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第1回魔法勝負大会

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第1回魔法勝負大会

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5.第3回戦

 
 
「さて、やっと第三回戦まで進みました。ここまでのところ、いかがでしょうか」
 シャレード・ムーンが、解説の大ババ様にコメントを求めた。
「そうじゃのう。ここまで勝ち上がってきた者たちは、さすがに手練れが多くなっているな。同時に、優勝候補だった何人かはつぶし合って消えたりもしているので、まだまだ予断は許さぬというところじゃ」
「そうですか。はい、ありがとうございました。では、対戦表の発表です」
 
   ラスティ・フィリクス     VS     アルジャンヌ・クリスタリア
         駿河北斗     VS     ベリート・エロヒム・ザ・テスタメント
    神曲プルガトーリオ     VS     エッツェル・アザトース
デーゲンハルト・スペイデル     VS     カレン・ヴォルテール
   ルルール・ルルルルル     VS     マリハ・レイスター
     クリムゾン・ゼロ     VS     雪国ベア
   フィリップ・ベレッタ     VS     欠場
         泉 美緒     VS     欠場
ミツキ・ソゥ・ハイラックス     VS     大神 御嶽
        五月葉終夏     VS     水橋エリス
       悠久ノカナタ     VS     欠場
          鬼崎朔     VS     赤羽美央
        相田なぶら     VS     蒼灯鴉
   アリアス・ジェイリル     VS     セシリア・ファフレータ
        東雲いちる     VS     ナナ・ノルデン
           欠場     VS     ソア・ウェンボリス
 
    ★    ★    ★
 
「第三回戦第一試合、ラスティ・フィリクス選手対、アルジャンヌ・クリスタリア選手です」
「頑張れよ、ラスティ、せーかの分まで」
 椎堂紗月が声援を送る。
「もちろん、狙うは優勝なのだよ」
 ラスティ・フィリクスが、自信満々で胸をはる。
「ぼくだって、みんなの仇はとるよ」
 元気にアルジャンヌ・クリスタリアが言った。
 双方共に、パートナーたちは全滅している。ぜひとも、ここは踏ん張って勝ち残りたいところだ。
「雷よ!」
 簡潔な動作で、ラスティ・フィリクスが雷術をアルジャンヌ・クリスタリアの背後にむかって放った。だが、バリアによって弾かれる。
「そおれえ!」
 アルジャンヌ・クリスタリアが、氷術で作りだした氷柱を、丸太投げ選手権の要領で放りあげた。成長しながら宙高く放りあげられた氷柱が、真っ逆さまにラスティ・フィリクスの頭上に落ちてきた。
「はっ!? ここまでか……!」
 氷柱に押し潰される前に、ラスティ・フィリクスがあわてて武舞台から飛び降りた。
「残念、二人共アウトか」
 椎堂紗月が、スライムの海にぷっかりと浮かんだ水着姿のラスティ・フィリクスを見てつぶやいた。
「勝者、アルジャンヌ・クリスタリア選手!」
 
    ★    ★    ★
 
「第二試合、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメント選手対、駿河北斗選手です」
「あなたにも、神の御威光を示してあげましょう」
 静かに武舞台の上にたたずんだベリート・エロヒム・ザ・テスタメントが祈りを捧げた。
「さてと、ミストリカ姉妹に、俺がやっぱり最強だというところを見せつけてやるかな」
 光術で光の剣を作りだすと、駿河北斗が身構えた。
「魔法剣士の名はだてじゃねえ!」
 駿河北斗が、光の剣を一振りして光弾を飛ばした。
「光あれ!」
 ベリート・エロヒム・ザ・テスタメントの背後が輝き、駿河北斗の頭上が照らしだされる。
 光対光の燦めく戦いだった。
 次の攻撃で、二人が足許から照らしだされた。
「やりますね。いいでしょう、勝てば、このメロンパンを半分さしあげます」
 そう言って、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメントが囓りかけのメロンパンを駿河北斗に見せた。
「はあ!? いらねえぜ、そんなもん!」
 駿河北斗が、光弾をベリート・エロヒム・ザ・テスタメントの右にあてて叫んだ。
「なんと、聖なるメロンパンを愚弄するなど。そんなあなたに神罰を!」
 ベリート・エロヒム・ザ・テスタメントが、正面から駿河北斗を攻撃した。
「うわっ」
 駿河北斗が、後ろに吹っ飛ばされる。
「悔い改めなさい。メロンパンに祝福を」
 ベリート・エロヒム・ザ・テスタメントがメロンパンに祈りを捧げる。
「くっそー、あんた強いな。俺もまだまだ修行が足りねえってことか。最強への道は険しいぜ……」
 そう言いながら、駿河北斗がジーンズ姿のままスライムの海に沈んでいった。
「勝者、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメント選手!」
 
    ★    ★    ★
 
「第三試合、神曲 プルガトーリオ(しんきょく・ぷるがとーりお)選手対、エッツェル・アザトース選手です」
「えっ、ちょっと待て、いつの間にリオがエントリーしていたんだ!?」
 大会の最初から、双眼鏡で試合後のすっぽんぽんを堪能していた閃崎 静麻(せんざき・しずま)が、唖然としながら双眼鏡から目を離した。
 男の場合は、「引っ込めー」と物を投げつけて騒ぎ、女の子の場合はしっかりと脳内録画を続けていた閃崎静麻ではあったが、さすがに身内のすっぽんぽんは見ていいやら見て悪いやら悩む。いや、それ以前の問題として、神曲プルガトーリオがすっぽんぽんにされたからといって恥じらう姿は想像すらできない。むしろ見せ回って補導されるかだ。
「今からバスローブ取りにいくというのもなあ」
 閃崎静麻が悩むうちにも、試合は迫っていた。
「火剣よ、火竜よ、火球よ、火魚よ、火豹よ、火薔薇よ……」
 神曲プルガトーリオが、自分の周囲に火術で様々なオブジェクトを作りだして臨戦態勢を整えていく。
「美しい、まるで一輪の薔薇のようだ……しかし、その棘が私に届くことはないでしょうけれどねぇ。どうですか、今のうちに負けを認めて、私とお茶でも……」
 じーっと、神曲プルガトーリオの特大たっゆんに視線を注ぎながら、エッツェル・アザトースがまたもや場違いな口説き文句を語り始めた。
「やれやれ、エッツェルの奴、勝ち進んでいるのはいいが、大丈夫か?」
 応援しつつも、椎堂紗月がちょっと溜め息をつく。
「お相手なら、これがするわよ」
 そう言うと、神曲プルガトーリオが周囲に待機させていた火剣を真正面からエッツェル・アザトースに投げつけたが、正面のバリアにあたってあっけなく折れてしまった。
「それは残念です。では、闇よりも暗き闇をさしあげましょう」
 エッツェル・アザトースの言葉と共に、中空に集まった闇が、ぼたぼたと神曲プルガトーリオの頭上から滴り落ち始めた。
「何これ、気持ち悪い……」
 よろめいた神曲プルガトーリオが武舞台から滑り落ちる。
「ああ、やってもうたか! おい、それをくれ」
「ああ、私の唯一の仕事を……」
 案の定すっぽんぽんになったというのにスライムの上でわざとらしくあおむけの大の字でのびる神曲プルガトーリオを見て、閃崎静麻があわててクロセル・ラインツァートから毛布をひったくって彼女の上に投げかけた。
「むっ、もう少し堪能させてくれてもいいものを……」
 ちょっと不満そうに、エッツェル・アザトースが武舞台の上でつぶやいた。
「勝者、エッツェル・アザトース選手!」
 
    ★    ★    ★
 
「第四試合、デーゲンハルト・スペイデル選手対、カレン・ヴォルテール選手です」
「今度は、ドラゴニュートが相手かよ。きっと口から火とかぼーっと吐くんだよ。酷いよー」
「いや、我はまだそこまで成長は……。って、貴殿は何を言っているのだ?」
 未だ戦いには冷静でいられないカレン・ヴォルテールの取り乱す様を見て、デーゲンハルト・スペイデルが困惑した。
「とにかくあっちいけー。燃えろ、燃えろ! 燃えろー!!」
 カレン・ヴォルテールが、問答無用で正面から火球を放ってきた。
「うむ、名乗りもまだなのだが……。よろしい、こちらも相応の魔法でお相手いたそう」
 正面のバリアで弾け散る火球を見つめて、デーゲンハルト・スペイデルが下から突きあげるようにして火球でカレン・ヴォルテールを攻撃した。
「ひ、酷い……。消えろ、消えろ! 消えろー!!」
 カレン・ヴォルテールが、今度は上に打ち上げた火球を真下のデーゲンハルト・スペイデルに叩きつけた。だが、バリアに砕かれて、散り散りになった火球の破片が、下に群れているスライムの一部を焼いただけだ。
「むん!」
 デーゲンハルト・スペイデルが自分の放った火球をコントロールしてカレン・ヴォルテールの右側にぶつけたが、これもまた不発であった。
「えい、えいっ! えい!!」
 カレン・ヴォルテールが連続して今度は右側を責めたてたが効果はなかった。逆に、左側から、デーゲンハルト・スペイデルの放った火球が迫る。
「きゃー。落ちる、落ちる! 落ちるぅ!!」
 火球に吹っ飛ばされて、勢いよくスライムの海にダイブする形になったカレン・ヴォルテールが、着ていた服を飛び散らしながらイルミンスール水着一枚になってぷっかりと浮かんだ。
「勝者、デーゲンハルト・スペイデル選手!」