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【カナン再生記】襲い来る軍団

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【カナン再生記】襲い来る軍団

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 【ジーク・ブフト】の名の下に集ったゴットリープ・フリンガー(ごっとりーぷ・ふりんがー)たちは、村人たちを守るべく、駆け寄った。
 既に護衛に着いている学生たちと共に、村人たちを中心に囲むように、円陣を組み、自分たちが防壁となれるよう構える。
「あたしたちが来たからには、必ずみんなを守り抜いてみせるから」
 崩れる家から出てくる際に怪我をした女性にレナ・ブランド(れな・ぶらんど)が声を掛けると、その傷を癒した。
「こんなところに隠れていたのか……やれ」
 イノシシの上の男は、現れた村人たちを見下ろすと、ぽつと指示を出した。
 彼の乗ったイノシシが大きく息を吸い込むのを見つけ、天津 幻舟(あまつ・げんしゅう)はカルスノウトを構えた。
 吐き出された火炎弾に向かって、高速ダッシュで飛び出すと、構えたカルスノウトでその火炎弾を弾き返そうと試みた。
 弾き返すとまでは行かないものの、真っ二つに斬られた火炎弾は関係のない方向に向かって飛んでいく。
 別のイノシシが牙を突き出しながら、幻舟に向かって突進してきた。
 幻舟はコンバットシールドを構え、牙を防ぎながら、ギリギリまで引き寄せた後でそれを交わした。
「フン、図体だけはでかいが、お頭の方は全然足りないようじゃな。そんな単調な攻撃で、わしらを捉え切れるものか」
 魔法の攻撃力を高めた綾小路 麗夢(あやのこうじ・れむ)は、火炎弾を操るモンスターであるならば、炎熱に対しての耐性が高く、逆に氷結には弱いのではないかと考え、氷を呼び出すと、男の乗るイノシシやその周りのイノシシたちの足元を凍らせた。
 走り出そうとしていたイノシシが脚を滑らせ、転倒する。
「変な感想だけど、相手がイノシシで良かったわ。巨大イモムシとか巨大ゴキブリとかが相手だったら、気持ち悪くて戦うどころじゃなかったハズだから」
 呟きつつも狙い通り、転んだイノシシを見て、麗夢は微笑む。
「オレたちがモンスターの相手を引き受ける」
「じゃあ、避難民のことは僕たちに任せて」
 ハインリヒ・ヴェーゼル(はいんりひ・う゛ぇーぜる)の言葉に、ゴットリープが応えた。
 ハインリヒは防御態勢を取り、更に強靭な精神力で以って、イノシシや男を見据える。
「それにしても、でかいイノシシだな。カナンは飢饉に苦しんでいるという話だから、残らず仕留めて、干し肉か塩漬け肉にでもすれば、喜ばれるんじゃないか?」
 笑いながら見上げると、クリストバル ヴァリア(くりすとばる・う゛ぁりあ)が頷いた。
「そうねぇ、美味しそうなイノシシがこんなに沢山手に入るなんて、ラッキーだわ。今夜はイノシシ鍋で決まりねぇ」
「楽しみだね」
 天津 亜衣(あまつ・あい)も頷いて、微笑む。それから、ヴァリアへと祝福を与えた。
 ヴァリアもまた、イノシシの耐性の強弱を考えて、氷を呼び出すと、まだ転んでいないイノシシの足元を更に凍らせた。
 まずは彼の乗るイノシシを倒し、好む好まないに関わらず降りなければならない状況を作ってやろうと、ケーニッヒ・ファウスト(けーにっひ・ふぁうすと)は、イノシシの足元に向かって駆け出すと、左右の拳を用いて、まずは前脚2本を攻撃した。
 痛みに声を上げるけれど、それくらいではまだ倒れる様子もなく、男が降りてくる気配もない。
「将を得んとすれば、まず馬を射よ、ってヤツですな。……まあ、今回は馬じゃなくてイノシシな訳でやんすが……」
 苦笑交じりに、アンゲロ・ザルーガ(あんげろ・ざるーが)はそう言いながら、そのイノシシの足元に向かって呼び出した氷を放つ。
「邪魔な……!」
 イノシシの上の男は憤りながら呟くと、足元の氷に向かって、イノシシたちに火炎弾を撃たせる。
 氷が溶け、走りやすくなると村人たちに向けて、歩ませる。
「行かせるわけにはいかんのでの」
 コンバットシールドを構え、幻舟が立ちはだかった。
「頼んだよ」
 構えたスナイパーライフルの引鉄を引き、イノシシの足元を狙って撃ったゴットリープはそう告げて、マウロや村人たちに逃げるよう、促す。
 レナは幻舟へも祝福を与え、護衛について村人たちと共に、離れていくゴットリープに続いた。
 祝福を受け、攻撃力の高まった幻舟が構えたカルスノウトから轟雷が放たれる。
 イノシシを捉えた轟雷はその身体を隅から隅まで駆け巡り、痛みを与えた。
 麗夢は再び、氷を呼び出し放つと、イノシシの足元を再び凍らせる。
 ヴァリアが呼び出した氷がイノシシの脚を直接凍らせていくと、ケーニッヒが再び拳をその脚に向かって、繰り出した。
 巨体が前方にぐらりと傾き、膝を突く。
「何と……!」
 イノシシの上で、男が驚きの声を上げた。
「これでは、移動できないではないか!!」
 男が怒りを露に声を荒げようとも、一度膝を突いたイノシシが立ち上がる気配はない。
「……仕方ない。このファウストが、直接、相手をしてやろう」
「ほう、奇遇だな。貴様の名前もファウストというのか?」
 男――ファウストがイノシシから降りながら口にした言葉に、ケーニッヒが問い返す。
「そうだと、言ったら?」
「どちらがその名にふさわしい戦士か、一つ、手合わせを願おう」
 拳を構えながら告げるケーニッヒに、彼のパートナー、天津 麻衣(あまつ・まい)が祝福を与える。
「ケーニッヒったら、いくら自分と同じ名前だからって、何も一対一で戦う必要なんて無いじゃない。まったく、どうしようもない単細胞なんだから。……ま、そこが魅力的な所なんだけどね」
 ぽつりと呟きながらも、邪魔をしないよう、彼女は後方へと下がった。
 向かい合う2人を前にして、神矢 美悠(かみや・みゆう)はフラワシを呼び出す。そして、相手のファウストが逃亡を図るなら阻止できるように、と控えた。
 精神を集中させたケーニッヒが先に動き、ファウストの懐へと入り込むと、左右の拳を繰り出す。
 だが、入ったかのように思えたその攻撃は、彼の手にした杖で防がれていた。
 そのままの状態でファウストが短く詠唱すると、杖に大きな炎が纏う。
 炎は、杖からケーニッヒの拳を伝って、彼の身を焦がした。
 麻衣が慌てて、傷を癒していく。

 『るねっでかると』と名づけたレッサーワイバーンに乗ったセオボルト・フィッツジェラルド(せおぼると・ふぃっつじぇらるど)は、イノシシたちの上空を駆け、放たれる火炎弾を構えたラスターエスクードで防ぎながら、ファウストを目指す。
 その隣を小型飛空挺に乗って併走するのは、彼のパートナーのヴラド・ツェペシュ(ぶらど・つぇぺしゅ)だ。
 ファウストまであと少しというところで、イノシシが彼らの前に立ちはだかる。
「排除するのは此方に任せて、そなたは真っ直ぐ進むのじゃ」
 セオボルトへとそう声を掛けて、忘却の槍を構えたヴラドはイノシシに向かって、その刃先を突き出した。
 イノシシからの突進を交わしては背中に槍を突き刺すことを繰り返す。
「ハッ! 猪狩りなら生前も良くやってたぜ!」
 白馬に乗った孫 策(そん・さく)は、身体能力を高めた後、ヴラドの攻撃の合間に、馬上からロングスピアで攻撃を繰り出した。
「此方のカズィクル・ベイ、喰らうがいいわ!」
 策が作った隙に対して、ヴラドが声を上げる。
 イノシシの下の地面から巨大な杭が飛び出して、その巨体を串刺しにした。
 2人にイノシシを任せたセオボルトは、ファウストの上空へと向かうと、急降下し、水晶で出来た剣――シュトラールで以って、その身体を貫く。
「ぐあっ」
 突進による力も加わったその一撃は、神官服の下の硬い防護服すら破って、大きな痛みを与えた。
 痛みに、詠唱できないで居るファウストの様子を窺いながら、近付くと、すれ違い様に素早くシュトラールを振るって、雷電を放った。