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【怪盗VS探偵】昼に瞬く2つの月

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【怪盗VS探偵】昼に瞬く2つの月

リアクション


ーそれ、可愛い♪ー



 ジャングル風呂を皆が満喫している頃……アメフト部の更衣室の外には、刑事のごとく張り込みをしている人達が結構いた。
「幸運を招く尻尾の毛……か」
「どうしたの? しーちゃん」
 警戒中にぼんやりしてしまっていた忍に香奈が質問をした。
「な、なんでもない」
「そう?」
(自分の強運と凶運をなんとかしたくて、ちょっと欲しいとか……馬鹿かっ! しっかりしないとな!)
 頬を軽く叩き、気合いを入れ直す。
「あまり気負い過ぎないようにな」
 ディテクトエビルを発動させながら、アルツールが忍に声を掛けた。
「ああ、そうだな」
(たとえこの学校の生徒ではなくても、生徒の頑張ろうとする姿は良い物だ)
 ほんの少しだけアルツールの頬が緩んだが、誰も見る事は出来なかったようだ。
「しかし……本当に来るでござるか? その怪盗パープルなんちゃらとやらは」
「来ると思うよ? 今までも何度か盗みの予告を出して、本当に来てるから。ネットでその時の映像が流れてるから見てみると良いかも?」
「そうでござったかぁ……最近の時事には疎くなっていたでござるが……ちょっと勉強するでござるよ」
 香奈に言われ、薫は頭をかいた。
 頭上では何故かコウモリ達が飛んでいる。


「ふーむ……痕跡が見つからないな!」
「そうですね……」
 女性更衣室の壁をくまなく調べているあつい部の武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)鬼崎 朔(きざき・さく)が互いの状況を確認する。
「やつらのぞき部は肉眼で覗く事を鉄の掟にしている! 必ず何か……痕跡が見つかるはずだ! 諦めることなかれ!」
「もちろんです!」
 牙竜と朔は真剣に壁や廊下の床、扉を調べるが、特に見つからない。
 そこへ朔の携帯にスカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)の着信が入った。
『そっちはどうでありますか?』
「まだ見つかりません」
『そうでありますか……』
「そっちはどうです? 監視カメラに何か映ってましたか?」
『特に怪しい人物は……ただ……』
「ただ?」
『何故か暑苦しいアメフト部の更衣室の前に何人か警戒してる人がいるであります』
「えっ?」
『そっちに何かあるのかもしれないでありますが……』
「分かりました、ありがとう。ちょっとそっちを確認してみます」
『はいであります!』
「しかし……怪盗の予告状と同時にのぞき部の犯行声明……はっ! そうか!! 怪盗パープルバタフライ……奴はのぞき部の一員だったんだよ! だから、今までの標的が可愛い女の子だったんだ! 怪盗名乗りながら、女の子を間近からのぞくなんて……なんて奴だ! ……変熊の方は奴の助手の趣味に違いない……」
『そうだったでありますか!!』
「とにかく! その更衣室の前に行ってくる!」
 そう言うと、朔は簡単に事情を牙竜に説明し、2人でアメフト部の更衣室へと向かって行ったのだった。
 蝶子と青太がくしゃみを同時にしたのは言うまでもない。


 メイコの仕掛けたものとは更衣室のプレートを入れ替えるというものだったのだ。
 成功はしているようだが……果たしてどういう結果になるのか。


ーーーーーーーーーーーー


 お風呂から上がった人達は更衣室で着替えを始めていた。
 更衣室の中にはミニ雪だるま達が何体か、それとパラミタペンギンがうろうろしている。
「あ……それ可愛い……」
 メイコは隣で着物に着替えながら殺気看破を発動させている霧雨 透乃(きりさめ・とうの)に思わず話しかけていた。
「ありがとう! そうなの! 買ったばかりなの!」
 透乃は黒い薔薇のレースに薔薇のモチーフとリボンのついた下着の上下を見せた。
「透乃ちゃん、はしたないですよ……?」
「女の子同士なんだし、それに見られて困るような体型じゃないし、大丈夫〜」
 ディテクトエビルをかけながら着替えの手伝いをしていた緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)はちょっと複雑そうな顔をしていた。
(たしかに透乃ちゃんは綺麗な体をしています……他の人が見てもきっと褒めるくらい! でも……でも、私以外の人に見られるのはちょっと複雑です……)
 透乃はそんな陽子の想いに気が付いたのか、ちょっと意地悪そうに笑って、髪を撫でた。
 陽子は顔を赤くしてうつむいてしまった。
 着替えの手伝いの手が止まる事はないが。
「メイコちゃんのは……変装?」
「おう! ルンルンに借りて、ルンルンに化けてみたぜ! 同じく髪がピンクだしな!」
 ルンルンが持っていた洋服を借り、キツネの尻尾と耳を付けている。
(身長が……!)
 透乃と陽子の心が1つになった瞬間だった。


「ねぇ……本当にやるんですか?」
 こそこそと着替えているのは稲場 繭(いなば・まゆ)だ。
「当たり前じゃない! 今度こそ成功させるのよ! それに……うふふ」
 堂々と着替えているエミリア・レンコート(えみりあ・れんこーと)はルンルンを見て、にやりと笑った。
「……?」
 こそこそと話しているのをソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)は不思議に思い、近くへと寄って行く。
「どうしたの? ソアさん」
 一緒に着替えるフリをしていたカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)が気がついて、ソアに話しかけた。
「なんだか怪しい2人が……ってどうしたんですか!? その格好!」
「あ、これ? 可愛いでしょ!」
 カレンは狐尾付きスパッツ水着、ねこ手(ねこぱんち)、ねこ耳(琴音の耳)、メイド服(超ミニスカート)を着ていた。
「萌え要素の詰まったこの格好ならきっと青太君をメロメロに出来るはず! 萌えの数え役満だからね!」
「たしかに可愛いですが……」
(それで良いんでしょうか?)
 ソアはちょっと不安になったようだ。


 ちょうど、その頃更衣室の外では互いのパートナー達が警戒に当たっていた。
「のぞき部かー」
「どうした?」
 雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)が顎に手を当て、考え事をしているとジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が話しかけた。
「いや、ご主人が囮になるのは良いんだが……のぞき部は巨乳好きだから、ご主人じゃ囮にならなさそうだと思ってな」
 更衣室の中で誰かがクシャミをするのが聞こえた。
「……それでいったら、我も無理だな」
「……そうだな、ないな」
「……ああ」
 なんだか、微妙な空気が流れていたのだった。


 更衣室の扉すぐ近くで待機している者がいる。
「あらあら、プゥちゃん……どうしたんです?」
 肩に乗せているペットのプゥちゃんが低く唸ったのを聞き、チェルシー・ニール(ちぇるしー・にーる)が辺りをきょろきょろと見回す。
 が、それらしい人は見当たらない。
「どこにいるかはわかりませんが……居る事は確かなようですわね、のぞき部さん♪」
 小声でそう呟いた言葉は姿を消している白波 理沙(しらなみ・りさ)の耳にはしっかり届いた。


 更衣室の中はまだまだ着替えが終わっていない人も多い。
「むむむ! なかなか尻尾を掴ませないとはやるですーっ!」
 ウィッグを被り、イルミンの制服を着ている広瀬 ファイリア(ひろせ・ふぁいりあ)が呟いた。
「きっとそのうち尻尾が出てくるよ。もう少し気長に待とうよ」
「そうですね」
「下心は隠せると思えないしね」
 スタイルの良い体を見せつけるようにゆっくりと着替えているウィノナ・ライプニッツ(うぃのな・らいぷにっつ)が言うと、ファイリアはこくりと頷き、怪しい人物の特定に戻ったのだった。


「お姉さま……はぁ……お肌がすべすべです……」
 紫の髪のナイスバディさんの着替えを手伝いながら、リース・アルフィン(りーす・あるふぃん)はうっとりした。
「ふふ……ありがとう」
 お礼を言われるとリースの頬は上気した。
(そういえば……何度もお姉さまのお手伝いをしてるけど……私の名前覚えてくれてるのかなぁ?)
「リース……?」
「えっ? 今なんて!?」
「ぼんやりしてるようだから名前を呼んだだけだけど……?」
「も、もう一回お願いしますー!」
「リース?」
「わきゃ〜♪ 嬉しいです〜♪ 名前を覚えて下さってたんですね!」
「勿論よ! だって、大事な……」
 女性はリースの耳元に顔を近付け――
(怪盗助手ですもの)
 そう囁いた。
「はい! 地の果てだろうと、どこへでもお供します!」
 リースは嬉しそうだ。
(あ、そうだお姉さま、ちゃんと鍵は開けときましたから)
(そう……御苦労さま)
 リースはそう報告すると、着替えの手伝いを再開した。


「ふふ……やっぱり気付かれませんね」
 更衣室の中に堂々と入っている髪色も胸も変わった秋葉 つかさ(あきば・つかさ)に誰も気がつかない。
「さあ、そろそろ……素敵なのぞきタイムです!」
 つかさがそう言うとどこからか悲鳴(?)が響いた。