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【怪盗VS探偵】昼に瞬く2つの月

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【怪盗VS探偵】昼に瞬く2つの月

リアクション


魔法のざわめき


ーいざ、魔法学校へー



 探偵の助手である陽炎 橙歌(かげろう・とうか)は探偵の仕事を補佐する求人広告を見て集まってきた人達と一緒にイルミンスール魔法学校へと飛行船で向かっていた。
「みなさん、今日は宜しくお願いします……ですの」
「こちらこそ宜しくねっ!」
 橙歌の言葉に素早く返したのは小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)だ。
「美羽さん! 見えちゃいますよ!」
 ぴょこぴょことジャンプする美羽のスカートをベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が手で押さえる。
「拙者も頑張ってお手伝いするでござる!」
「のぞきに来たの?」
「違うでござるよ! 確かにのぞき部所属でござるが真剣に探偵のお手伝いでござるー!」
「ふ〜ん……そっか、じゃあ頑張ろうね!」
「宜しくでござるよ! 今回の標的であるルンルン殿にしっかりと張り付いて盗ませないでござる!」
 美羽は椿 薫(つばき・かおる)に握手を求め、薫はそれに応じた。
「ねえ、しーちゃん」
「ん?」
 隣に座っている桜葉 忍(さくらば・しのぶ)の裾を掴んで、東峰院 香奈(とうほういん・かな)が首を傾げる仕草をした。
「私ね探偵の補佐って何をすればいいのか解らないんだけど、しーちゃんは知ってる?」
「ん〜、俺も良く解らないんだが、いろいろ雑用をしたりボケとツッコミをいれるお笑い芸人みたいな事をするものかな?」
「えっ、そうなの!?」
 忍の返答に美羽とベアトリーチェは笑いをこらえるのに必死になった。
「あってるか?」
「合ってるわけねぇ……ですの」
 忍が橙歌に聞くと、冷たい一言が返って来てしまった。
(そんな風に見られていただなんて……ですの……)
 ただ……少しショックを受けているようではある。
「ああ、そうだ……少し気になったんだが、探偵の仕事って儲かるのか?」
 忍は冷たい一言に対してあまり気にならなかったようで、次の質問をしていた。
「そうですね……ちゃんと商売としてなりたつぐらいには……ですの」
 橙歌自身ももう気になっていないようだ。
「結構綺麗なマンションに事務所を構えてますよね。しかもワンフロア」
「それくらいわけない……ですの。火焔様が鼻を使って行方不明のペットや紛失物を探しまくってるから、有名ではある……ですの」
 ベアトリーチェの言葉に橙歌は説明をした。
 話しが一区切りすると、イルミンスールに到着したというアナウンスが流れ、全員飛行船を降りた。


 学校の校門に来ると、立っていたのはアルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)だった。
「君達が探偵か?」
「はい……ですの」
 アルツールの質問に、橙歌が答える。
「私はこのイルミンスール魔法学校の教員だ。馬鹿馬鹿しい騒ぎではあるが……このまま放置して何か万が一があっても魔法学校のメンツに関わる。協力しよう」
「有難うございます……ですの」
「どうやら、のぞき部とかいう奴らも更衣室で覗きを行うという不埒な予告状まで来ているからな……まったく、生徒の本分は勉強だというのに」
「のぞき部!?」
 美羽の目が燃える。
「美羽さん……?」
「方針変更! パンダ隊の一員としてのぞき部は放っておけないよね! いざ、成敗!」
 美羽が拳を固く握りしめたのを心配そうに眺めるベアトリーチェだった。


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 橙歌達がイルミンスールの敷地内を歩いていると、移動販売車が来ているのを目撃することが出来た。
 ノボリには『喫茶エニグマ』と書かれている。
 大き目の販売車の中では椿 椎名(つばき・しいな)ナギ・ラザフォード(なぎ・らざふぉーど)が開店の準備をしていた。
 まだ準備中の喫茶店に入って行ったのは月詠 司(つくよみ・つかさ)だ。
「え〜っと、もしかしてまだ準備中ですか?」
「大丈夫ですよ、どうぞゆっくりしていって下さい。ね、オーナー?」
 おずおずと聞く司にナギは和やかに笑って返した。
「おう! 大丈夫だ!」
 本日最初のお客に椎名が嬉しそうに答える。
「助かりました……やっと、安息の地がぁぁ……あ、おススメはなんですか?」
「今日のお勧めは私が作ったレアチーズケーキのセットです。お茶でしたら、ジンジャーティーをお勧めしますよ。まだまだ寒いですから」
「じゃあ……それでお願いします」
 力なく笑って、注文をする。
「なんだか元気がねえな? どうした?」
「ふ……ふふふ……私のパソコンでネットをシオンくんとロキくんが楽しそうに怪盗と探偵の両方の求人を見ているのを見つけたんです……そして、物凄い笑顔で私の空飛ぶ箒を奪って飛んでいくのを見ました……第六感が告げてるんですっ!!! 関わるなっ! 逃げろっ! と……ふぅ……」
「な、なんだかわからんが……大変なんだな……まあ、ここは喫茶店だ、ゆっくりしていけ、な?」
「ありがとうございます〜」
 椎名は司の肩をぽんぽんと叩き、励ました。


 上空では愉しげなシオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)、地上ではにこにこ笑顔のウォーデン・オーディルーロキ(うぉーでん・おーでぃるーろき)が自身のペット達に小型カメラをくくりつけて対決を今か今かと待ちわびている姿があった。


 そんな様子を横目に橙歌達は学校の中へと入って行った。


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 校舎に入ると、ちょうど狭山 珠樹(さやま・たまき)による校内放送が始まったところだった。
『本日は怪盗からの予告状とのぞき部からの予告状により混乱が予想されますわ! みなさま、慌てず騒がず、怪盗とのぞき部を捕まえましょう!』
 校内の掲示板には怪盗の写真(ネットに流れた動画より)とWANTEDの文字が書かれた指名手配書が貼られている。
「ああ、もう来ていたんですのね! 良かったですわ! 我も探偵のお手伝いをしますわ!」
 放送室から出てきた珠樹が橙歌達を見つけると、そう告げ合流したのだった。