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1ヶ月遅れのイースター

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1ヶ月遅れのイースター

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教室の決闘

 無限 大吾(むげん・だいご)はカフェテラスのアフタヌーンセットを頼もうとしたとき、騒ぎに気づいて集まった生徒の一人である。

「ちょうどゴム弾装填のインフィニットヴァリスタを持っていたのは幸いだったな。
 みんなを丸坊主にしてしまうなんて、放っておけないからな。俺も手伝わせてもらうよ。
 雅羅さんたちは音楽室か、じゃ俺は教室を探してみるよ」

話を聞いた大吾は即座に雅羅に協力を申し出た。そばにいたエミン・イェシルメン(えみん・いぇしるめん)が声をかけてきた。

「きっとイースターバニーは寂しいからこんな事件を起こしたんだよ。
 その寂しさを自分が埋めてあげればいいさ。自分も教室を一緒に探すよ」

二人はカフェテラスをあとにして、手早く一階から順に教室を探していった。噂を聞いた生徒たちは退避しており、人気はほとんどない。机の中を覗き、ロッカーを開けてみる。3階の真ん中あたりに差し掛かったときだ。愛美が大鎌を構えて教室へ入ってきた。

「み〜んないないと思ったら、こんなところにいたぴょんね。
 いっただき〜!」

「おっと! 危ないよっ!」

愛美が両手で鎌を大きく振りかざし、薙ぐように振るった。無限はすばやく刃をスナイプを使った銃撃で弾き返し、横に飛んで転がり身をかわした。一方のエミンの獲物は地図をきつく巻いて棒状にしたものだが、ドラゴンアーツによって全身を強化している。エミンは無限の銃撃のショックで鎌をとられ、体制を崩した愛美の鎌の刃のすぐ下を地図で支えるように押さえ込んだ。

「君……イースターバニー。どうしてそんなに悲しそうなんだい。
 君の瞳はその優しさを写す様に美しいのに、寂しそうな色をしている。
 どうしてこんな寂しがりを、どうして人は放っておいたのだろう?」

愛美は何とか鎌を押し下げようと力をこめた。しかし動かせもしない。

「何を言ってるんだぴょん。髪の毛を刈らせてぴょん」

エミンは夢見るような瞳で、愛美を見つめた。

「気を引きたいからって髪の毛なんて刈っちゃうお茶目さん。
 ああ、君と出会えて、自分はなんて幸せなんだろう!」

 どこかかみ合わない会話とは裏腹に、鎌と巻いた地図のせめぎ合いはすさまじく、ギリギリときしむような音を立て、双方の得物がすさまじいパワーで押し合っているのがわかる。だが、ドラゴンアーツを発揮しているとはいえ、元は紙である。さすがにエミンの地図は鎌に押されて撓いはじめてきている。
しばし展開に呆然となっていた無限だったが、武器の様子を見るや、気を取り直して再度鎌に向かって銃撃を放った。鎌は再び弾かれ、押し返していたエミンのパワーとあいまって愛美の手を離れ、廊下へと吹っ飛んだ。

「だめだぴょん〜!」

愛美は即座に鎌を追って教室を飛び出す。鎌を拾い上げたとき、廊下の外れを長髪の生徒が駆けてゆくのが目に映った。たちまち愛美はそちらに気を取られ、駆け出していってしまった。

「……さあ、卵を探そう。犠牲者がどんどん増えてしまう。早いところ事態収拾しなきゃ」

「……説得できなかったのは残念ですが」

無限とエミンは言葉を交わし、二人は再び手際よく次々と教室の捜索を始めた。程なくして黄色地にクローバー柄のイースターエッグが、掃除用ロッカーの中から発見されたのであった。二人は卵を手に、カフェテリアへと向かった。
残された卵は、あと7つ。