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リアクション
03:謎の電波
鏖殺寺院のイコンの編成はシュヴァルツ・フリーゲ1にシュメッターリング3の4機の小隊編成であった。それに対しこちらの先発組は5機〜7機。小隊単位で見ればこちらの方が優位であった。
しかも練度に優れる敵の兵は空母事件や天沼矛襲撃事件等で次々と撃墜されて死亡して行っているので、今回の敵は若干練度が低い新兵のようでもあった。
ひょっとしたら、街の住人が乗っているのかもしれない。
そんな中でアルファ小隊とブルー小隊が合流し、敵もシュメッターリング1機を失った小隊を含めて3個小隊が合流した。これで11対11。数の上では互角である。
杏と紫音、レオ、未沙そして聡のコームラントが一斉に射撃をする。
5条のビーム光線は2機のシュメッターリングを焼き払う。
「今です。突撃!」
やませの指示で真司、有栖、カノン、涼司、美羽が突入する。と言ってもカノンと真司以外は今回が初戦だ。二人が三機をカバーする感じで動く。
「っしゃらああああ!」
涼司が鍔迫り合いをしているところに
「いっくよー」
美羽のビームライフルが手元に命中する。
それは振動剣を弾き飛ばし、涼司のビームサーベルが敵のコクピットを貫く。
「さすがです、涼司様」
花音・アームルート(かのん・あーむるーと)が機体を操縦しながらそう言うと、
「お前こそ、なかなかの操縦だぞ」
と涼司が言う。
そして真司と有栖がビームライフルで牽制しているところに、出力をあげたビームマチェットでカノンがシュメッターリングを切り裂く。
「ナイスアシストよ、ふたりとも」
「そちらこそ、ナイスプレイです」
真司がカノンに返答する。
そこに今度はシュメッターリングが振動剣を握って近づいてくる。マシンガンは近すぎて射程範囲外だ。
その他のイコンは頭部バルカンでこちらの牽制を試みる。
涼司とカノンは後退して敵の攻撃を回避する。しかしそのことで敵のマシンガンの射程にはいってしまった。
今度はシュヴァルツ・フリーゲのマシンガンの弾が飛んでくる。
「危ない、カノン先輩!」
レオが機体をカノンの前に持ってきて盾となる。
「ぐうっ!」
装甲が削れるがそこはコームラント。この程度で落ちはしない。
「なにやってるの馬鹿!」
カノンは叫ぶとビームライフルを発射する。
「僕はカノン先輩を守ると決めたんです!」
それに続くように他のメンバーもビームライフルや汎用機関銃を発射する。
弾幕が形成され敵は必死に回避行動を取る。
回避しきれずに二機のシュメッターリングが撃墜される。
やがてビームライフルや汎用機関銃の射程から外れると今度はコームラントのビームキャノンが一斉に火を吹く。
「落ちて、なの!」
未沙のコームラントの火器管制をやっている朝野 未羅(あさの・みら)が叫ぶ。
「いっけええええええええええ!」
紫音が吠える。
「有栖さん、今よ!」
杏が指示を出す。
二機のシュメッターリングが消滅する中
有栖が前進しビームライフルでシュヴァルツ・フリーゲのコクピットを狙う。
「こちら【アリスドール】援護願います」
有栖のビームライフルははずれるが
「了解!」
「オーケー!」
やませと真司のビームライフルが命中する。
爆発するシュヴァルツ・フリーゲ。
「手応えがなさすぎる。こいつら新兵じゃないのか?」
聡がそう言うと
「その可能性はありますね。機械は生産できても人は生産できませんから」
とサクラがいう。
「敵の無線を傍受した限りだと声が若いです。子供かもしれません」
レオがそう言って傷付いた機体を動かす。
「左様ですな。まだ高等部にも入れないような若い子供、と言った印象でした」
レオがまとっている魔鎧告死幻装 ヴィクウェキオール(こくしげんそう・う゛ぃくうぇきおーる)がそう言って補足する。
「レオ、ECMを展開するぞ。数が減って敵も本気になったようだ!」
激しさが増す銃撃の中で、イスカ・アレクサンドロス(いすか・あれくさんどろす)がいう。
敵のレーダーをジャミングして実質的な射程距離を減らすと、レオが機体を操作して後ろに下がる。
しかし敵もすぐにECM、ECCMを発動して対向する。
敵の残りはシュヴァルツ・フリーゲ二機とシュメッターリング三機。実質的に一個小隊だ。
この数の差を見て涼司がビームサーベルにエネルギーを伝達させながら突入する。
と、爆発。
その爆発の影響は腕にまで及び、ビームサーベルを持っていた腕がまるごと消滅した。
「うお!」
涼司が叫ぶ。
「きゃあ!」
花音が悲鳴をあげる。
「涼司君!」
カノンが悲痛な叫びを上げる。
「涼司!」
美羽が叫ぶ。
「涼司さん!」
ベアトリーチェも叫ぶ。
「山葉先輩!」
レオが叫ぶ。
「涼司!」
聡も叫ぶ。
「涼司君大丈夫!」
カノンが涼司のイーグリットに近づく。
が、それは大きな隙だ。敵のマシンガンがビームライフルを持つ腕に命中して爆発する。
「きゃあっ!」
カノンが悲鳴をあげる。
「よくもカノン先輩を!」
レオが叫びながら機体を動かし、シュメターリングに砲撃をする。
シュメッターリングは蒸発し、それに合わせて他の味方も距離を近づけながら射撃を行う。敵のイコンはそれで全滅したが、こちらも損害を受けてしまった。
「涼司さん、カノンさん、それからレオさん。今から送るポイントに簡易補給所と整備所を設置しておいたから、後退して見てもらうといいよ」
未沙がそう言って地図データを送信する。
「サンキュー。なんだったんだ今の爆発は……」
「涼司くん、怪我はない?」
カノンが話しかける。
「大丈夫だ。爆発が内部まで及んでいたらやばかったが、なんとか腕だけですんだ」
「そっか。じゃあ、後退するね。朝野さん教導団の一部では士官候補扱いでしょ? 小隊の指揮を頼むわよ」
「うん」
未沙が返事をすると美羽が話しかけてきた。
「涼司、ここで涼司を失ったら、環菜に会わせる顔がないんだから。しっかり修理してきてね」
「分かった。あとは頼むぞ……」
「うん」
こうしてアルファ小隊とブルー小隊は当座の敵を退けて、次の敵との接近を待つことになったのであった。
その頃、寺院では……
「どうやら苦戦しているようねえ……」
メニエスが戦況をモニターで見ながら指揮官を威圧していた。
「はっ……そのようで……」
指揮官は冷や汗を垂らしている。
「あんまり無様だと、敵が此処に来る前に死ぬわよ?」
「それは……」
「ねえ、『アレ』使ってみたら? 資料で見ただけだけど、かなり効果的そうじゃない?」
メニエスがサーバーで資料を閲覧しながら言う。
「しかし、『アレ』はまだ未完成でして……」
「だったらちょうどいいじゃなぁい? 実験台はたくさんいるんだもの」
「そ、それもそうですな」
指揮官はそう答えると
「おい、例のものの起動準備を!」
と命令した。
「はい!」
部下がそれを受けて司令室の外へと出て行く。
そして――
イプシロン小隊
TACネーム【リンクス】、ミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)が敵機に攻撃を仕掛けようとしたとき、急にコントロールが狂った。
誤って味方を撃ってしまう。
幸い味方機は回避したが何をしているのだと問われることになった。
「わからないんだぜ! 急にコントロールが奪われたんだぜ!」
ミューレリアは、仲間の問にそう答える。
「ボクが攻撃担当なんですけど、ボク、スイッチ押そうとしていないのに押ささったんですよ!」
リリウム・ホワイト(りりうむ・ほわいと)がそう叫ぶ。
「ミューレリア様、それは本当ですか!?」
TACネーム【ホワイト・ライトニング】水城 綾(みずき・あや)が、敵の攻撃を回避しながら尋ねる。
「本当なんだぜ。まるでリモコンで動かされたみたいに……」
「ウォーレン……まさか?」
綾は兄と慕うパートナーのウォーレン・クルセイド(うぉーれん・くるせいど)に恐る恐る尋ねる。嫌な予感がしたのだ。
「そうかも知れないな。みんな、攻撃の時は慎重に。またコントロールを奪われるおそれがある」
ウォーレンも同じような予感を抱えて皆に警告する。
TACネーム【ムラクモ】の榊 孝明がビームサーベルで敵機と切り結びながら声を荒げる。
「冗談じゃない。これは現実だぞ。アニメじゃないんだ。そんな馬鹿げた事があってたまるか!」
孝明も同じ嫌な予感がした。だが理性がそれを否定する。
「孝明、イコンだって十分現実離れした兵器だよ。もしかしたら……」
孝明のパートナー益田 椿(ますだ・つばき)がそう言うと、孝明は余計にムキになった。
「仮にそうだとしてもだ、対処方法がないんだぞ!? 俺たちイプシロン小隊は戦闘車両の護衛が任務だ。そんな時にまた【リンクス】みたいになったらどうするんだ!?」
「そんなもの、この【ミッシング】がどうにかしてみせるよ」
水鏡 和葉(みかがみ・かずは)が、汎用機関銃を連射しながらそう呟く。
「和葉、俺はそう簡単に行くとは思えないけどなぁ……」
パートナーのルアーク・ライアー(るあーく・らいあー)がそう諭す。
「なんで?」
「俺達の想像が当たっていればとんでもないことになるからさ」
ルアークはそう答える。
TACネーム【アイビス】の星渡 智宏(ほしわたり・ともひろ)がイーグリットの中で頭をかく。
「まいったなあ、こっちは精密射撃が信条なんだが、誤射なんてしたら大変だ」
そして味方と味方の間を縫って敵を狙い撃とうとした途端に急に照準が変わる。
「くっ!」
慌てて体に力を入れて照準を戻し、なんとか敵のシュメッターリングの振動剣を持っていた腕を撃ち落とす。
「こちら【アイビス】、今コントロールが奪われた」
「こちら【アイビス】パートナーの時禰 凜(ときね・りん)です。敵の拠点から謎の電波を検出しました」
「やはり、そうですか……」
TACネーム【タング】のロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)が、敵を撃ちながらそう呟く。
「街一つを教化という名の洗脳をすることといい、この謎の電波といい、この寺院の砦は相当に油断のならない相手のようですね。メリッサ、十分に注意してください」
「はいおねーちゃん」
メリッサ・マルシアーノ(めりっさ・まるしあーの)が元気よく答える。
TACネーム【ファング】の綺雲 菜織(あやくも・なおり)もコントロールを奪われる。
「くっ! 美幸、電波の検出は?」
菜織がパートナーの有栖川 美幸(ありすがわ・みゆき)に尋ねる。
「菜織様、やはり電波が検出されました」
幸い味方に被害はなかったがこうもコントロールを奪われるとなると攻撃がやりにくくて仕方がない。
「どうするべきであろうか……?」
菜織はそう考えながら機体を動かしていく。
「菜織様、味方から通信です。カタパルトが治ったので戦闘機と残りのイコンが発進するそうです。それから、待機していた輸送機部隊もやって来るそうです」
「そうか……では戦争だ。私は、戦う以外に戦争を終わらせる術を知らん!」
菜織はそう叫ぶとブースターに点火し敵に近づく。
その間美幸はビームライフルで移動間攻撃を行う。今までの経験と敵機の動きの『先読み』。加えてイーグリットの重心のブレも考慮し弾幕援護の知識を利用して。
それは敵機の移動先に飛んでゆきシュメッターリングの肩部を破損させる。
「【ファング】、援護する!」
智宏が手数を優先してビームライフルを可能な限り連射する。
「【アイビス】感謝を! はぁあああああああああああああああ!」
菜織が機体を戦闘機動で激しく動かし、敵の弾幕を避けながら突入すると、美幸がビームサーベルでシュメッターリングを切り裂く。
爆炎をあげながら落ちていくシュメッターリング。
「戦争の前は命より価値のある物があると叫び、終える時は命より価値のある物は無いと叫ぶ。滑稽ですね。誰も彼も」
美幸が皮肉げに呟く。
「……だが、それでも戦争は起こる。歴史に学ばない限り、戦争は起こり続けるだろう!」
菜織が叫ぶ。
そして、第二派の到着で戦況はより混沌としたものに変わっていった……
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