「お疲れさまっした!」
シキ「お疲れでした」
トオル「というわけで、今回の冒険は終わりだ。
 初心者枠での参加の人も、ベテラン枠での参加の人も、協力してくれてありがとな」
シキ「あまり展開にひねりの無いシナリオだったが、少しでも楽しめてくれてたらいいな」
トオル「俺は楽しかった」
シキ「そりゃあな」
トオル「でも皆の活躍のお陰で肝心の俺が全然活躍できなかったんだけど」
シキ「別にトオルは肝心じゃないだろ」
トオル「ひでえ!」
シキ「確かに影は薄かったな」
トオル「酷過ぎる! お前人のこと言えるのか!」
シキ「俺は別に目立ちたいわけでもないし」
トオル「くそー。次は見てろよ!
 さてっと。気を取り直して!
 折角初心者向けって括りでのシナリオなんだし、先輩として、これからのことをいくつか助言してみようかな!」
シキ「人に言えるほどのトオルじゃないけどな」
トオル「突っ込みうるせえ!
 えーと、まずひとつ。
 このシナリオで、っていうか、このシナリオに限った話じゃないが、
『ひとつのシナリオで得たローカルな情報とか、立場(階級とか)や人間関係なんかは、他マスターのシナリオには持ち込めない』
 が、結構基本だ。
 割とうっかりやっちまう間違いだから、憶えておいた方がいいぜ」
シキ「例えば、仮にこのシナリオで『オリハルコンゲットしたぜ!』という展開になっていたとしても、データとしてアイテム欄に入って無い以上は、その設定を他のマスターのシナリオに持って行って『自分はオリハルコン持ってるのでこれを使って何かすげえことをする』というアクションは、掛けられないわけだな
トオル「マスター同士が連携している場合はともかくとして、基本としては、他で得た情報を別のシナリオには持ち込まないようによろしくな」
シキ「次は?」
トオル「えーと、そうだなー……」
シキ「先輩?」
トオル「うるせーよ! えーとな!
 ま、マスターシナリオ講座を見るといいんだぜ……?」
シキ「………………」
トオル「すげー長い溜め息つくな!」
シキ「しっかりしてくれ先輩」
トオル「う、うー。
 そ、そうだな、武器とか、結構めんどうくさいから気をつけろよ。
 アイテムとかスキルは、装備してないとアクションで使えないからな。
 あと、武器2つ装備してても、二刀流とか両手利きとかのスキルつけてないと、使いこなせないぜ」
シキ「それは実感こもってるな」
トオル「うるせえ」
シキ「トオルも銃を両手で使えるようになるまで苦労したもんな」
トオル「うるせえ」
シキ「そうそう、トオルの2丁拳銃といえばこんな話が……」
トオル「余計なこと言うな!」
シキ「と、まあ、どれもマスターシナリオ講座を見れば事足りるアドバイスばかりなわけだが」
トオル「うるせえ!!」
シキ「習うより慣れろって言葉もあるし、まあ、とにかく何でもやってみるといいと思う」
トオル「うん、それだな」
シキ「そんなわけで、そろそろだな」
トオル「また次に、何かあったら会おうな。
 何も無くても遊びに行くから、よろしく頼むぜ」
シキ「それじゃ」