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リアクション


■ 探索開始から三時間〜


 罠だらけの変な屋敷がある。という話を聞いた時点で、オハン・クルフーア(おはん・くるふーあ)は嫌な予感がしていた。
 さらに、地下に秘密の通路が見つかった。という時点で、少し眩暈がした。
 そんな面白そうなものを、守山 彩(もりやま・あや)が放っておくわけがない、と。
 彼の予想は果たして的中し、二人は見つかった秘密の通路を進んでいた。
 しかし幸いなことに、ここには既に何人かが挑戦しており、どうやらこの通路は一転して全く罠が仕掛けられていないのがわかっていた。どうやら、持ち主が使っていたルートらしいというのが大方の予想である。
「しかし、安全なルートがあるのならなぜフランクリン氏は帰ってこれないなんて話になっているのであろうか」
 オハンの疑問は、同じくこの通路を探索している誰もが思った事だろう。
 進んでいくと分かれ道や行き止まりなどがあり、一方通行ではないので迷う事はあるだろうが、持ち主なら地図ぐらいは所持しているのが普通だろう。
「ってことは、フランクリンさんは帰って来れなかったんじゃなくって、帰らなかったって事だよね。なんでだろ?」
 わからない事はわからないまま、とにかく何か見つかるだろうと進んでいく。
 二人が足を止めたのは、進行方向から足音が聞こえてきたからだった。それも、随分と重装備をしているらしく、一歩進むごとに金属同士がぶつかる音が聞こえてくる。
「先に探索に来た誰か………に、あんな音がなる装備してた人なんて居ないよね?」
「さて中で着替えたというのもありえるだろうが、しかし警戒しておくことに越した事はないであろう」
 と、オハンが一歩前に出る。
 息を殺して、足音の主を伺う。正面の暗がりに現れたのは、全身を古い鎧で覆っていた。身長は二メートルはあるだろうか、かなり大きい。
 そいつは、二人を認識するといきなり走り出し、持っていた槍を突き出してきた。
「彩殿っ!」
 オハンは後ろの彩を突き飛ばしつつ、自身も槍を避けようと体を捻る。串刺しは免れたが、わき腹の辺りを少し削られた。深い傷ではない。
「オーちゃん!」
 オハンも距離を取りつつ、地面の石や砂を鎧の顔目掛けて蹴り飛ばした。
 飛んでいった石は顔ではなく、胸の辺りにぶつかった。不自然に乾いた音が鳴る。
「っ、どうやらあれはゴーレムのようでありますな。これが、フランクリンが帰れなくなった原因であるか」
「アイアンゴーレムね。どうしよう?」
 ゴーレムの武器は槍。狭い洞窟の中なら、突く槍は避けられるスペースがないぶん脅威だ。
「ヒャッハー! 獲物だぁ!」
 いきなりな声。二人はてっきりゴーレムが喋ったのかと思ったが、どうやらそれは違っていたようだ。ゴーレムが振りむこうとしたからだ。しかし、背後を見る前に暗闇から唐突に現れたバッドによって、ゴーレムの頭は飛んで行き、残された体はそのまま崩れ落ちた。
「どーよ、この俺の力。たかがゴーレムなんかじゃこの俺は止められないぜぇ」
「倒したのはさち子でありますよ」
 奥からアイアン さち子(あいあん・さちこ)ロイ・グラード(ろい・ぐらーど)が姿を現す。
「こーいうもんは言ったもん勝ちなんだよ」
 さち子が飛ばした頭の中から、宝石のようなものを回収する。それが動力源のようだ。
 調子よく喋っているのは、常闇の 外套(とこやみの・がいとう)だ。今は鎧の姿でロイに装備されているので、彩達からしてみればロイが喋っているようにしか見えない。
「すまない、どうやら助けられてしまったようであるな」
 オハンと彩が礼を言う。
「気にすんなよ、どうせあいつら見つけたら倒さないと先には進めねーんだ」
「そんなに数は多くないみたいなのでありますが、ここで戦いやすいよう槍やボウガンを持っていて危ないのであります。そちらの怪我は大丈夫でありますか?」
「ああ、ただのかすり傷である。問題はないであろう」
「ところでよ、途中途中に竪穴があんの気づいてたか?」
 外套の問いに、彩とオハンは首を振って答える。
「どうやら、上に一本通路があるようなのであります。そこから、先ほどのゴーレムが補充されているみたいなのであります」
「それって、戻る途中にまたこいつらがいるかもってこと?」
「そーいうことだぜ」
 このまま戻っても安全が確保されるとは限らない。結構大きな問題だ。
「あんたらが構わないのなら、一緒に行くか?」
 と、聞いた事の無い声がした。ロイの声であるが、二人にはわからなかったので少し驚いた。
「旅は道連れと言うでありますからね。でも、お宝は早い者勝ちでありますよ?」



 地下室から、隠し通路を見つけて入っていった人たちとは別に、一足先にこの通路を彷徨っている人たちがいた。ラムズ・シュリュズベリィ(らむず・しゅりゅずべりぃ)クロ・ト・シロ(くろと・しろ)、そして緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)の三人である。
 本館を彷徨っている最中に、床板が抜けて落っこちたのだ。それは罠ですらなく、単に床板が腐っていたからである。一足先にここを彷徨っているだけあって、この中を歩き回っているアイアンゴーレムにも随分と余裕を持って対応できていた。
「はぁ、終わった………」
 クロは奪い取った鎧の頭から、緑色に光る宝石を抜き取るとその頭を投げ捨てた。宝石は少しは価値がありそうなので、とりあえず回収している。
「お疲れ様です」
「あんたも少しは手伝えよ」
「手伝っていますよ、ほら、だいぶ地図らしくなってきましたよ」
 遙遠が満面の笑みで、随分と書き込まれた地図を見せる。方角もよくわからない状況で作っている事を考えれば、中々凄いことだとは思う。思うが、戦闘を全部人任せにすることを許容はできない。
 が、既に言い争いをする体力も残ってないのでクロは諦めて視線を外した。
 すると、頭から壺を被った人が壁に向かって歩いていき、当然のようにぶつかって仰向けに倒れた。ラムズだ。
 彼が被っている壺は、本館を探索中に降ってきたものだ。頭をぶつけさせるためのものだったのだろうが、見事に頭にはまって抜けなくなってしまった。しかも、随分と硬いらしくて先ほどから歩き回っては壁にぶつかっているというのに、ヒビ一つ入らない。
「おい、だから………勝手に歩き回ろうとするんじゃねぇ………」
 既に何度言ったかわからない台詞には、もう気力が篭っていなかった。それでも、ラムズを助け起こして、遙遠の作った地図を確認する。もうお宝とかどうでもいいから、さっさと脱出したい。
「地図から見るに………あちらが出口ではないですか?」
「ほんとかよ、それ………まぁ、行くけどさ」
 マップを埋めたいためにわざと別の方向を示唆しているのではないだろうか、なんて根拠の無い被害妄想がでるぐらいクロは疲労と心労がいい感じのところまで溜まっていた。
 実際、表立って遙遠は戦闘には参加しないが、飛んでくるボウガンの矢などをさりげなくサイコキネシスでそらしてラムズを守ったりはしてくれていた。戦闘に参加できないのには、理由があるのかもしれない。
 ラムズの手を引きながら、遙遠の示唆した道を通って進んでいくと、今までには見た事もない扉が目の前の現れた。
「石の扉ですか」
「これ………開くのかよ………」
「試してみてください」
「………」
「私がやりましょうか?」
「自重してください。いや、ほんとマジで」
 これ以上問題を増やされてはたまらないと、クロは扉に取り掛かった。触れるとかなり冷たい。取っ手などはないから、このまま押し開けるのだろうと力を込めてみる。重い扉だが、開かないほどではなかった。
「なんだ、光が………?」
 扉の隙間から光が漏れている。さらに押し広げていくと、あまりの眩しさに目が眩んだ。
「どうやら出口のようですね」
「おおっ………」
 目の前に現れたのは、階段だ。
 そしてその先には、外の風景が広がっていた。
「うはwww」
 ちょっとテンションがあがった。
 安全を確かめるために、とりあえずクロは二人を残して先に階段をあがってみる。階段の先は間違いなく外だった。
「外に危険はありませんか?」
「危険なものは見当たんねーけどよ、ここ………どこだよ………」
 階段の先には、森が広がっていた。右を見ても左を見ても、同じような風景にしか見えない。どうやら、随分とあの屋敷から離れたところに出てしまっているらしい。あの本館に戻るためには、壺によって前が見えないラムズを連れてここまで来るのにかかったのとほぼ同じ時間歩かなければならないようだ。
「マジかよ………勘弁してくれよ………」




「オウフ………地下にはほとんど罠がナイと聞いていたのニ、なんでミーはこんな目に合っているのでショウカ?」
 ジョセフ・テイラー(じょせふ・ていらー)はキャッチーなアームによって天井から吊り下げられてしまっていた。彼を捕まえているアームは中々のパワーがあるようで、じたばたしてみたが抜け出せそうにない。
「おまえはまだマシだろ………どーすんだよ、コレ。どーすんだよっ!」
 魔方陣らしきものの真ん中で吠えるのは、日比谷 皐月(ひびや・さつき)だ。
「いいじゃないですか、美月ちゃんかわいくなってますよ」
「よくねーよ!」
 赤羽 美央(あかばね・みお)は吠える皐月の頭をなでなでする。皐月は指名手配されている身でありながら、無理やりこの宝探しに引っ張り込まれた身である。もちろん、バレたら大変なので【ちぎのたくらみ】によって外見を幼くして、さらに女装して美央の妹の美月として参加していたのだが。
「わ、本当にこのうさみみはえてるんだ。わぁ、やわらかーい」
「ちょ、くすぐったいんですけど」
 四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)が彼の頭から飛び出たうさみみを調べてみると、本当に頭からはえているらしい。くすぐってみると、本当にくすぐったいのか皐月は暴れて逃げ出した。
「うさみみがはえる罠があるっと」
 霊装 シンベルミネ(れいそう・しんべるみね)が自分の【銃型HC】に、今の罠を記録しておく。
「それにしても、ここには罠があるんだね。通路には何も無かったのに」
 と、唯乃。
 彼女達が見つけた石の扉の奥は、どうやら書斎として使われていたらしい部屋だった。背表紙の無い本棚が並んでおり、部屋の片隅に揺り椅子が一つ置かれている。揺り椅子の横には小さな棚があり、その上に金属製の小箱が置かれていた。
 ジョセフは小箱を取りに行かされて、現在は天井に吊るされている。皐月は、適当に本を取って開いたら、いきなり魔方陣が足元に浮かんでうさみみがはえたのだ。
「魔方陣のこっていますね。メモっておきましょうか」
「メモってどうするの?」
 ささっと手帳に魔方陣をメモっている美央にシンベルミネが尋ねた。
「だってうさみみ作れる魔法陣ですよ。もしかしたら使えるかもしれないじゃないですか」
「何に使う気だよ、おい」
 皐月の言葉に返答はされなかった。
「とにかく、下手に本を開くと危ないみたいね。どうする?」
「あの小箱が気になりますね。美月ちゃん、取ってきてくださいね」
 皐月は一人自分の耳を引っ張ってうなだれているところだった。
「え?」
「もう罠は発動したみたいですから、きっと大丈夫ですよ。ね?」
「ったく、しゃーねぇなぁ!」
 うさみみの事は一旦忘れて、気合を入れなおすために両頬を手でパチッと叩いた。
 無理やりテンション上げておいた方が、嫌な事を考えなくて済むだろうし。というわけで、割と無防備に皐月は小箱に近づいていった。
 既にもう罠が発動していたおかげで、小箱を手に取るのは容易だった。持ってみるとズッシリと来るものがある。箱には細かい装飾がされていて、これだけで価値がありそうだ。そんなわけで、戻ろうとした皐月を、美央が静止する。
「そこで開けてください」
 用心深い奴だなぁ、なんて思いつつ皐月はその箱を開けてみた。
「うおっ―――げほっ、ごほっ」
 蓋を開けると、中からもくもくと大量の煙が噴出してきた。煙にむせている彼の耳に、扉が閉まる音が聞こえてくる。
「ちょっ………ん? あれ? ちょっと待て、声がおかしくないか?」
 自分の口から出ている声が、いつもと違う気がする。
 そういえば、吸うと声が変わるガスなんてものがあった気がする。何ガスだったか。
「そうだ、アレだ。ヘリウムガスだ………って、なんだこりゃああ!」
 変わっているのは声だけではなかった。そもそも、ヘリウムガスで変わる声はもっとこう、どこか奇妙な感じに甲高くなるものだ。しかし、皐月の声はさりげなく少し高温に近づいている感じで、実際それほどの違いは無いようにも思える。
 問題はそこではない。皐月は自分の体のあちこちを自分で触って確かめてみた。そして、あるはずのものが無くなって、ないはずのものが微かにあるのに気がついた。
「はは、うさみみ女になっちまった………ふつー煙に包まれたら年寄りなるだろふつー。なんで、女になってんだよ………」
 がっくりとうな垂れる美月、もとい皐月。その後、戻ってきた美央達にさんざん玩具にされたあげく、元に戻るのに丸一日かかってしまうのだった。



「ところで、ミーもあの煙浴びてるんですけど。っていうか、誰かタスケテくださーい。これ、取れないんですヨー」



 
「あー、楽しかった。まさか本当に日比谷皐月くんが幼女になってるなんてねぇ」
 つい先ほどまで散々ほっぺをふにふにして、ルイーゼ・ホッパー(るいーぜ・ほっぱー)はご満悦の様子だ。
「やりすぎだよルイーゼ。日比谷さん涙目になってたよ?」
 言いながらミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)は苦笑している。
 女装して一緒に探索する、という話は聞いていたが本当に女の子になっているのには驚きだった。
「通路には罠はないが、部屋には罠があるのですな。ふむ、ならばこの扉を開けると罠が来るかもしれない。みなさん、少し下がっていてください」
 ルイ・フリード(るい・ふりーど)は、そう言ってから石の扉に取り掛かった。
 別ルートを辿っていた唯乃達とつい先ほど出会い、色々とお互いの情報を交換することができた。どうも、本当にこの中は迷宮のようになっているようで、互いのマップを照らし合わせて随分と探索範囲を狭めることができた。唯乃達は魔道書をいくつかと、やたら装飾された小箱を手に入れたので一旦上に戻ることにしたらしい。
 ついでに、女の子になってしまった皐月をからかう事ができてルイーゼ達もだいぶテンションを回復したようだ。そう数は多くないが、アイアンゴーレムが闊歩する暗い洞窟を探検するのは精神的に磨耗するものはある。
 地図を照らし合わせてまだ探索していない場所で、石扉を見つけた。この先の部屋にはまた罠がある可能性があるが、同時に何か見つけられるかもしれない。
「とおりゃああああ」
 無駄に力強く扉を開けてみた。
「なんか凄い部屋だね。どーなってるんだろう?」
 隙間から中を覗いたシュリュズベリィ著・セラエノ断章(しゅりゅずべりぃちょ・せらえのだんしょう)がそうこぼす。ルイもその部屋の用途や意味は見ても全くわからなかった。
 部屋は板張りになっており、床だけでなく天井まで埋まっている。それだけならまだしも、部屋のあちこちに円錐状の突起がびっしりとついているのである。足の踏み場はあるが、こけてしまったら大変だろう。
「これ、入ると天井や壁が迫って串刺しにされるんじゃね?」
 と、ルイーゼ。確かに、そんな風に見える。
「しかし、アレも気になりますなぁ」
 そうルイが言ったのは、部屋の一番奥。洞窟を闊歩している鎧とは違い、赤く塗られた鎧の前の台座に剣が突き刺さっていた。刀身は金色で、柄にはいくつもの宝石があしらってあった。見るからに、高級そうな剣である。
「アレを取ったら、きっと一等賞だね」
 と、セラは期待の眼差しをルイに向けた。
「ふむ………仕方ありませんな。では、私が中に入ってみましょう」
 見るからに怪しい部屋だったが、それだけにあの剣には相当の価値があるかもしれない。なにより、セラを楽しませるためにやってきたのに、がっかりさせたくないという思いがある。
「気をつけてね」
「なぁに、大丈夫ですよ。鍛えてますからね!」
 ミレイユに、特濃笑顔で応えて部屋へと一歩踏み入れた。
 何も起こらない。
 周囲を警戒しつつ、さらに奥へ。丁度部屋の真ん中辺りまでたどり着いた。
「この部屋に入ってくる―――ザザッ―――とは、盗人にしては度胸があるようだのう―――ザザッ」
「!!」
 声がしたのは、赤い鎧からだ。しかし、声には妙なノイズが入っている。録音した声を再生しているようだ。
「ザザッ―――その度胸で―――ザザッ―――これに対応できるかのう?」
「ぬっ、地震?」
 ルイが振り返ってみると、部屋の外で待っているセラ達が揺れに驚いている様子は無い。この部屋だけが揺れているのだ。
「罠ですか、さぁ落ちてくるのは天井ですか、それとも壁が迫ってくるのですかっ!」
 と警戒を強めるルイに襲い掛かってきたのは、別のものだった。
 部屋に敷き詰められた円錐の物体が、ルイ目掛けて飛んできたのである。
「なんという数ですか」
 飛び回る円錐は目で十分に認識できる速度だ。しかし、なにより数が多い。一つ一つ相手にしようなんて到底不可能だ。だが、ルイには多少の驚きはあれど恐怖は無かった。円錐ではあるが先はそこまで鋭くないし、飛ぶ速度もそこまで速く無いのである。
 目のような急所にさえ当たらなければ、鍛え抜かれた彼の体にとって恐れるようなものではない。両腕で顔を守りつつ、そのまま直進して剣を回収してしまえばいい。
「普段日ごろしっかり鍛えておけば、このような罠など恐れるほどのものではありませんね!」
 襲い掛かる円錐を弾き返しつつ、ルイは剣のもとにたどり着いた。片腕で剣を掴み、もう片方の腕でしっかり顔をガード。部屋を見た時に感じた驚きは、もう微塵も感じていなかった。
 もしかしたら、それは最初から計算に入っていた動きだったのかもしれない。もしくは、単に偶然に偶然が重なっただけなのかもしれない。前者であるならば罠を仕掛けた人に賞賛を送るべきであり、後者であったとしたなら彼の不幸を呪うべきだろうか。
 原因は、この部屋に無尽蔵に設置された円錐のたった一つだ。
 それが一つだけ他のもののように、飛び上がってルイを襲わずに床に張り付いたままになっていた。それは、ルイが剣を片腕で掴んだ時、ほんの少し彼の後ろにあった。
 そして彼が剣を抜いたその瞬間、床から解き放たれた。
「アッーーーーーーーーーー」