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恐怖の五十キロ行軍

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恐怖の五十キロ行軍

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   エピローグ

「思ったより残ったようだな」
 開口一番、ヘンリー中佐は言った。
 行軍チームも攻撃チームも、多くがズタボロである。しかし教導団は全員が腰の後ろに両手を回し、微動だにしない。
 緊急入院した者もあったが、同行したアンジェリカ・スタークからは、全員、一週間以内には退院できるとの報告があった。
「上級生は様々な攻撃を想定してくれた。これは実戦においても、敵の動きを読むのに必要な能力だ。取り分けジーベック中尉の目の付け所は面白かった」
 クレーメック・ジーベックは、眉一つ動かさずにヘンリーの言葉を聞いている。
「逆に行軍チームは、敵の動きを読むのに偏っていた。飛びぬけた活躍や作戦を立てた者はなく、行軍を完遂できたのは、偏に『敵』の人数が少なかったからに他ならない。もし敵が同人数いたとしたら、おそらく全滅したであろう。従って、残念ながら少尉への任官は、今回は見送ることとする」
 態度には出さなかったが、多くが落胆したようで、空気が重い。ヘンリーは続けた。
「軍隊は組織だ。組織に英雄はいらない。だが、優秀な兵士は大歓迎だ。必要なのは、自分で物事を考えられる、軍に忠実な兵であることを忘れるな。階級は褒美ではない。責務だ。命令一つで部下をいくらでも殺せることを肝に銘じ、それでも尚、昇進したいと思う者は、より一層の精進をしてもらいたい。以上だ」
 ヘンリーの訓示が終わると、沙 鈴から三賞の発表が行われ、行軍終了後恒例のバーベキューが行われた。この肉、まさか島津 ヴァルナが行軍前に捕まえたウサギじゃないだろうな、と思わない者はなかったが、誰も口には出さなかった。
 ハンス・ティーレマンは、入院までいかないまでも治療の必要な人々を見て回った。ラルク・クローディスが腕立て伏せをしているのでやめるよう注意した。
 既に成年に達している者はビールを煽っている。
 カルキノス・シュトロエンデとシャウラ・エピゼシーが仲良く飲み比べをしている。ドラゴニュートのカルキノスに比べると、シャウラは明らかに不利に見えた。飲み過ぎないように、見張る必要がある。
 リリィ・クロウとヒルダ・ノーライフは、クレーメックに呼び止められ、水についての行動を褒められた。二人の目の付け所と的確な対処への賞賛だったのだが、飾り気がないだけに彼の言葉は、聞いているうちに気恥ずかしくなった。リリィとヒルダは真っ赤になって俯きつつ、クレーメックの褒め殺しを聞き続けた。
 リカイン・フェルマータとルカルカ・ルー、二人のディーヴァが歌いだし、急遽コンサート会場と化したところもあった。そこに曖浜 瑠樹が乱入しようとして、マティエ・エニュールに止められていた。
 金住 健勝、パティ・パナシェ、月島 悠、ネル・ライトの四人は、攻撃についての反省会を行っていた。ヒートアップして怒鳴りあいそうになると、セシル・フォークナーと道明寺 玲がお茶を入れ替え、そこで沈静化するということを繰り返した。


「白竜、白竜、酒もあるぜ」
 はしゃいでいるのは、世 羅儀だ。ビールを一本ずつ持ち、片方を叶 白竜に渡す。
「未成年もいるんだ。アルコールを摂取するのは、どうだろうか」
「そんな固いこと言うなって。ほらカンパイ。行軍ゴールおめでとお!」
 白竜と羅儀は、戦闘には一切手を出さなかった。ただ、新入生と他校生が困っていると立ち止まり、小さな手助けをして、彼らが歩き出すのを待った。その結果、ゴールした時刻は大幅に遅れ、十五時だった。――即ち、失格である。だが白竜は、然程気にした様子はない。
 白竜が気にしないなら、オレがどうこう言うこともない。ひとっ風呂浴びたいな、と羅儀は思った。

・叶 白竜、タイムアウトに付き失格。
・世 羅儀、タイムアウトに付き失格。



<三賞>
トマス・ファーニナル:50キロ行軍殊勲賞
アウレウス・アルゲンテウス:50キロ行軍敢闘賞
セレアナ・ミアキス:50キロ行軍技能賞

担当マスターより

▼担当マスター

泉 楽

▼マスターコメント

この度は「恐怖の五十キロ行軍」へのご参加、ありがとうございます。過去最高人数の参加者を見て、「げ、やべえ」と青ざめた泉です。

行軍ということで、普通に考えると残っているメンバーがずーっと最後まで出ていないとおかしなことになるのですが、そうすると超長編になってしまいますので、シーンごとに出ている人たちが代表で、大体自分たちの身にも同じようなことが起きているんだな、と思って頂けますと幸いです。まあ、こういうゲームですから、納得頂けるものと信じております!
本編において出番の少ない人は、エピローグでも少し出てもらいましたが、それでも少ない、という方もいらっしゃると思います。より一層の努力をしてまいります。

行軍チームのグループ分けに際してのリーダー役は、ほぼランダムです。適当にばらけさせて、NPCもしくは目に付いた人を当てました。従って、必ずしもそのキャラが偉いというわけではありません。
その分け方ですが、アクション欄に指定の場所があれば、MC、LCを別れさせることもありましたし、逆になければ、適当に割り振りました。
今回は森に集中しましたが、書きながら、攻撃チームは用を足すところを襲ったり、道順を間違えさせたりしたら面白いのに、と思った次第です。用足しはあれですよ、大に関しては円ぴで穴掘って、下脱いでしゃがむわけですから、こんな無防備なことないですよ。そこで襲われたら恥ずかしいけど(笑)

崖は今回、上りではなく下りでした。私の思い込みと説明不足から混乱させてしまい、大変申し訳なく思っております。イメージとしては、某海賊映画で主人公が飛び降りる、あそこです。設定を変えるか、皆さんのアクションを変えるか迷ったのですが、与えられた情報と現場の状況が全く違うのもよくあることだし、と後者を選び、アクションそのものを逆にして、採用いたしました。ご了承下さい。(でも書き終えてから、もっと柔軟に考えればよかったと思い直しました。いやもう、反省することが多すぎて反省)

昇進に関しましては、「おお、これは」という「目から鱗」のアクションがありませんでしたので、今回は見送りました。申し訳ありません。代わりにならないかもしれませんが、称号で「三賞」をお贈りします。

次回のシナリオは未定ですが、また教導団での話も書いてみたいと思います。今度は演習かな……?