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第10章 Jeder Gedanke・・・思想を行動に移すべきか

 仮初の地が消えてしまい、研究する場を失った魔女たちはまだ探求したりないものがあるのだと、十天君を探しに行ってしまった。
「まさか2人共、殺されちまうとはな・・・」
「もしかしてあの人かしら?」
 落ち込む鍬次郎の傍に西の塔で開発を担当していた魔女が寄ってきた。
「この刀を作ってと言われたから、あなた用に作ったのよ。簡単に破壊されない丈夫さくらいで、威力も一般的な刀と変わらないみたい。特別な効力もないわ」
 真っ黒な刀身の刀を彼に渡す。
「まぁ、持つのは数日くらいね。その限度を超えると壊れてしまうわ。後は使う者のセンスかしら?」
「刃の形・・・何かに似ているようだが」
「ノコギリじゃない?油をかければ摩擦で燃えるそうよ」
「ほぅ・・・。傷口が焼けるってことか。これを生かすも殺すも使う者の力量次第ということか」
 早く試してみたそうに鍬次郎が刀を眺める。
「あぁそうそう。なんか手紙とメモリを預かってたんだっけ。塔を出る前、すっかり忘れていたわ」
「何だ?十天君の2人からか・・・。ここに来いってことか?なるほどな」
 彼女たちが集まる場所の地図が書かれた紙と、東と西の塔の実験のメモリを、袂にしまい込んでそこへ行ってみることにした。
 そして術者がいなくなってしまったことで、マンドレイクを飼育している農場も消えてしまった。
「きゃぁああ!?何で、どうして!?」
 幽那はショックのあまり悲鳴をあげてしまう。
「仕方ないわね、育てたこれだけ持っていこうかしら。私の不老不死の研究がぁ〜。城や塔に入ってきた生徒があれだけいたんだもの、さすがに間に合わなかったわね」
 犬に引き抜かせて小さなマンドレイクを持ち帰ることにした。
 イナたちの方は実験に使われそうになった動物たちをケースから出してやり、森の中へ逃がしてあげた。
「逃がすことが出来てよかったです・・・」
「うん・・・もう捕まっちゃったりしないといいね」
 ぽつりと言う彼女にレキが頷いた。
「それは何?」
「お墓です。やっぱり・・・必要でしょうから」
 死んでしまった動物を弔おうと、穴を掘ってイナが丁寧に埋めた。



「やっぱりさすがにアルファをよく思ってない者がいるだろうな」
 紫音は小さな声音で呟き、ドッペルゲンガーのオメガを見下ろす。
「今、連れて行ったら魂を返せと迫られると思いますぇ」
 生徒たちに彼女の姿を見せたとたん、何を言われるのか風花も想定する。
「そうよね。魂を返したら森からまた出られなくなっちゃうわ」
 仮初の町があった場所に集まっている者たちの姿を見て、泡はやっぱりまだ魂は返してあげられる時じゃないと呟く。
「というより2人が1人になるということも、もはや出来ないしな。すでに1つの人格としている者なんだ。どっちかになるか、両方の人格が混ざることをよしと思うことは出来ないな」
 どちらも残れるようにしたいと、唯斗はそんな選択はありえないと言い放つ。
「ずいぶん欲張りな考えね。でもルカもそれでいいと思うの」
 森の中で話している者たちを目敏く見つけたルカルカが、キラリッと目を輝かせてやってきた。
「で・・・そっちは?」
 アルファが狙われないように警戒する紫音が淵をじっと見据える。
「殺したらオメガ殿の魂が回復しないからだ。それに、彼女そっくりの者を、どうして俺が撃てようか・・・」
 淵は首を左右に振り、危害をくわえるつもりはないという態度をとる。
「同化ってどっちかが消えてしまうようなものなんだな」
「どっちも消えちゃやだよ・・・」
 エースとクマラも同化でなく、別々の存在としていたほうがいいと思い直す。
「んーでも、魂を返してくれないとオメガちゃんが困るもの。どうするの?」
「全ての源、命とかも含む全ての根源なんだが。アルファに取り込ませようとしたが失敗してしまってな。これを改良すれば、本物の魂そのもを生成してやることが出来るかもしれないんだ」
 問いかけるルカルカに唯斗が太極器を見せる。
「へぇ〜っ!魔科学ってそんなに凄いものなのね」
「完成させるにはこれと、魔科学の技術。それと悪魔の知識・・・」
「まだあるの?」
「一番厄介なのが、十天君の中で生命に関する力を持っている者の協力がいるということだ」
「わ、最悪ね・・・。そう簡単にそんな物が作れないと思うけど、まさかあの女の力が必要だなんて・・・」
「俺とエクスたちはこの魔女と一緒に、そいつを探してみようと思うんだ」
「それって危険じゃないの!?」
 大胆な行動に出る彼の発言にルカルカは驚きの声をあげる。
「あぁそうかもな。だけど何もしないままは嫌なんだ。助けられるなら俺はそれくらいやってやる」
「オメガちゃんがふたりになっちゃうですか!?ちょっとそうぞうつかないです・・・」
 この世界に同じ姿の存在がいる状況をイメージしてみたが、ヴァーナーにはそれが想像出来なかった。
「私はまだ協力してやるとは言ってないわよ!」
「さすがに少しは罪を咎められるでしょうけど。魔法学校にちゃんと戻れるように協力しますよ。まだ研究を諦めてない皆さんを連れ戻して、その方たちも・・・ですね」
「うぅ、分かったわよ。仕方ないわねぇ・・・」
 真言の説得に魔女がしぶしぶ応じる。
 狂気の実験を完全に抹消し、2人の魔女を助けることが出来るのだろうか。
 十天君が次なる手に出るのはしばらく先のこと・・・。

担当マスターより

▼担当マスター

按条境一

▼マスターコメント

おはようございます・・・。
リアクションの中は薄っすらと朝日が昇っている頃でしょう。
前回開発していただいた武器と人形は今回使っていただいたものは、全て効果を失っています。
不老不死になった方の効果は全て消えた状態となっています。

一部の方に称号をお送りさせていただきました。
それではまた次回、別のシナリオでお会いできる日を楽しみにお待ちしております。