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1ヶ月遅れのイースター

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1ヶ月遅れのイースター

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終わりよければ全て良し

「これが最後のひとつ……」

 学校入り口に隠されていた卵を、今や径1メートルまで育った巣に、雅羅がそっと入れた。その瞬間、小鳥の巣から明るい金色の光が迸り、カフェテラス全てを飲み込んだ。最後のイースターバニー、愛美が金色の光に包まれて、他のバニーたちのそばに忽然と現れた。同時にバニーたちの縛めも消え去った。
10人はバニー装束のままだったが、瞳の紅い輝きは消えていた。
愛美はその場にぺたんと座り込んだ。

「な……なんてこと」

バニー化していた面々の反応もさまざまだ。

「セレアナ、それ凄く似合うじゃない、そのままバニーでいようよ」

「何言ってんのよ、馬鹿! 冗談じゃないわ」

調子に乗るセレンフィリティにセレアナが言い返す。ロキュがボソッと言う。

「……でも、皆のバニーガールの姿、ちょっと可愛いかも」

「な、なんてことをしちゃったのかしら……」

「いやあああ……」

縁とセルファが呻くと、雅羅が憂わしげに言った。

「仕方ないよ。バニーにされたの、あなたたちのせいじゃないんだもの……」

そこへ、鳥の巣から一匹の金色のウサギが飛び出してきた。

「イースターエッグの封印を解いてくれてありがとうだぴょん」

「あ、あなた……」

ウサギの声は、雅羅に何度か話しかけてきていた存在のものと同じだった。

「おいらがイースターバニー本体さ。ちょっとわけがあって、封印されていたんだぴょん。
 持ち主の雅羅のために、何かいいことをすれば封印が解けることになってたんだぴょん。
 そういうわけでみんなに協力してもらったぴょんよ」

「いいことって……とんでもない大騒ぎじゃないのよ」

雅羅が突っ込む。

「えー? 前にチラッと聞いた因幡の白兎って、毛を刈っていい結果になったと思ったけどぴょん。
 それで今回の髪集めを思いついたんだぴょんよ……?」

「ぜんっ……ぜん……話しが違うよ!!!」

「そ、そうなのかぴょん?」

そこに、もう1匹の金色のウサギが現れた。最初のウサギより、少し貫禄がある感じだ。樫の杖を手にしている。

「いやこれはうちのものがとんでもないことをしでかしまして……申し訳ない」

「わ、ちょ、長老様」

「この馬鹿者! またしても人様にご迷惑をかけて! 
 こやつはどうもいたずらが過ぎましてな。ワシが封印しておったのです。
 良いことをすれば封印が解けるということにしておりましてな。
 結果オーライとはいえ、今回は皆様に大変なご迷惑を……ホレ、お前もしっかり謝らんかっ!」

「す、すみません……ゴメンナサイ」

「こやつは当分こちらの世界に来られないよう、禁足措置をとりまする。
 真に申し訳ありませんでしたな……刈られた髪は元通りにいたしましょう」
 
長老が樫の枝を一振りすると、小鳥の巣になっていた髪と、杖についていた樫の葉が無数の光の矢となって校内へ散らばってゆく。そのうちの一本はリリィの頭に吸い込まれた。ウィンプルから豊かな黒髪がこぼれ出す。

「髪が……元に」

もう一度長老が杖を振ると、カフェテリアのテーブルの上に、所狭しと紅茶のポットやティーカップ、イースターの伝統のお菓子であるパスハが現れた。

「それでは皆さん、良いイースターをの」

最初のウサギの首根っこを掴むと、長老は最初の卵の割れた殻だけが金色に光っていた床に吸い込まれるように消え、卵の殻も染み込むように消えた。

雅羅は疲れたような表情を浮かべていた。

「皆さんに、私もご迷惑をかけてしまって……ほんとにごめんなさい」

それを聞き、神皇が微笑んだ。

「わたくしは天に輝く禍津星、カガセオたる赤銀の女王ですわよ!
 厄病神ごときなんだと言うのです」

「ね、せっかくケーキもお茶もウサギさんがくれたんだもの、みんな食べよ?」

ノーンがニコニコといい、皆はおのおの紅茶やパスハを手に、雅羅の回りに集まってきた。

「ドタバタしてたけど楽しかったよ。新しい友達も出来たし、ね」

大助が雅羅にウインクする。ヴィクトリカも負けじと、

「もっと他人と関わることよ。なにかあったらあたしが守ってあげるわ、安心しなさい」

無限が声をかける。

「雅羅さん、随分珍しいものを使ってるね、ちょっと話を聞かせてくれないかな?」

セシルとグラハムは連れ立ってやってきた。

「少し、遅れてしまいましたけど……受け取っていただけますか?」

雅羅にそっと手渡された、薄い桜色に、青い小鳥柄の卵。

かくして、イースター・パニックは完全に収束した。お茶には少し遅い時間だったが、誰もが満ち足りた気分ですばらしい香りの紅茶と、豊かな風味のパスハを味わっていた。

「これに関わった人たちみんな、あなたの友人になったね。人間万事、塞翁が馬じゃよ」

かすかに、長老の声が聞こえたような気がした。

担当マスターより

▼担当マスター

鷺沼 聖子

▼マスターコメント

 こんにちは、鷺沼聖子です。すっかり梅雨ですね……。寒暖の差も激しいですし、風邪も流行っているようです。皆様体調には十分お気をつけください。

さて、一ヶ月遅れのイースターです。今回バニーさんは男性参加の方がおいでではなかったので、正統派(?)に女性バニーさんだけとなりました。
男女とも髪は大事ですよね!
通り名にカラミティという、ちょっと気の毒な雅羅の災難体質が、イタズラウサギを呼び寄せてしまいましたが、災い転じて福となってくれれば、と思い、ラストはこういう形にいたしました。

またよろしかったら、私のシナリオにご参加いただけますと幸いです。

※6/17 リアクション修正し、最提出いたしました。