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第1回魔法勝負大会

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第1回魔法勝負大会

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6.第4回戦

 
 
「さあ、何やら外野も騒がしいですが、ここまでの戦い、いかがでしょうか、エリザベート校長」
 放送席のシャレード・ムーンが、エリザベート・ワルプルギスに訊ねた。
「ふがいないですぅ」
「えっ?」
「なんで他の学校の生徒がまだ残っていますかぁ。イルミンスール魔法学校校長としてふがいないですぅ!」
「は、はあ……。どうやら、校長先生はお怒りのようです。ここは、開催校の生徒たちに奮起していただきたいところですね。では、四回戦の組み合わせを発表いたします」
 
アルジャンヌ・クリスタリア     VS     ベリート・エロヒム・ザ・テスタメント
  エッツェル・アザトース     VS     デーゲンハルト・スペイデル
   ルルール・ルルルルル     VS     雪国ベア
   フィリップ・ベレッタ     VS     泉 美緒
           欠場     VS     水橋エリス
       悠久ノカナタ     VS     赤羽美央
        相田なぶら     VS     欠場
           欠場     VS     ソア・ウェンボリス
 
「なお、ここまでで生き残っている選手は総勢十三人ですので、エリザベート校長から、後で称号がでるとのことです」
 
    ★    ★    ★
 
「第四回戦第一試合、アルジャンヌ・クリスタリア選手対、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメント選手です」
「あなたにも、神の威光を示してさしあげましょう」
 すでに勝った気になっているベリート・エロヒム・ザ・テスタメントが、ぞんざいに告げた。
「ちょっと、何言うのさ。変な勧誘はしないでくれる?」
 ちょっとむっとしたように、アルジャンヌ・クリスタリアがつっぱねた。聖霊としては、本来は自然崇拝である。今のところ、特定の宗教に入信するつもりはなかった。
「なんと罰当たりなことを、でしたら天罰です。光あれ!」
「いっけえー」
 上から光球を落としてくるベリート・エロヒム・ザ・テスタメントに対して、アルジャンヌ・クリスタリアは氷柱を空中高く放りあげて対抗した。
 光球はアルジャンヌ・クリスタリアの頭上で飛び散ったが、氷柱はそのままベリート・エロヒム・ザ・テスタメントのそばに落ちてきた。
「ひえぇぇぇ……」
 武舞台の端っこでなんとか氷柱を避けたベリート・エロヒム・ザ・テスタメントであったが、今にも落ちそうになって両手をグルグルと回して耐えた。
 ふと下を見ると、逆巻くスライムの先で、救護室のカーテンの陰から日堂真宵とアーサー・レイスがおいでおいでをしている。
「あそこにいくのは嫌あぁぁぁぁ……」
 叫びつつ落下していくベリート・エロヒム・ザ・テスタメントの脳裏に走馬燈のように数々の言葉が駆け抜けていった。
 ――ああ、これも、神のお恵みなのです。もし本のままの姿で落ちたとしたら、もうぼろぼろになって取り返しのつかないことになったでしょう。人の姿だからこそ、無事でいられるのです。たとえすっぽんぽんになっても……。すっぽんぽん……。すっぽんぽんは嫌あ!!
 心の叫びをいだきつつ、都合よくメロンパンでぺったんこのすっぽんぽんを隠されたベリート・エロヒム・ザ・テスタメントが、救護室へと流されていってぺっされた。
「うぎゃああぁぁぁ……」
「勝者、アルジャンヌ・クリスタリア選手!」
 
    ★    ★    ★
 
「第二試合、エッツェル・アザトース選手対、デーゲンハルト・スペイデル選手です」
「無事、ここまで勝ち進んだか。まっ、俺のチームでは数人しかいない貴重な魔法攻撃要員だ、簡単に負けてもらっても困るからな」
 客席で宿り樹に果実特製のサンドイッチ弁当をつまみながら、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)がつぶやいた。ここまでで生き残っているのはほとんど地球人で、ドラゴニュートはデーゲンハルト・スペイデルしかいない。できれば、この先も勝ち進んでもらいたいものだ。
「この着替えが無駄になるぐらいなら大したものだが……。そうあってほしいものだな」
 隣の椅子の上にある唐草模様の風呂敷につつんだ着替えをチラリと横目で見て、エヴァルト・マルトリッツはつぶやいた。
「ルールのよって縛られる……そんな競技のような戦いも、たまにはいいものです。さあ、楽しませてください」(V)
「同感であるな。その上で何が見えるかであろうが。我が名はデーゲンハルト・スペイデル、お相手いただこう」
 名乗りをあげるデーゲンハルト・スペイデルに対して、エッツェル・アザトースはそれ以上語らず、すっと片手をあげて笑った。
「では、私からは、闇よりも暗き闇をさしあげよう」
 闇の塊が正面から飛来してデーゲンハルト・スペイデルの眼前で消えた。
「我は極めるのみ」
 デーゲンハルト・スペイデルが火球を放ち、下からエッツェル・アザトースを攻撃する。
 表情一つ変えず、エッツェル・アザトースが今度は上から闇を落とした。バリアに弾かれた闇が、流れるコールタールのようにバリア表面を流れ落ちて消滅した。
 その間に、デーゲンハルト・スペイデルが右から攻めたてる。
 それぞれの攻撃が無駄だったと悟ると、二人は今度は反対の方向から互いを攻めたてた。
「見破りましたか」
 エッツェル・アザトースだけが、火球を受けてよろめいた。
「だが、裸にされるのはゴメンですねぇ」
 自ら武舞台を飛び降りると、エッツェル・アザトースが地獄の天使を発動させて辛くもスライムへの落下をまぬがれた。次々にのびてくる偽足を避け、無傷で救護室へ飛び込んでいく。
「げっ」
 カーテンのむこうから短い悲鳴が聞こえたが、それが誰の物なのかは分からなかった。
「勝者、デーゲンハルト・スペイデル選手!」